2話、久しぶりに食べた
また来月
いつものように父さんは畑仕事と畜産の世話に行ったみたい
母さんが洗い物してる。兄さんが居ないから部屋に戻ったのかな、でも外出したかわからないから出たか聞いてみようかな
「あれ、兄さんは部屋にもどった?それとも外出?」
「自室に帰ったわよ。何か用事があるの?」
甘栗色の長い髪を母さんが優しい笑顔で家事をしながら返答してくれたからこちらも穏やか自然体で質問に答える
「うん、魔術書を借りようと思ってね」
「あら、いきなりどうしたの?」
母さん、何言い出したって顔はやめて?俺が一番わかってることだから
「勉強したいんだ」
あと黒髪のガタイの良い父さんは強面で寡黙だから飯を食べたらすぐに仕事に行くんだよね。
「キーフなら二階の自室ですよ、ちゃんとノックしなさいね?いたずらはしないようにね?」
「ノックくらいはするよ、流石に失礼だしね」
「そう言っていつもしないじゃない」
「大丈夫大丈夫、今日からするさ」
そう言って、俺は笑いながら兄さんの部屋に向かった
「、、別人?中身がごっそり入れ替わったのかしら?闇払いか何かを頼まないといけないかも、、」
身から出た錆としても聞こえる位置でボロクソに言うのはやめてほしいな
兄さんの部屋の前に来た、ノックもなしにドアを開けるのは失礼なのでノックをする。
ちなみに思い出す前の俺は少しドアを開けて蹴り開けてた、ワイルド過ぎるだろ
「兄さん、入るよ」
「ああ、いいぞ」
部屋に入ると、壁一面に本が敷き詰められたお金持ちが作るような書斎みたいな部屋だった
全ての本が几帳面に棚に置いたり、地面に置いてても綺麗に見える置き方をしてあり子供部屋ってこんなんだっけ?って思うくらいだ
その部屋の中心の机で明るい甘栗色の髪をしたキーフ兄さんが何冊も置いて本を見比べてたようだ
「いきなり部屋に来てなんだ?」
俺を見た兄さんは勉強の邪魔だと言わんばかりに不満げに言ってくるけど、それには理由がある
記憶がない時の俺は兄さんに突っかかって邪魔してたからなんだよね。俺は真面目に答えることにした
「こっちの要件が終わったら帰るよ。魔法書、特に身体強化とか魔法全般についてわかりやすく書かれた本を貸して欲しい」
きいた瞬間、猜疑の目で見られた
「どういう風の吹き回しだ、なぜ欲しがるんだ?」
「旅をして世界を見たいから勉強するから」
嘘は言ってないし、真剣な顔で兄さんと向き合う
兄さんが何かを悟ったのか本棚から本を探し出した
「ついでに武器の流儀とサバイバルの本や危険な魔物や植物の本も何冊か渡す。必要だろ?」
「あぁ、助かるよ」
「これとこれと、、これか。ほら、ついでにこれも持っていけ」
渡された本は明らかに魔法書ではなかった、言うなら子供の時に見た絵本に近い
「これは、物語本?」
「そうだ、先代勇者の絵本だ」
「なんでこれを?」
「この本は奥が深いし最初に街を巡るには目標が無いと辛いだろ?」
「ありがとう、参考にするよ」
まさか兄さんがここまでしてくれるとは思わなかった、ありがたい
兄さんの部屋の外に借りた本を置いて、俺は本を3回に分けて自室まで往復し持って行ったあとに
まず身体強化の本を机の上に置いた
どれから見てみよう、、最初は身体に魔力の流れと魔力について。って項目だね。これとかわかりやすくて良さそうだ
えっと体の内部の中の魔力を操作、、意識を体に集中させて活性化?って言う筋肉に魔力でブーストをかける身体強化を試してみた
体が凄い軽くなった、これが身体強化かぁ。魔法が使えてテンション上がってきた!
その日、僕は貰った本を読み上げまくり
気づけば夜になってた。お腹が鳴りだした頃にノックをされた後、扉の裏から母さんの声がした
「レン、今からマリアちゃんの家に行くわよ」
マリアの家に、、ねぇ、、食事を一緒に食べる家族交流があるんだよな、前の俺はマリアと食えるから絶対行ってたみたいだが今の俺はどうでも良い
「興味ないから行って来なよ、今の俺は本の方が楽しいからさ」
「えっ、、あ、食事はどうするの?」
「キッチンと余り物があるなら自分で作る」
「...わかったわ」
母さんは何かを察して俺を置いていくと決めたみたいだな、、
しばらくして、窓からみんなが家から出たのを確認した
ー行かなくてよかったのですか?
行く必要がないし、興味もない
ーあらあら、、記憶が戻った途端ドライですね?千年の恋も冷めました?
別に、変に接しすぎてついてこられたら面倒だしな
あと、、、今から関わろうとする剣の邪気が俺が耐性あっても相手が耐性無かったらと考えたらさ
距離を開けてないと相手に申し訳ないし何かあって傷つけたくない
けどこれは自分が傷つきたくないって言う裏返しでもあるのは自覚はしてる
ー貴方らしいですね
俺らしいってなんだよ?
ーいつか、誰かに言われると思いますよ
やれやれ、言ってる意味がわからない
とりあえず身体強化をしつつ筋トレだな。まずは腹筋運動だ、どれくらいできるかな?
ー元の世界の名残ですか?
ああ、金もやることもないし、金がなくてやれるのはこれだけだったからなぁ、、
ー女っ気も0の寂しい人生でしたものね
うるせぇ!自分が満足すれば幸せな人生なんだよ!
ってかその人生に終止符を打ったやつがなんてことを言いやがる!?
思わずヒートアップして腹筋が捗る。よし、頭は落ち着いていこう、けど腹筋は2秒に1回から1秒に1回ペースに変わった
ーでは、貴方の幸せとは何ですか?
難しい、考える余裕すらなかったからわからないかな
自分の幸せとか考えるより何やってるんだ俺ってのが強かったからね
ーやっぱり寂しい人生でしたね?
認めさせたいの!?そんな寂しい奴認定をしたいのか!?
ーからかうと面白いので、ついやってしまいました
おぉい!ハリセンがあったら叩いてる案件だぞ!?
ーあはは、やっぱりからかうと楽しいですね♩
やっばい、もてあそばれてる。
神様助けて!ってお前が神様じゃねーか!
ーはい、神様です。崇めなさい?
崇めれるかぁ!
そんなことをサキュバスと脳内会話してたらふと思った、側から見たら俺喜怒哀楽出し過ぎて気持ち悪くなってるんじゃないか?
なんて考えてたら本当に気分悪くなって来たし、身体が上がらなくなって腹筋ができなくなってる
なんでだと思いお腹を見て気づいた、腹筋を鍛え過ぎて筋肉がとんでもないことになってる
身体強化の負荷半端ない、魔力で無理矢理に筋肉を動かすらしいからこれは凄いな
ーそれ以前に筋トレもしたことないもやしが300回もノンストップで負荷をかけて腹筋したらそうなりますよ
そうだったわ、、今の俺はもやしだったわ。
これじゃ他の箇所の筋トレは明日だな、、
とりあえず、栄養のために飯を作るか
台所に向かうと、朝のスープの残りが少しとパンがあった。でも、片付けてなかったっけ?
それでもあるならありがたい、皿に移して食べよう
スープはちょうど一人分だ。配膳が終わり
1人で飯を食べる。
ふむ、、味わいながらスープを飲んでみる
元の世界で言ったらミネストローネに近く香草で酸味を消してるんだなぁ。朝はあまり味あわずに食べたが美味し、、あれ?朝には入ってなかった牛に近い味のする肉が入ってる?
ちがう、これは新しく作ってくれている
俺が家に残るとわかった母さんが作ってくれたのかな
そして元の世界では長らく食べてなかった心がこもった作った飯を食べた。美味しい
、、本当に久しぶりだ。あれ、頬が熱い?
なんか涙が出てる?ああ、そうか、、やっぱり朝に感じた気持ちに確信が持てた
ずっと思い出す前の俺は寂しかったんだよな
誰かに見て欲しい、誰かから必要とされたい。
誰かが近くにいて欲しい、兄と比べるな俺は俺だと言いたかったんだ
朝に食べてそう感じなかったのは1人でお母さんの料理を食べたことがなく、それが当たり前だったからだ
14歳までの俺、お前は、、、こんなにも温かい料理に恵まれてたんだから、一緒に頑張るぞ、、なんて答えるのは居ないし15からは1人旅になる予定なんだけどね
なんて、少し笑うとまるで14歳までの俺の人格が身体に残ってるようにしばらく涙が止まらなかった、飯の味わからない、、
くそっ、これじゃサキュバス通り寂しいやつじゃねーか、、
泣きながら食い終わった、けどお礼に鍋と皿を洗ってっと、、ついでに顔も洗った
けど顔洗って気づいた、俺の髪色は黒に少しだけ甘栗色が混じってて目は黒かったんだな
もう少し本を読んだら寝るか!
本には身体に治癒魔法をかけるのが1番負担がないと書かれてるこの回復系詠唱魔法、、かな?とりあえず読んでみるか
右手を前に出して、、
「私は私の力で自らを癒す、、」
なんか光りが渦巻いてきた、けどなんかすごい身体に違和感がある
、、、何だこの違和感、まるで身体の中を蛇が這いながら右手に向かうように感じて気持ち悪い
「クリスタルヒーリング」
なんだこれ!勝手に魔法が弾けるように発動した
これが魔法なんだろうけど、魔法ってこんな気持ち悪いのかな
筋肉を使い過ぎた疲労感は収まったが絶対おかしかった、
書を軽く読み直したら無詠唱もあるらしい、明日は気になった魔法を使ってみよう
よし、、寝よう、布団に潜り込むとすぐに意識が堕ちだした
ふと、完全に堕ちる前に気になったんだけど貰った本には属性についての記載はあったが邪気なんて記述も項目はなかったが眠気で考えるのは止まった
そして後日、身体強化の本を見て俺は見て気づいた。
身体強化ができてテンションが上がった俺はあのタイミングで他の魔法も知りたくて本を変えるべきじゃなかった。身体強化を使用した場合のリスクについて。と言う項目を見なかったから次の日、僕は地獄を見る