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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

好き? 嫌い?

掲載日:2018/09/19

 新しくできた霊園は、さながら花畑のようだった。

 真新しい墓石に、供えられたばかりの花々。


 喪服の人々は家路について、空が喪服を着込む時刻。

 真っ白なワンピースをまとった少女がおもむろに、供えられた菊を花瓶から抜き取った。

 辺りには、少女の他に、誰も居ない。


「あの人はあたしのことを好き、嫌い、好き、嫌い、好き……」


 花びらを一枚ずつむしっていく。

 望む答えが出なかったのか、少女は頬を膨らまし、隣の墓の花に手を伸ばした。


「あの人はあたしのところに帰って来る、来ない、来る、来ない、来る……」


 今度も駄目だったらしい。

 少女はさらなる花を求めた。


「あの人は今も生きている、生きていない、生きている、生きていない、生きている……」


 少女の顔がパッと明るくなった。

 弾む足取りで次の花を探す。


「あたしは生きている、生きていない、生きている、生きていない、生きている……」


 少女は冷たい地面にへたり込んだ。


「……そう……そうなのね……だからだったのね……」


 風の音もない。

 虫の声もしない。


「ウアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 少女の叫び声が広がり、墓地に供えられた花々が、百合もコスモスも一気に散った。

 少女は墓地を走り回った。

 何度も転んで、墓石に体をぶつけて、それでも痛みは感じなかった。


 墓地の隅っこにたった一輪。

 花びらが一枚だけ残っている花があった。

 その花びらの、細長い特徴的な形のおかげで、かろうじてそれが菊だとわかった。


「あたしが迎えに行ったら、あの人は喜んでくれる?」


 占いにならない。

 花びらは、一枚だけしかないのだから。

 その一枚をむしり取り、少女は高笑いを上げた。

 血のように赤い月の下に、少女の笑い声と、軽やかに立ち去る足音が響いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 花占いをして、好きなあの人に会いに行く……ロマンチックですね(違) [気になる点] 開始が和ホラーっぽくて、落ちが洋ホラーっぽい。 まあ、どっちもすきですけど笑 [一言] 2年前の作品と繋…
[良い点]  短い文字数の中に、少女の「哀しみ」と「狂気」が入り交じっていたのが良かったです。  後、菊の花を用いる事で更なる「哀しみ」を演出していたと思います。 [気になる点]  強いて挙げるなら、…
[一言] なんだか、ヒガンバナと菊の話の時のことを思い出しました。 夕涼み重陽会、参加いただき、ありがとうございました。
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