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 兄二人を容赦なく撃沈したマインはコニィアを見つめる。その視線に気づいたコニィアは真剣な表情のままマインに近づいていく。

 その様子を幼馴染二人は困惑しつつも、目の前を歩いていくコニィア黙って見送る。


「マイン。ようやく気づけた。私の本当の気持ちに」


 マインも真剣な眼差しをコニィアに送る。その中には少しの迷いと恐れが滲み出ていた。


「聞かせて。ニアの気持ち。これからどうしたいのか」


 コニィアは目を閉じて大きく深呼吸をする。


「ずっと迷っていたの。父上からも叔父様からも王位継承の話をされてからずっと。私に王が務まるのか、ちゃんと統治出来るのか、国民を幸せに導けるのかとかね。幸せな現在を作り、その幸せを未来に繋げていくことが出来るのか。未来ーーそう。私にはその未来が想像できなかったの」


 コニィアは目を開け空を見上げながら話を続ける。


「父上のように王の勤めを果たすことは想像できる。でも自分に私の様な娘や息子が出来ることを想像する事は辛かった。単に政略結婚が嫌だからなのかとか思ってたけど違かった。はっきりわかったんだ」


 コニィアは向きを変え、幼馴染二人の方へ歩きながら話を続ける。


「マインが言ってたようにアービーと、テリーと結婚したらって考えてみたの。どっちも多分楽しくて、なんだかんだで三人一緒になって変わらない関係なのかもしれないって思ったの。それって今と何も変わらないんだよね。だからそれは私がやりたいことじゃないんだ」


 コニィアはアマビスカとテリーの間に収まり、それぞれの手を握りしめてマインに向き合う。


「この三人の関係は何があっても変わらない。喧嘩したって、アービーとテリーが結婚してもきっと変わらない。私達三人で一人なんだもん。だから私が望むものは他にあったんだよ。私が欲しかったのはーーマイン。あなたなの」


 コニィアの握る手に力が入る。そしてその手は怖いのか、若干震えている。

 アマビスカもシュテルンも無意識にその手を強く握る。まるで「大丈夫だ。俺がいる」とでも言うように。


「さっきハッキリと浮かんだの。私が欲しい、大切なものが。あなたが私の横にいる未来が。あなたと一緒にいる時間が私は欲しい。あなたと歩く未来が欲しい。そう強く思ったらアルちゃんが生まれてきてくれた。そういう意味ではある意味アルちゃんは私達の子どもだね」

「おい待て」

「落ち着け」


 幼馴染二人のツッコミには答えずコニィアは話を続ける。


「あなたといる未来を望むから結婚とか考えられなかった。あなたといる未来を願うから子どもとか考えられなかった。私はずっと前からあなたの事がーー」

「待ってニア! それ以上は駄目!」


 マインは困惑して声を荒げる。コニィアの握る手に力が入り爪が食い込む。必然的に両隣の顔が引きつり汗が滲み出る。


「ごめん。ちょっと話についていけない。えーとつまり、ニアは私を好きなのはわかっているけど、その好きは私がニアを好きな気持ちとはちょっと違って、どちらかというと私がテリーを好きな気持ちと同じって事でーーあっ!」

「何ですって!」


 ギロッとシュテルンを睨むコニィア。シュテルンの手が次第に熱を帯び、いつのまにか炎に包まれていた。シュテルンは必死で相殺の水魔法を繰り出す。

 コニィアは走り出し、マインに抱きつき子どもみたいに狂気を交えて泣きじゃくる。


「私の特別になってくれるって言った! 私とずっと一緒にいてくれるって! だから私は頑張れたの! マインがマインが」

「そだね。頑張ったね。ありがとう。嬉しいよ。これからもずっと一緒にいようね。約束だよ」


 マインは耐えきれず思考を放棄。そして責任を感じて慰めることに徹した。

 義兄二人は戸惑い、幼馴染二人は呆然としている。


「嘘だろ……」


 アマビスカは項垂れるシュテルンの肩を真顔で叩く。


「大丈夫。可能性はまだある。むしろ好都合だ。振り回されるのはいつものことだろ? 相棒」

「そうだな。頼りにしてるぜ俺の英雄」


 二人は苦笑しながら同様に思考を放棄。

 一方的な情熱を送り続ける団長と諦めた様子で享受し続ける同僚を見守り続けた。




 後日談だが、二人の関係がレイニーの耳に入るや否や、この尊い清らかな関係を題材とした本の出版に注力。本人達に配慮する手前、それは量的には薄い本となったが内容は熱く濃密でファンクラブ会員にとっては至高の宝物となる。もちろんファンクラブの数だけ組み合わせはある為、一部のマニアにしか受け入れられない腐った書物も生み出されていき、紅蓮華騎士団の資金は大いに潤っていった。

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