情報収集その参 独白
ヴァーノンの取りなしもあり落ち着きを見せたアマビスカはバツが悪そうにそっぽを向く。代わりに頬をかきながらヴァーノンが問う。
「なぁインゴさんよぉ。俺は馬鹿だから上手く言えねぇけど、あんたが何かを黙ってるって事ぐらいはわかる。てか団員みんな気づいてる。あんたの事だからその理由は自分の為じゃなく誰かの為だって事もな。だから俺達は待ち続けた。あんたが俺達を受け入れてくれるって信じてな。だから確認させてくれ。あんたは俺達を仲間だと思ってくれてるのか?それとも」
「ぐだぐだとしつこいの。儂にも事情ちゅーもんがあるんじゃ。若僧は黙っとれ。ほれ、さっさと外へ出ろ。久しぶりに稽古をつけてやる」
インゴは戦斧を持ち込みヴァーノンとアマビスカに対峙する。ヴァーノンは自前の籠手で、アマビスカは訓練用の剣を構えた。
「龍脈云々はさておき、主らの実力を確かめたい。二人掛かりでかかってこい」
ヴァーノンが一足飛びに突っ込み連打する。インゴは軽くいなしてアマビスカの動きに注視する。
「小童!何をしておる!早くせんかい!」
ヴァーノンに重みのある蹴りを放ちながらアマビスカを叱責。アマビスカの所まで吹き飛ばされたヴァーノンはアマビスカを見やる。
「今は何も考えるな。ただ目の前の事を集中しろ。案外あのおっさんは拳で語り合う口なのかもしれねぇぞ?」
脚にオドを巡らせ身体能力を強化しながらチャラけて片目を瞑るヴァーノンは呼吸を整える。整え終わると先程の数倍の速さでインゴに詰め寄る。素早い攻撃にインゴは片手では捌ききれず、戦斧も使い始める。ヴァーノンは籠手にもオドを巡らせ術式を解放。激しい打ち合いとなる。
「腕を上げたのぉ。龍脈を借りずとも良い重みじゃ。じゃがーー」
「ぐふぉ!」
インゴは片足を踏み込むと同時に掌をヴァーノンの腹に当て一気にねじ込む。動きが止まったヴァーノンに回し蹴りを食らわし再び吹っ飛ばす。
「実践は組手ではない。相手の虚を誘い突く。コレが基本じゃ。五年前にお主らも見たあの男ーービルの体捌きはこんなもんじゃないぞ」
「交代だアマビスカ。チョットは話す気になったみたいだ。少し気を練る時間をくれ。二人で潰すぞ」
アマビスカは気を引き締めてインゴに剣を振るう。
「儂の体捌きはビルに及ばぬ。パリスですら敵わないじゃろう。彼奴に人を慈しむ心が宿りさえすれば鉱族は今とは違う運命じゃったろうな」
戦斧と剣が金属音を響かせる中、インゴは昔を懐かしむように話し始める。
「彼奴は鉱族の出ではない。おそらく村を離れた者の血筋じゃろう。最初に会った時は目を疑った。魔獣と戯れておったのじゃからな」
アマビスカは話に気を取られ動きが止まった。すかさずインゴの掌底が綺麗に決まり吹き飛ばされる。
「終わりか?ならば話すことはもうないぞ」
「つれないこと言いなさんなよ。大将」
闘気を纏ったヴァーノンがアマビスカと変わるように撃ち込む。
「ほう。龍脈を強化に使うか。なら儂も合わせようぞ」
「お気になさらずそのままでも良いですぜ旦那」
戦斧を手放しインゴも同様に両拳に気を纏わせる。
「重みが出るようになったのう。上出来じゃ。次の段階へ進んでも良いじゃろうな」
「そいつはどうも。で、話の続きをっと!お願いしっます!」
インゴもパリス程ではないが格闘術には秀でている。その技術は気を纏った拳を何倍にも強化しする。一発でも食らえば動けなくなるだろう。
「彼奴は魔獣を従えていた。共に育った為かと思っておったが、アレも従魔契約なのかもしれぬ。そして土国は魔獣に興味を示した。ビルは魔獣を提供し、土国はその生態を研究する。そしてその内容は次第に歪んでいきーー暴走した」
不意に動きを止めたインゴにヴァーノンの拳がクリーンヒット。インゴは転げ回り宙を見上げる。
「彼奴は魔獣に辺境の村を襲わせ壊滅させた。生き残りを捉え研究の材料にした。人と魔獣の融合を試みたのじゃ」
語ったインゴの頬を涙が伝い地面を濡らした。




