問の答え
緑の淵源ティターニア。
木国の祖、受肉した精霊を取りまとめた存在として伝わる。伝承では格好良く描かれているが、実際は遊び心満載で無邪気な精霊。構成種族の殆どが長命種族である木国ではその存在を見かけた人物も多く、「遠縁の親戚の子」的な扱いを受けることもある。しかし子どもじみた見た目の内には膨大なマナが渦巻いており、ソロモンによって荒らされた土地を容易く再生させる手腕を発揮させる。
「今のティーたんに出来ることは再生だけなの。でもでもテー君が手伝ってくれるならイロイロ出来ると思うなの。テー君は何が得意なの?」
百聞は一見にしかず。
恒例の三対三の模擬戦が行われることになる。
※ ※
「準備は良いな」
グレンヴィルは向かい合う幼馴染三人衆と木国一同を中心にして広範囲に結界を張る。
「では始め!」
両チームの前衛が斬り結ぶ。各々の前衛を支援するコニィアとマイン。かき乱しチャンスを作ろうとするシュテルンとアデレート。一対一ならコニィアを除いて紅蓮華に分がある。しかしチーム戦となると勝手が違う。
技量に劣るヨーグが隙を見せると、アマビスカはその隙を突こうとする。狙ったかのようにマインはヨーグの前に土壁を作る。お構いなしにアマビスカは視界を遮る壁を破壊。しかしその先にヨーグは居ない。周囲を素早く見回すとコニィアに向かって突進するヨーグが見えた。
「ちっ!」
アマビスカは踏み込んだ足を軸にして無理矢理反転する。姿勢がブレる中、懐から魔銃を抜きヨーグへと狙いを定める。しかし地中から生えてきた蔦にその手は絡め取られる。間をおかずに足と胴にも絡みつき、剣を握る右手も奪われ戦闘不能に陥る。睨む先には顎を撫でて苦笑するアデレートとしかめ面のマインが居た。
「なにあの三角跳び!」
マインはヨーグの前に土壁を設置すると同じに、ヨーグの左足下から斜めに押し上げるように壁を生成。その進行方向にも向きを変える壁を設置。ヨーグはその壁を利用してコニィアを標的として器用に向きを変える。
思考が止まるコニィアを援護しようと、シュテルンは火弾を放つも一閃で掻き消される。
「こんなものなの! テリーしっかりしろぉ!」
マインはしかめ面を通り越して怒りをあらわにする。
「期待に応えてやるよ!」
シュテルンは舌打ちしながら水槍を放つが、マインはコニィアとヨーグの直線上に土壁を生成。水槍はその壁に穴を開けるも霧散する。そしてヨーグはアマビスカの様に壁を壊す勢いでその穴を刺突し破り抜ける。
「はい終了」
ヨーグは勢いを削がれながらもコニィアに向かって走る。
「ニアッ! あんたは何がしたいのよっ!」
苦しそうな、そしてどこか哀しそうな表情でマインがニアの名前を声だかに叫ぶ。その表情を見た途端、コニィアの脳裏にマインの問いが繰り返される。
※ ※
ーーいつもみんなを引っ張ってたのは誰ーー
仕事サボって街へ遊びに行こうと誘ったのは?
確かに私。アビーとテリがひさしぶりに笑い合ってるのを見て。いつからぎこちない関係になっちゃったんだろう。
五年前の騎士団設立日みんなの歩みを進めたのは?
たぶん私。あの時はまだ普通だったような気がする。
その石を見つけた最初の冒険、先頭に立っていたのは誰?
ごめんなさい私です。あの頃はみんな無邪気に遊んでいた。あの頃は楽しかったなぁ。
ーー楽しかった?何か諦めてる?違う。そうじゃない!これからも楽しく行くんだ!私が諦めてどうする!私だけは絶対、絶対諦めちゃダメなんだ!
ーー先に浮かんだ顔は誰?ーー
「ニア! いっけぇ!」
私の特別は厳しくてもやっぱり優しい。
その問いかけの答えをコニィアがわかった時、卵から発した一筋の閃光がヨーグを吹き飛ばしていった。




