第4話 女神様からの頼み事。
「俺を2人のいる世界に連れて行ってくれッッ!!」
「無理だねー」
軽く断ってくる女神様。
それでも真琴は諦めない。
「なんで…なんでだよ…ッッ!」
「そりゃあ君の肉体が今はないからに決まってるでしょ…」
真琴は唖然とした。なぜ自分の肉体がないのか。それすらも忘れてしまうほど彼は焦っていたのだ。
「それより君さぁ…肝心なことを忘れていないかい?」
「なんのことだ……?」
「君をここに呼んだのって、君の願いを叶えるためではないんだよ?ただ単純に、僕の頼みごとを聞いてもらえるように呼んだのがたまたま君だっただけの話。それを君はちゃんと理解しているの?」
背筋が凍るような感覚を覚えた。セラが真のことを見る目を変えたのだ。
(そうだった、いろいろありすぎて混乱していたが、もともと俺はこの女神様に生かしてもらっているようなもの。ここで怒らせたら、俺の存在は…)
自身の置かれている状況を理解したうえで改めてセラに質問した。
「すまなかった。いろいろなことが一度に起きすぎて……。改めて、依頼について詳しい話を聞きたいんだが…」
セラは真琴を見る目を優しい目に変化させ、「分かったよ~」と笑顔を向けてくれた。
もう二度と機嫌を損ねないようにしないといけないと誓った真琴であった。
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「では、改めて君に頼みたいこと説明するよ?準備はいいかい?」
「大丈夫だ。よろしく頼むよ」
2人は改めて話し合いをすることになった。もちろん真琴は余計なことをいうつもりはない。次にそんなことをしようものなら、俺という存在を消されかねないからだ。
「君に頼みたい事…それは…」
真琴は少なからず緊張していた。ここでどんな無理難題を押し付けられるのだろうと…。
「僕が作った世界のうちの一つに問題が起きている。それを解決してもらいたいんだ。」
「問題の…解決…」
「つまり簡単に言うとだね…真琴くん!ちょっと異世界まで行って僕の代わりに、いろいろな問題を解決してきてくれないか?ってことさ!」
予想通り難しい問題だった。「こんな知識しかない俺に何をしろとッッ!?」と心底叫びたいと思っていたがそこは我慢し、なるべくオブラートに包みながら自分の考えを伝えることにした。
「すまないけど俺ではその頼みごとをかなえるほどの能力は持ち合わせていないよ…」
「そりゃ今の君にはね。これから行ってもらう世界では魔物が大量にいるし、基本的に生きている人1人1人も魔法が使えるからねー。君が行ったところで意味がないと思うよ?ついでに肉体もないんだし。」
「ならなぜそんな無理難題を…?俺に任せようと思ったんだよ…」
当たり前の疑問を投げかける。実際魔法は使えないただの人間(いまはただの精神体)である。
「だから言っただろ~!面白そうだと思ったからさ。」
(本当にそんなことで選んだのかよ…)
「そうだってば…君、僕が心の中を覗けることも忘れたのかい?」
そういえばそんなこともあった。しかし、今はそれよりも大事なことがあるだろう…
「まぁ、さすがに何もないと、頼み事も実行できないだろうから、君には新しい肉体とスキルを与えることにしたんだよ。それも君が持っている知識を生かせるようなスキルをねっ!!!」
「なッッ…!!」
セラは胸を張りながら高らかに宣言した。が、真琴はというと驚きすぎて、目を点にしていた。
「おーい真琴くーん…。時間がないから進めちゃうよ~」
セラは聞こえてるのかわからない真琴に向かって、話を進め始めた。
「まず君に与えるのは肉体。魔力が使えない君が魔力の宿っている肉体に宿るとどんな拒絶反応が起きるか分からないからね。魔力の代わりに筋力を限界まで乗せておいたよ!あと顔はちょっとカッコよくいじっちゃった~」
神様は淡々と説明してくるが、真琴の反応はない。情報を処理しきれないのだ。しかし、そんなことはお構いなしに、説明は続いていく。
「スキルについては、言語理解、マップ、ストレージボックスを入れておいたよ!あっ!肝心のユニークスキルだけどこれは君専用のスキルだからね!まず武器召喚、カタログに載っている君の世界の武器を、お金と交換で召喚できるぞ!あとは、ゲームとかにあるオートエイムの能力を再現しておいたから、銃とかも使って頑張って使ってねっ!」
それって、ただのチートじゃないか…とも思ったが、相手は魔法とか使ってくるんだしこれくらいがちょうどいいのかと判断した。
「あとは…最初の武器創造分としてあっちの世界の金貨100枚を渡しておくね!」
そして、説明を終えたセラは、真琴にむか向かって腕を振る。すると、足元が発行し、魔法陣が現れた。それは2年前に見たものと似ているが、異なったものだった。
自分の置かれている状況をようやく理解し、これから行く場所について何も知らないことに気が付いた。
「っ!セラぁ!結局俺はどこに行くんだよ!?」
「君に行ってもらう場所は、様々な国が点在する世界 【ウォーレン】にある、レイナード王国だ。そこからは自分の力で頑張るようにっ!」
本当に聞いたこともない世界に連れていかれることを実感した真琴だったが、最後にセラはとんでもないことも、言い放った。
「ちなみに君が会いたがっていた2人も同じ世界にいるはずだから会えるように頑張ってねっ!」
「……はぁ?ちょっっそれどういう…!!」
「んじゃぁ元気でねー!あの世界のことは任せたよーっ!」
「ふ、ふ、ふざけんなァァァァァァァァァ!!!!!」
こうして長かったような、短かったようなセラとの時間は終わりをつげ、真は新たな世界に旅立っていった。様々な感情を抱きながら…。
(なんかそう遠くはないうちに、また会うことになりそうな気がするのはなんでだろう…)