情報収集その弐 叫
「何か分かったのか?」
先程までの物騒な気配を消して魔術具弄りを再開しながら呟く。
「今のところ具体的な情報はありませんが、蒼月が総出で動いています。直ぐに動きがあるでしょう。それとは別に一つだけ気になる事を思い出しました」
「ビルと言えば――腹黒貴族連中が大量に消されたアレか。そういえばキメラ魔獣騒動についても触れていたな」
話は五年前に遡る。
レイオンでは魔導具が普及する前後で、魔導具を利用して富を得ようとする者や地位と権力を求める者による暗躍で大小様々な事件が起こった。
大抵は商人のイザコザや政敵同士の潰し合いで見るに耐えない児戯に等しいが、中には混乱に乗じて仇敵を亡き者にしようとする者や主人を弑して財産を簒奪する輩も現れた。
上流貴族の次男坊以下が箔付けの為に騎士団にお飾り入団する事が多い中、青薔薇騎士団にはむしろ誠実で実力もある人物が嫡子問わず多く集まった。
幼き頃から先人の勇猛果敢な騎士に憧れ身体も心も鍛えている青薔薇団員の事を快く思わないお飾り騎士は数多くいた。そして大抵その親同士もまた政敵同士であることが多かった。
自分よりも他人が繁栄する妬みと虞は、急速に拡がる予見の後押しを得て、今までなら決して選びはしない破滅の選択肢を手にとる。取らせたと言う方が正しいのかもしれない。
そういった羨望や嫉妬の情報を利用して悪事を働く存在は、政治と経済を中心に暗躍し何年もかけて一つの策を弄す。
土国とレイオンの腐った領主や政務官が主に利用された「レイオン市場化計画」と蒼月内で勝手に呼ばれるものだ。
当時の青薔薇騎士団参謀長であったベッテが疑惑を感じ、ミーチャが仮説をした内容を蒼月が裏付け。加担した貴族は粗方処分できたが、話を持ち掛け両国を繋げた組織の存在は確認出来たが所在も目的も未だ不明。断片的に確認できたことは、『レイオン敵視』と『非人道的な生体実験行為』、そして『鉱族襲撃』。未だインゴはその背景について明確に証言はしていない。
「あれから五年です。僕達が共に歩いて五年です。あの時には確かになかったけど、今なら確かにあるはずだと思っています」
インゴは再び手を止める。視線は何かに想いを馳せるように宙を見つめる。
「五年じゃ僕達の間には信は生まれませんでしたか?五年じゃ僕達を頼ることは出来ませんか?」
インゴは応えない。ヴァーノンは熱くなりそうなアマビスカにハラハラするも口出し出来る様子ではない。
「五年如きじゃ僕達はあなたの悩みも苦しみも何一つ、何一つ分けて貰えないのですか?」
インゴは応えない。その姿にイラついたアマビスカは掴みかかるが、既の所でヴァーノンに羽交い締めされる。
「あんたは言った!未来の為に闘うと!あんたは宣言した!みんなを護る為に闘うと!だったら何が何でも闘えよ!使えるものは何でも使えよ!矜持だがなんだか知らねぇけど、そんなつまらねぇくだらねぇモンなんか捨てちまえよ!グダグダ考えてねぇで俺達に話せよ!俺達にもあんたの為に闘わせろよ!」
インゴは口元薄く笑うも眼は冷たくアマビスカを射抜く。
「小童が。よう吠えるようになったわい」




