裏道の僕
身を焼くような日差しが降りかかり、体内の水分を奪い取ろうと気温が上がり、視線の先には陽炎が揺らめいている中、僕は家をでた。
こんな気候で外を歩くなんて馬鹿だって?知ってる。
なんで家を出たかって?別に何か欲しいものがある訳では無い。家よりも涼しいところを目指して歩くだけ。
歩いていると前から外回りでもしているのかワイシャツを来た男が歩いてきた。その男と不意に目が合った、と同時に男は心底驚いた顔をした。
なんだ?と思ったが暑さのせいで考えることも面倒になった僕は駅前を目指して歩いた。
時刻は12時20分、空腹もあったのでファミレスへ向かう。
ドアを開け冷たい空気で満たされた空間に足を踏み入れる。すぐに店員が来るが僕の顔を見るなり不思議そうな顔で口を開く、
「…あの?お忘れ物でしょうか?」
はい?全く意味がわからない。今日初めてどころかここ半年くらいこの店には来ていないのだが…。
「いや、普通に食べに来たんですけど…」
「で、では奥の席へどうぞ…」
店員が不思議そうな顔をしたまま案内をする。食べるものは決まっていたためそのまま注文したのだがその時も店員はあれ?とかいやでもとかブツブツ言っていた。なんなんだろうか、朝の男といいここの店員といい僕が何をしたっていうんだよ。
そのまま僕は出てきた料理を平らげ、少しの間涼しさを堪能し店を後にした。
店を出て行くあてもなくフラフラと歩いていると前から僕の数少ない友人であるB介が歩いてくる。B介は僕を見つけると少し不思議そうな顔をしてこちらに駆けてくる。
「おーいA弥!お前さっき向こうのゲーセンにいなかった?」
B介が指差した方向はちょうど僕の進行方向だった。
「いや、今すぐそこのファミレスで昼飯食べてたとこ」
「まじ?じゃあ見間違いか?いやでもあれはA弥だった気がするんだよなぁ…」
「見間違いだと思うよ。それよりまだ暇?」
「今から俺バイトなんだわ、悪ぃな」
「いや、気にしなくていいよ。どうせ最初は1人の予定だったし。バイト頑張れ」
「サンキュ!じゃあな!」
B介と分かれた僕は駅前に来たら用事もなく行きたくなるアニメショップへと向かった。
アニメショップへ行くには1度大通りに出なければいけないがこの暑い中人混みにはあまり入りたくないのでその大通りの少し手前のビルの裏を通ることにした。いつもは暗くてジメッとしているからあまり通りたくはないが人混みよりはマシだ。
裏道に入った瞬間何か違和感を感じた。なんとも言えない気持ち悪さ、不快感、そんなものが一気に這い上がってきた。それでも僕の足は前へ前へと歩き続けた。
そのままL字の道の突き当りまで来た。そのまま横を向くとよく見知った服を着た人が立っている。
俯いていて顔は見えないが僕の来ている服と全く同じものだ。
そいつは何かブツブツ言っている。そのままゆっくりと近づいてくる。
あれはやばい、逃げろ、逃げろ、そう思っても体は動かない。気づけばそいつはもう目の前まで来ている。
「──────、───────」
何を喋っているのか分からない。
「君は、誰、なんだ?」
「ぼ──、──だ─」
「聞こえ、ない」
「ぼ─は、─みだ─」
そいつはずっと俯いて喋っていたがゆっくりと顔を上げる。その顔はひどく醜く笑う僕自身だった。
呼吸が早くなる、体が動かない、顔が引き攣る。そんな中そいつは今よりも一層醜く笑う。
「僕は、君だ」
「お前が、僕…?」
そこで僕の意識は途切れた。
「うああああああ!!」
叫びながら僕は飛び起きた。部屋は熱気がこもり蒸し暑い、全身は汗ばんでいて気持ち悪い、最悪な目覚めだ。
とても気味の悪い夢を見ていた、だが今はそんなことよりシャワーを浴びることにした。部屋を出て脱衣所に向かう。脱衣所の扉を開け服を脱ぎ始めた時に不意に鏡に目がいった。数秒鏡を見ていると鏡の中の僕がとても醜くい笑顔で僕に言う、
「僕は、君だ」