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ティターニア

「では始める。心せよ」


 グレンヴィル老師の指導が突拍子のないことはいつも通りなのだが、目が覚めた第一声がそれかと思うと流石にどうかしていると思う。


 魔法陣の中央に横にされていて、目覚めるやいなや魔法陣を起動される。状況を確認する暇もない。俺は生贄か何かか?


「先と比べると雲泥の差じゃが仕方ない。励めよ」


 どうやら再びアレをやれと言うことらしい。気が進まない。


「もしさっきと同じように襲われでもしたらどうするのです?」


「その時はその時じゃ。断じて認めたくないが、仮に百歩いや万歩譲ってあれが本当に加護様だとするならば同じ憂き目にはあうまいよ。ゴチャゴチャ言わぬでさっさとやれ」


 老師に突き放され嫌々ながらも、マナの流れを読み取るように意識する。

 ペンタグラムにドンドンと色とりどりの鮮やかな光が吸い込まれていく。

 さっきとは違い、ペンタグラムは深い緑の光を放つ。その光は輝きを増して小さな羽を羽ばたかせる可愛らしい小人の形となった。


「うわぁ〜懐かしいところなの。あっ! グーちゃんお久なのっ」


 グレンヴィル老師は『緑の淵源』と小さくボヤいた。


「その呼び方嫌なの。レーちゃんみたいにティータって呼んで欲しいの。大きな声でサンッハイッ!」


 身体を乗り出し、耳に手を当て、観客を煽るような仕草をする小人。


「ノリが悪いの。しょんぼりなの。あれ? もしかしてアルちゃんもいるの? イタッ!」


 小人はニアに向かって飛んでいくも、結界に阻まれ盛大に頭をぶつける。ふぃ〜と言いながらユラユラと地面に落ちる。


 老師は魔法陣を解き、ゆっくりと小人へと近づく。


「よもや再び見えるとはの、ティターニア」


「すっかりお爺ちゃんになっちゃったの。アレからどれくらい経っちゃったの?」


「レイオン様の偉業が不確かな伝承となり霞んでしまう程には」


「全くわからないなの。相変わらず変な奴なの」


 老師達なりの再会を喜んだのか二人(?)は笑顔を交わす。ティターニアと呼ばれた小人が宝石のような緑の瞳で俺を見つめる。


「んで、君がティーたんを呼び出したの? 何か用なの?」


「特にこれといってーー」


「お遊びでティーたんを連れ出したの?」


 ティターニアの雰囲気がガラリと変わる。静かな怒りを感じられ、周りの樹々が震えているかのようにザワザワとする。


「みんなの元気を使って、均衡を破ってまで呼び出しておいて何もないなの? ティーたんも舐められたものなの」


 ティターニアの背後に巨大な樹が現れたように感じる程、力強く膨大なマナが一つに集まっていく。


「精霊の女王ティターニア。我らを侮辱せし者に罰を与えん」


 パッと眩い輝きを放ち目が眩む。腕で光を遮り、薄く目を開いて攻撃に備えるも何かが起こる気配はない。

 光が収まり視界が戻ると、そこには一本の綺麗な花を持ちニヤニヤと笑うティターニアが居た。


「びっくりしたの? なの? 大成功なのーん」


 クルクルと文字通り飛び回り不思議な踊りを踊り始める。ひとしきり動いて満足したのか、花を両手で後手に持ちモジモジしながら上目遣いをよこす。


「本当は呼び出してくれて嬉しかったの。これからも宜しくなの!」


 勢い良くグイッと花を差し出され、極上の笑みを伴いながら首を傾げられた。

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