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モンスターパレード

「囲いから抜けたものから対処せよ! 囲いの中は女狐らに任せる!」

「アルテミス! 可能な限り呼び出して!」

「ほぉ~い。いくっすよ~」


 アルテミスはピョンピョンと壁の段差を飛び跳ねながら土壁の上に立ち魔力を開放。

 魔力が落ちた先に兎、狼、鰐、蛇など少しだけ面影を残す魔獣が発生する。

 その魔獣達は土壁の方位から逃れた魔獣を追いかけたり、襲い掛かり、噛み殺したりする。

 混戦となった状況ではパッと見ではどれが味方なのか分からない。


「アルテミス、中の様子は見える?」

「小物がウジャウジャいるっすよ。あ、グーさん発見っす」


 建物が崩れていく中、グレタは落下物から全員を守るように魔力障壁を展開。

 ヴァーノンは後方を警戒しながら殿を務め、クセニアは襲ってくる魔物に火球を放つ。

 だが仕留めるまでとはいかず徐々に相対する数が多くなっていく。


「大丈夫そう?」

「あー小物処理は期待できそうにないっすね。それなのに後ろには一匹でっかいのと、人っぽい変なのが一匹。あ、ヴァーノン吹っ飛ばされたっす。無様っす。あっは~」


 アルテミスは土壁の縁に座り足をブラブラさせながら腹を抱えてケラケラ笑う。


「インゴさん! クウと一緒に中をお願いできますか! アルテミスは遊んでないで外側で暴れまわって! モーナは私から離れないでね」


 アルテミスがインゴの横に飛び降りる。

 クウはモーナの頬を舐めてからインゴの元へ。

 インゴは土壁造りを終え、龍脈を身にまとう。


「ちと脆いな。龍脈を使いすぎたか」


 インゴは土壁に手を当て鎧を補強する。ベコリと土壁が抉られた。


「兎娘、穴を開けるぞ」

「任せるっすよ」

「オォォン!」


 インゴは足を上げ戦斧の刃平ををフルスイングで壁に当てる。

 抉りへこんだ部分の土壁がいくつかの塊となって四方へ飛んでいく。

 運悪く塊に当たった魔獣は身体の一部を欠損し動きが鈍る。

 頭部に当たった魔獣はその場に倒れ、仲間の異変を感じ取った魔獣達が一斉に向かってくる。


「ワォォォン!」


 クウの魔力を帯びた威嚇で子ども程の小さい魔獣はパタリと倒れる。

 一拍を置かず、隙間を縫うようにグレタ達と合流を狙う。

 インゴはその後ろを追い、襲ってくる魔獣を迎え撃ちながら進む。

 壁穴から我先にと這い出てくる魔獣の相手をアルテミスが担った。


「ニア姉、中々の数っす! ちょっと手が足りないっす!」

「正直怖いけどやってみるしかないかな。アルテミス、ごめん。負担をかけるよ」

「アレっすか。了解っす」


 アルテミスは指笛をピューと鳴らし仲間を呼び寄せる。

 そして少しだけ後退し目を閉じ魔力を練る。


「準備おっけーっす!」

「我が身に宿りし聖霊よ。我、欲しは力の加護。汝の御業を持って彼の権能を体現せよ!」


 コニィアを中心に魔法陣が展開。渦巻く風がコニィアの髪を波立たせる。

 アルテミスの両瞳が緑色に輝き、両手は黒い影が纏わりつく。


「今回はとんでもねぇ威力っす! 制御できるか自信ないっすよ!?」

「それをやっちゃうのがアルテミスの良い所! 信頼してるよ!」

「マジっすか。お~きぃ~どぉ~きぃ~頑張るっすよ」


 魔力を練っている間の前衛として呼び寄せた魔獣が首を噛まれて倒れる。

 細かい粒子となり消えていく最中、交代するようにアルテミスが突進。敵魔獣の胸を右貫手で穿つ。

 すると黒い影がその魔獣を覆いはじめ、魔獣は脈打つように痙攣しはじめる。


「ななななな何すか! 何なんすか! どうなってるっすか!」


 アルテミスは後方へ一足飛び。だが黒い影は右手から伸びたまま魔獣を覆い隠していく。


「モンモンの悪趣味が全開っす……気持ち悪いっすよ」


 覆っていた影は魔獣に空いた胸の穴から取り込まれ、穴を塞ぎ心臓の代わりをするかのように脈動する。

 魔獣の痙攣が収まり、力なくうなだれるとそのままゆっくり身体の向きを反転。

 身体を左右に大きく揺らしながら歩き始め、向かい合った魔獣を手当たり次第に襲い始める。


「干渉できる?」

「無理っす。魔力的な繋がりはないっす。明らかにここにあるのに、何も感じないっす」


 アルテミスは両手の影を見つめながら手を握って開いてを繰り返す。


「一度ソロモンからじっくり話を聞かないと駄目だね。これはかなり危なっかしいわ」

「それを今も使っているウチはどうなんすかね?」

「アルテミスなら大丈夫! 信じてるからね! 頼んだよ!」

「さっきも聞いたセリフっすけど、信じて頼むから信頼なんっすよね。んじゃ期待に応えるっしかないすっね!」


 インゴが開けた穴から続々と魔獣が出てくるが、アルテミスは負けじとどんどん倒していき、倒れた瞬間から黒い影は魔獣を包んでいく。

 倒した数だけ味方が増えていき形成は有利になるが、魔獣が魔獣を喰らっていく地獄絵図だ。


「この黒いのは死んだ魔獣にくっ付くみたいっすね。気絶してるっぽい魔獣はそのままっすもん」

「怨霊みたいなものかな。亡霊の獣で亡獣(もうじゅう)なんてどう?」

「ニア姉は随分と余裕があるみたいっすね。少し魔力を貰うっすよ!」


 コニィアの魔法陣が強く輝く。比例してアルテミスの両手の影も勢いを増す。

 勢いを増した黒い影に触れた魔獣の腕が切り落とされ、傷口には黒い影がそのまま纏わりつく。


「ありゃー。身体強化に使う間もなく吸われちったっす。魔法の同時行使は無理っすか」

「んじゃ課題は魔術的要素で――って研究所だからって研究考察はしません」

「ん~突っ込みも出来るならまだまだ平気っすね」


 アルテミスは両手を組み影を大剣のようにしながら魔獣を群れを縫うように切り抜けていく。

 恐れをなしたか諦めたのか、あっという間に扉から出ようとする魔獣はいなくなった。


「落ち着いたっすね。周辺見てくるっすか? それともグーさんと合流するっすか?」

「外を一周回ってきて。おかしな箇所があったら連絡お願い。その間にこれを解除しておくよ」


 コニィアの額に薄っすらと汗が出る。


「うちが制御出来てたら問題なかったすけどね。ごめんなさいっす」

「アルテミスへの魔力供給はもう断ってるの。その黒いのに無理やり奪われてるって感じかな。正直しんどい」

「モンモーーーーーーーン! グヘェッ!?」


 天に向かって旧友の名を叫んでいると後ろからヴァーノンが吹っ飛んできた。


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