式典前
コニィアリンクが完成し各国へ献上される式典が行われることになり、各国の駐在大使はもちろん、各本国からも国王代理として有力者達が続々と集まってきた。
広範囲の攻撃魔法でも放ったら戦争になるどころか五行連合存続も危ういだろう。そのためレイオンだけでなく五国それぞれから腕利きの騎士と魔導士が警護という名目で集められた。
特に剣呑な雰囲気はないのだが、水面下では軍事・経済における情報収集戦が行われている。目下の話題は次期国王の座に最も近く、そろそろ婚姻の話が出てきても不思議ではないコニィアについてだ。
コニィアの母は火国出身のため、他の四国いずれかから婿を取ることになる。魔導分野、文化技術の発展にとって中心人物となっているコニィアとの婚姻は国の発展にとって非常に重要な問題の一つとなっている。もちろんレイオンにとっても。
渦中のコニィアは式典用の衣装合わせやら来賓挨拶という名のお見合いやらで息をつく暇もない。心が休まる時間といえば共に魔導を研究する木国大使マインとの語らいのみとなっている。
「ニアも二十歳かー。王族としては確かに婚姻時期だよね。露骨な挨拶はもう済んだのかな?」
「どこも公爵家の自慢話でうんざりしちゃう。お腹いっぱい。結婚なんてまだしたくないもん」
「おやおや。まだまだ恋愛したいお年頃かな?」
「ん~恋とか良く分かんないんだよね。誰かを好きになったことなんてないもん」
「幼馴染の二人はどう? テリーは綺麗すぎるくらい美形だし、アービーは優しく頼もしいんじゃない?」
「テリーはぶっきら棒、アービーは優しいけど頼もしくはないよ? どっちも恋愛対象にはならないかな」
「でも嫌いじゃないんでしょ?」
「まぁ……ね。兄弟みたいなもんだし恋愛感情とは違うかな」
「私としては幼馴染の三角関係なんて面白くて美味しそうなんだけどね。考えてみてよ」
「丁重にお断り申し上げます」
コニィアの自室兼研究室内での他愛ない話を交えながら、二人はオリジナルのコニィア石を用いて作成した杖の調整を行っている。体術はもちろん魔法も魔術も得意としないコニィアにとって自己防衛の手段を整える必要性は急務である。
「これでどうかな。ニア、ちょっとやってみて」
コニィアの風貌によく合う太陽を模した杖の先端に嵌め込まれた石が光輝く。
「さっきよりは良くなったけど、オドに反応しちゃってるね。マナの感度を上げないとグレンヴィル様のご期待に添えないな。どうしたものか」
グレンヴィルとは木国における伝説的な人物である。マインの祖父ヒュプルズの師でもあり、オロフの師でもある。
また蒼月騎士団の顧問でもあり初代レイオンの仲間のうち数少ない生き残りである。
その知識は代々のレイオン国王を影で支え、時には操り、初代レイオンを盲目的に敬愛する人物である。
そんな大物とコニィアが出会ったのが五年前。オロフ主導グレタ支援の結果、鉱族以外の紅蓮華騎士団創設メンバー総出でグレンヴィルの隠れ里へ押しかけた。シュテルンの得意稀な魔法の才とグレタの根回しもあり、悪ガキ三人衆は揃ってグレンヴィルの師事するところとなった。
「私がもっとマナの扱いが上手だったら」
「そのための魔導具でしょうが。式典の後、合流前に再調整しよ。でもマナとオドの融合なんて本当に出来るのかな」
グレンヴィルの狙いはオドを主体としマナを媒体として様々な事象を具現化することである。
例えば剣。刀身のない柄にオドを流し込み、大気のマナを取込み刀身として具現化する。
使える代物かどうかはこの際問題ではなく、オドの持ち主がイメージした物を作り出せるかが焦点となっている。それが出来れば、紋章術による限定した魔術発動をさらに超える、『魔術士の魔法士化』も夢ではない。
そんな師の目論見になど弟子たちは全く気づいてはいない。
「騎士団員幹部全員集合なんて結成お披露目会以来じゃない? 楽しみ〜」
「私は憂鬱だけどね。よりによって両方来るとは」
「アデレートさんもヨーグさんも可愛い妹が大好きなんだよ。存分に甘えさせてあげればいいじゃない」
「うっざ!」
アデレートはマインの兄弟子。世話好きでマインの幼少期からずっと側にいた。失踪したマインの両親に代わって何かと世話を焼いていた。
そしてヨーグは魔獣に親を殺され、マインの両親に育てられていた。立場としてはマインの義兄にあたる。
二人ともマインを愛している。
「うちのことはどうでもいいの! ニアはさっさと魔術でも魔法でもいいから護身術を身につけなさい」
「あーあ。二十四時間三百六十五日年中無休で私の警備をしてくれる可愛い女の子居ないかなぁ」
願望もまたイメージの源。魔法士にとって重要な要素である事はこの時コニィアはまだ知らなかった。




