第3話 消えた2人について
「女神様…あんた今なんて言った…?」
「だから、2年前に起こった君の大切な2人を連れ去ったあの事件のことだよ~」
いきなり無視できない話題が飛び出してきた。だが、真琴が食いついたのはそこではない。
「面白い経験…だとッッ!!お前…あの事件を面白いって言ったのかッッ!!」
真琴は怒りで我を忘れ、女神様に向かって問答無用で叫び続けた。
「俺は2年前のあの事件でかけがえのない…本当に大切な2人を失ったんだぞッッ!それをお前は面白いだとッッ!テメェが女神だかなんかはもう関係ねぇ!あいつらを侮辱する発言は絶対に許さねェェェッ!!!」
「ちょ、ちょっとま…」
真琴はただひたすらに、女神様…セラに向かって拳を振るった。例えそれが当たらないとしても。許せなかったのだ。あの2人に対する侮辱だけは。
「しょーがないな-“スリープ‘‘」
「なっっ…に…」
「まったく…話は最後まで聞いてよね…」
この言葉を最後に真琴は再び意識を失った。
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夢を見ていた。それは2年前の事件が起こる前、高校受験前の夢だ。俺達3人は最初から同じ高校に進むつもりだった。
ただ、楓と宗司は勉強が苦手で俺が勉強を教えていたのだ。
「真琴ぉーこの問題わかんないんだけどぉ~」
「俺もそこ分かんねぇや!教えてくれよ!馬鹿にも分かりやすいようにな!!」
「しょうがないな…この問題はね……」
この時は、このメンバーの誰もいなくならずに毎日楽しい生活をこれからも送れるんだと思っていた。何とか受験も終わり、合格できて3人は喜び合った。新しい制服を着て、入学式に臨んだ。
その帰り道であの事件が起こった。俺は絶望した。病院のベットの上で。自宅で。一緒に通うはずだった高校で…
「なぜ自分だけここに残っている。」「俺も一緒に…あいつらと…一緒に…」
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「ぐ…ぉ…こ、ここは…」
「あーやっと起きた…おはよう寝坊助君?」
「なんで俺は、気を失って…?そうだ、お前に変なこと言われて…。」
真琴は自分が何をしたのか1から思い出していった。
「君ぃ~人の話を最後まで聞いてくれよ…ついつい僕も魔法を使っちゃったじゃないか…」
「だがお前もッッ…いや、たしかに俺が話も聞かないで切れたことも原因か…」
「そーだよ!確かに僕は面白い経験とは言ったけど、君の大切な友達を侮辱するつもりじゃなかったんだから」
そんなこと今言われたってとも思ったがその考えをすぐに捨てた。
(どうせ心の中読まれるし…)
「なんか今考えたでしょ…」
じっと見つめてくる神様に対して「そんなことは…」と軽く流し、話を本題に戻すのだった。
「あの時の面白い経験っていうのはね、魔法陣が君に影響しなかったってところなんだよ。」
「どういうことだ?それは?」
「普通に考えてみてよ、君はあの時、ほかの2人とそこまで離れずに歩いていたよね?通常であれば君も魔法陣に巻き込まれる可能性が高かったはずでしょ?」
確かにその通りだった。あの日は確かにそこまで極端に離れて歩いていたわけでもなかったはずだ。
じゃあなぜ、魔法陣に巻き込まれなかったのだろう。
「だけど、僕にはその原因がすぐにわかったよ。」
「一体何なんだそれはッ!教えてくれッッ!!」
「君には、一切、魔力が流れていなかったんだよ。それが原因さ。」
真琴には訳が分からなかった。魔力というのは自分たちの世界には存在しない力であって、存在しているなら魔法を使える人などが、多く出てきていると思ったからだ。
「君は勘違いをしているよ。全世界に存在するすべての生命は生まれながらにして皆、魔力を持っているんだ。この世界の人々は魔力が少なすぎて使えないのもあるけど、まず第1に使用方法を知らないから使うことができないんだよ。」
「じゃあなんで俺には魔力がないんだ…?」
疑問点はそこだ。生物ならだれでも持っているはずの魔力をなぜ自分が持っていないのか。それだけが気になっていた。
「それが、君を選んだ理由の一つだね。なんで、君には魔力がないのか、近くで観察すればわかると思ったんだけど…さすがの僕でも分かんなかったよ~」
てへへ…と笑う女神様。可愛すぎない…?
「り、理由の一つってことはまだ理由があるんだな?教えてくれ。」
「まぁ、簡単に説明すると、君の見た魔法陣が関係しててね…。あれって実は勇者召喚の魔法陣だったりするんだよ…」
「……へ?」
ちょっと待てよ…。勇者召喚?つまりは異世界転移…。ということは…もしかして、もしかして、もしかしてッッ!!
「セラッッ!!」
真琴はは声を張り上げた。張り上げらずにはいられなかった。
「あの2人は…楓と宗司のは…生きているのか?」
するとセラはゆっくりと真琴を見つめ、
「あぁ、その2人は現在とある世界の勇者として召喚されて、今はそこで生きているよ」
と、言った。
この神様の発言を聞いたとき、俺はただただ、あいつらに、楓と宗司に会いたいという一心で女神様に願ったんだ。
「俺をその世界に連れて行ってくれッッ!」と…。