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問の答え

「アデレートが言っていた言葉を覚えてる?」

「暗号めいてたことだけは覚えてるけど」


 いくらかいつもの調子に戻ったグレタさんとアービーがぎこちなく平静を装う。


「土、水、火はそれぞれの国。斧は金国。大樹は木。だけど『育てし』となると話は変わって来ます」


 先生がグレタさんに溜息混じりで視線を送り話を引き継ぐ。グレタさんは手を擦り合わせ『ごめーん』と聞こえそうな表情をする。気まずそうに先生を上目遣いで見るアービーに片目を瞑る先生は凄く優しくてーー俺を睨む目はとっても怖かった。


「私とグレタが手塩にかけた情の温度差に違いはあれど、育てた人物には変わりありません。師事者をホイホイと使い捨てのように変える薄情者だとしてもです。魔導の概念ぶっ壊し隊は自然消滅ですか?私の事なんてどうせーー」

「おーし!後は任せて!オロフはすこーし黙ってようか」


 早々と語り手が変わる。先生はブツブツと呪言を宣う。とりあえず怒っている理由はレイニーさん絡みではないようだ。少し安心。


「とにかく!育てし大樹とは蒼月が関わった紅蓮華やレイオン国、大枠だとレイオン王政が危ういという話なの」

「それがどう俺達に関わるのさ。テリーがクーデターでも計画してたか?」

「アマビスカ殿下お戯れを。ぶん殴るぞ」


 軽口には軽口で返す。


「正直そうなってもおかしくないのよ。そのくらい事態は複雑で不確定。急速な変化は予想以上に人の心を狂わしてしまったようで。アー坊の覚悟は良いとしてーー」

「シュテルンさんは幼馴染やお父上と袂を分つ覚悟はありますか?五年前、私達が初めて野営をしたあの日の問いを覚えてますか?様々な知識だけでなく経験も得た今、あなたは何をするのですか?」


 あの時と同じ先生の優しい口調。あの時は答えられず先生の気遣いで話は終わった。でも今日は違う。


「良くも悪くも俺の幼馴染達は揃って普通じゃない。何しでかすかわかったものじゃない。だからこそ俺が二人の手綱をしっかりと握ってなきゃいけないだと思ってます。コイツらが暴走したら怒鳴って叱ってぶん殴れるのは俺だけだと思うから」


 最高の笑顔をアービーに届ける。同時に魔銃を向けられ直様両手を挙げる。アービーの顔は見れないがかなり照れているようだ。そんなアービーをグレタさんがニマニマと茶化す。


「まぁ答えられただけ成長したと思いましょう。。それとシュテルンさん。もう一つ確認しておきたい事があります」


 先生が眼鏡をクイっと整える。グレタさんはアービーにベッタリ。されるがままのアービーは興味深く見守りに入る。


「あなた、レイニーさんと何か企ててませんか?」

「なっ、ななななんのことでつか?」

「あらら」

「おっとぉ」


 グレタさんとアービーの反応で誤魔化せてないだろうと推測。ならば……


「申し訳ございませんでした!ほんの出来心でした!決してお二人をあの様な邪な感情のうえでお慕い申し上げておるわけではございません!ご容赦を!」


 レイニーさん直伝の土下座を綺麗にキメる。これでこの場は丸く収まるはず。


「なんの事だかさっぱり分かりませんが、その件は後で聞かせて貰うとして。少し私も噛ませて欲しいのです。どうしても叶えたい願いがありまして。願いーーそう。夢の世界を現実のものに……うふへははしゅひ」


 不気味な笑い声をする師匠はどこかクセニアと同じ匂い(腐臭)がした。

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