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夜会

 式典は無事終了。コニィアリンクは各国へと引き渡されたが実質の移送は明朝からだ。旅の無事を祝う名目で晩餐会は開かれるが、実質は情報収集合戦の場となっている。


「いや〜実に素晴らしかった。特にあの冷蔵箱なる物は興味深い。暑い日の遠出が快適になること間違いない」


「恐れ入ります。近々最新の試作品が出来上がりますので検証実験を行うのですが、もし宜しければ水国への旅行検証の感想を頂けませんでしょうか。レイオンからご希望の生野菜をお届けしますよ。確かキノコ類がお好きでしたよね」


「おお!それはありがたい。あのシャキシャキ歯応えが癖になってな。それと例のニーハイの件だがーー」


 レイニーが水国販路拡大の機会を得たその横では、式典で好評だったコスチュームを着たマインがシュテルンと話をしている。


「グレンヴィル様の課題はどう?」


「一応は形になったかな。ただ探知部分がまだまだ。情報が多すぎて有効範囲を広げられなくて困ってる。情報を絞り込む方法が見つかれば何とかなりそうだけど」


「そっかぁ。やっぱりニアが要かぁ。テリーの負担が多くなっちゃうね」


「魔法士の役目はそんなもんさ。全体を見渡して後方支援に徹する役目は俺しかできないからな。ニアは真ん中でアービーの支援に徹してくれればいい」


「あの子がジッとしてられるとは思えないけど。前回は誰が相手だったんだっけ?」


「インゴさんとパリスさんとミレーヌさん。鉱族三強の連携は凄まじかった。お互いの長所を活かすような動きだったと思う。真似できそうに無いな」


「付き合いは長くても長所を活かす動きができない浅い付き合いなんだね」


「おいこら。まぁ俺の場合は身分が違う。幼馴染とはいえ軽い気持ちで付き合っていい存在じゃないんだ。本来なら」


 シュテルンの視線の先にはアマビスカとコニィアが来賓の応対をしている。国王夫妻もクレイブもそれぞれ挨拶に応じている。


「ニアの助けになりたいと思っている。それは正直な気持ちだ。だけど俺にはその資格がないーー側で支える役目は俺じゃないんだ」


「テリー……」


 シュテルンは俯き寂しそうに微笑を浮かべ去っていく。


「言い忘れてたけど、その格好すげぇ可愛いぞ。よく似合ってる」


 振り向かず手を振りながら部屋を出ていくシュテルンをマインもまた寂しそうに見つめている。最後の言葉に頬も身体も熱くさせながら。


「ふむふむ。マインはあの男に興味があるようだね」


「うわっ! アデ兄! 来てたんだぁ!」


 照れ隠しも含めて兄弟子に抱きつくマイン。その後ろで泣きそうな顔でマインをじっと見る男がーー


「うわぁ……ヨグ兄……来てたんだぁ……」


 ジト目で睨まれた義兄は血涙を流しそうな苦悶な表情で衝動を耐え凌ぐ。


「マイン、そろそろバカ兄を許してやってくれないか? 気色悪くて敵わん」


「イヤ。あんな気持ち悪いことする人なんて知らないもん」


 涙を流しながら崩れ落ちるヨーグ。

 最愛の義妹ファンクラブに入会し、ありとあらゆる手段を用いてファンカードを集め、寝室の壁一面を埋め尽くすその行為()は認められる事はなかった。

 ちなみにファンクラブは複数存在し、いずれも紅蓮華騎士団の重要な収入源である。


「しかしなぁ。俺だってほら、この通りファンカードは持ってるぞ。あいつの場合はその数と保管の仕方がちょっとばかし、いやかなりおかしかっただけでーーん、自業自得だな」


「あの部屋にあるカードを全部捨てたら口聞いてあげる」


 シッシと手で追い払う仕草をヨーグに向ける。ヨーグはトボトボと歩きながら、名残惜しそうに振り向くとマインに威嚇される。


「それにしてもマイン。お前さんはあの男を応援する気なのか?」


「テリーのこと? なんでそんなこと聞くの」


「だってお前さん、あの男を好いているだろ。友の事を好きな男に惚れ込むなど難儀よのぉ」


「私は確かにテリーが好き。でも同じくらいニアも好き。アービーと三人でふざけ合って笑い合っている姿を見るのも好き。だから今は、今だけは見守ることに決めたんだーーニアが誰かを選ぶその時まで」


 アマビスカの横で極上の笑顔を見せるコニィアを眺めながら、マインは己の気持ちに蓋をした。


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