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情報収集その壱

 すれ違いざまクレイブと手を叩き合ったグレタは颯爽と部屋から出て行き、オロフは逆に畏まって一礼をし部屋から出て行く。一拍置いて部屋の外からオロフの気合の入った『おっしゃぁ』にはクウだけが耳をピクピクさせていた。


「父上はどうするのです?」

「蒼月が使えない今はやれる事が少ない。と言うかない。父親らしく家族サービスに勤しむとしようかな」


 両手を広げ『さぁ飛び込んでおいで』とアピールするが息子はげんなりと冷たい視線を送る。


「飛び込んでやれよアマビスカ。その方が面白そうだから」

「親孝行ですよアマビスカさん」

「フス」


 二人と一匹も悪ノリする。クレイブの狙い通り、さっきまでのピリピリした雰囲気が一気に霧散する。


「親孝行は別の機会にしてーーグレタ姉はどうかしたの?珍しく気が立ってたけど」

「さっきの伝言とやらは木国の暗号だったらしいな。ハッキリと木国としての立場を示していったからな。触れて欲しくないようだし詮索は無しだ。いいな?」


 グレタと付き合いの長い父の言に黙ってうなづく。


「だけどレイニーの件はオロフさんに任せたまま?」

「あ……まぁ頃合いを見てレイニー殿に伺ってみよう。話が通っていればよし、聞及びでない時は俺が代わりに動こう」

「殿ってーー随分と評価しているんだね。あんな変人を」


 クレイブはアマビスカの頭をワシャワシャする。


「拗ねるな拗ねるな。俺はお前も評価している。だけど彼には頭が上がらん。俺の予想を遥かに超える発想と行動力。経済の中心的な人物となった今でもその勢いは止まらない。拾いものだが、かなりの高性能だ」

「うわぁ悪どい。まるで裏で操る悪役の顔だ」


 ワシャワシャを跳ね除け、照れ隠しで悪態をつく。


「クセニアはグレタ姉の指示を待つとして、ヴァーノンさんはどうしますか? お暇でしたらちょっとご相談があるのですが」

「その喋りなんか気持ち悪りぃな。いいぞ。付き合ってやるよ」

「俺としてはグレタの指示に従ってくれると助かるが」

「あるかどうかも分からない指示待ちより、黒曜隊長のご要望にお答えすることが私のやるべき事かと愚行致します。やっぱ無理だわ。こういうのは気持ち悪い」


 クレイブの真似をして口調で敬意を表する。が、気持ち悪さゆえ自分のキャラを再認識したヴァーノンとアマビスカは練武場へと向かい、訓練真っ最中だったインゴを捕まえる。

 アマビスカは剣と銃を取り外し卓に置く。


「ニアとテリーが特殊武器を装備しました。俺もバージョンアップを希望します。何か出来ませんか」


 ヴァーノンが盛大にむせる。急いで取り繕うヴァーノンを不思議そうに見ながらインゴは顎髭を撫でる。


「彼奴らには試作品なぞ渡しとらんはずじゃがな。何があった」


 アマビスカはアルテミスとティターニアとの経緯を簡単に話す。


「精霊か。淵源とは大きく出たのぉ」

「その辺りも教えて頂けると助かります」

「なんじゃ。聞いとらんのか」


 インゴは机上に紙を広げて五行相関図を描きながら話す。


「この五行にはそれぞれ象徴とする色がある。土は黄、金は白、水は青、火は赤、木は緑。そして淵源とは始まりの者。自我を持ちし聖なる存在。受肉せし精霊の子たる我らを導き護るもの。似たり寄ったり同じ様にどの国にも語り継がれておる」

「では黄の淵源も存在すると?」

「おそらく。だが誰も見た者はおらん。確認出来ている淵源は土と水以外じゃ。それで?そんな話をしに来ただけではあるまい?」


 インゴは半ば呆れながらも置かれた魔術具を点検する。アマビスカは息を整え話し始める。


「他には二つです。一つは龍脈を学び、更なる武の向上を目指したい。もう一つはーー」


 アマビスカは生唾を呑み込み、覚悟を決める。


「インゴさんが憎んでいる相手ーービルという人物についてお聞かせ頂きたい」


 インゴの動きが止まる。

 好々爺から一転、目の前には生きとし修羅が闘気を纏って現れた。

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