編成と編制
「そんなことしてたのね。まぁクレイが動いてくれて助かったけど。オロフはどうする?そっちに専念する?」
「そうですね。護衛も兼ねて王都に残ります。レイニーの軌道修正をしないと大変な事になりそうですし」
正座のシュテルンは冷や汗が止まらない。
「私は別に構わないけどな。長〜く生きてるとそう言うこともあるだろうし。あ、でも既婚者はダメだと思う。色々と。倫理的に。誰かが傷つく事はやめてね」
オロフはサッと視線をそらす。グレタはオロフの顎をクイっと引き寄せ視線を無理やり交差させる。
「わかった?返事は?」
「はい。承知しました」
「よろしい」
オロフの頭をポンポンと軽く叩く。
「こんな感じのシーンが所々で見られる物語って事でしょ?そんなに畏るものかなぁ」
シュテルンの冷汗が勢いを増す。
「ほうほう。今以上のシーンを想定しているとーーあ〜確かに小さい子には見せられないか」
「申し訳ございませんでした!勘弁してください!」
事の発端はグレタとオロフが木国へ出発し、アマビスカとヴァーノンがインゴにボコボコにされ傷の痛みに唸っている頃に遡る。
兄夫婦の愛情論に洗脳されかけたクレイブがレイニーに話を持ちかけたところ、『薄本作りに取り掛かる時が来たか』と意気揚々と直ぐにファンカード職人を一堂に会し、漫画の知識を披露。先の冷蔵庫のように、職人達の知識と経験が化学反応を起こしレイオン流の同人誌作りが幕を開けた。
原画は職人に任せて、レイニーは脚本を担当。ニアxマイ以外に需要が見込めそうな紅蓮華内カップリングを模索する。ニアxマイ資料作りを兼ねて、修行から帰って来たシュテルンに聞き込みをする。その時話した内容がグレxオロの濃密な満開お花畑だった。あれから多少の時間が経ったため、ある程度具体的な仕上がり見込みが出る頃か。いやオロフという演出家が現れリスケになるのかもしれない。職人達の眠れない日々が訪れるのも時間の問題かもしれない。
「んじゃ、オロフに護衛を含め陛下とクレイは任せるとして。残る問題は研究所摘発と組織の動き封じか。各国の変化を見逃さないようにしないといけないし。手が足りないなぁこりゃ」
「ニアはやっぱり先陣きるかな?」
「だね。非道な研究は柘榴として見過ごせないよ」
地面に『柘榴→研究所』と記載。そのまま正座しているシュテルンの横にも『→王都(貴族)』と書く。
「シュテルンには王都に残ってもらおうかな。組織と関わりを持っているであろう貴族連中を押さえてもらうね。アー坊だと尻尾を出さないだろうから」
「粉骨精神気張らせて頂きます!」
「そういうのもういいです」
オロフが冷たく言い放つ。
「んじゃグレタ姉、俺は?」
「アー坊は鉱族をお願い。組織が何かしでかすかもしれないからね」
「了解。インゴさんはどうするのさ」
「あの人は私と一緒に研究所に向かう。情報が正しければ待ち人が居るはず。あの人にも見過ごせない過去がね」
「そっか……グレタ姉なら安心できる。お願いします」
アマビスカは深く一礼する。
「あ、出来ればヴァーノンさんも研究所組にお願いできるかな。インゴさんのこと俺の代わりに見届けて欲しいし、ニアもクセニアも安心すると思うから」
こうして大雑把ではあるが従魔研究における闇払いに向けての方針と薄本出版が決定した。




