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おそれとなやみ

 コニィアは衛兵を下げさせ、叔父であるクレイブ公へ伝令を出した。この件とアマビスカとシュテルンが戻ってくることが無関係と思えず、また二人へ指令を出しているのは他でもないクレイブ公だからだ。


「んー色々言ってきたけど、ニアの焦りが分かるような気がした。私達もグズグズしてられないよね」

「でしょ? あの二人は放っておくと何をしでかすかわかったもんじゃないのよ」

「ま、私から見たらあんたも大概だけどね」


 二人の目の前では落ち着きを取り戻し小さくなったクウと戯れる白衣の女が笑い合い、土国外交官レイニーがクウを恐がり震えながらも馬車の陰から様子を伺っている。


「なにか有ったらどうするつもりよ。アンタは私と違って換えはないのよ」

「そういう言い方ホントに怒るよ?」

「この際だからハッキリ言っとく。アンタは腐ってても王女さま。私は着飾ってもただのエルフ」


 マインは首だけ回して背後をみる。そこには野次馬の人集りができていた。


「今はおてんばじゃじゃ馬娘でも、将来的には国民を護り導く使命がある。危険なことは極力避けて。いい?」

「腐ってないし! 頭に来たのでマインはこの後、着飾り人形の刑に処します。王女の命令です。傍に居て」

「ハイハイ」


 少し震える声と戸惑う視線を追うと、馬車の先に薄らと歩いてくる人影と鬼気迫ったように走ってくる騎兵が見えた。


 ※     ※


 城門での一騒動が落ち着く頃には日が暮れ、レイニー達は青薔薇騎士団の宿舎へ、コニィアとオロフは関係各所の情報統制に向かった。要は権力を持って黙らせると言うコトだ。

 残りのメンバーであるマイン、シュテルン、ヴァーノン、クセニアは揃って酒場へ向かい夕食をとる。


「本当にごめんなさい!」


 クセニアは平謝りするが、至って実害を食らったわけではないシュテルンとヴァーノンは対処に困る。


「先生は厳しくも優しい方です。何か思うところがあったのでしょう。それが分からない不肖の弟子で申し訳なく恥ずかしい限りですけど」

「テリーは相変わらず回りくどいなぁ。クセニアさんだっけ? さっきの訳すと何でピリピリしてるか分からないから気にするなってことだよ」

「生理みてぇなもんか」

「ヴァーノンさんおかしいから。それは」


 マインの解釈にヴァーノンのボケ、シュテルンの不慣れなツッコミが飛び交う中、クウはテーブルの下でガツガツと肉を喰らう。


「結局さっきの連中は何で襲われてたんだ?」

「先生はレイニーさんと話した後すぐに行っちゃいましたからね。王女様も御一緒ですから余程の事なのでしょう」

「次から次へと訳ありばっかじゃねぇか」


 空にした杯を掲げておさげ髪の店員に『もう一杯』と声をかけてヴァーノンは話を続ける。


「クセニアはどうするんだ? やっぱり鉱族に弟子入りか?」

「出来ればそうしたいですけど。でも今日の出来事で自分がまだまだ未熟だと思い知りました。もう一度ゆっくり考えてみたいと思います」

「とか言って、ホントはあの姉ちゃんが気持ち悪いんじゃねぇの? とって食いそうなぐらい興奮してたもんな」

「ははは……」


 クセニアは前のめりに攻めてくるミレーヌを思い出し苦笑いを浮かべる。甘い果実酒にはションボリしたクセニアが映っている。


「ミレーヌさんは凄い方です。ちょっとだけでしたがアドバイスをいただいてコツが掴めましたし。でもミレーヌさん含め鉱族の方々はこれから大変になるでしょう? だから今はもう少し青薔薇に居ようかとも思っています」

「そうか。よく考えて大いに悩め。それは若者の特権だ」


 薄笑いを浮かべながらお替わりを受け取りグイッと煽る。


「ヴァーノンさんって見かけによらず優しいんだね」

「おい嬢ちゃん、動物が擦り寄って来てもおかしくない見た目の俺に対して言うセリフか?」

「鏡見たことないの? お近づきのしるしに今度あげるよ」


 マインとヴァーノンは笑い合い杯を鳴らし合う二人。すっかり意気投合したようだ。


「ちょっと前まで悪どい傭兵稼業、んで今は拙い役人の俺がご立派な身分の方々と飲み食いしてる。ホント何が起こるか分かったもんじゃねぇ」


 ヴァーノンはテーブルの骨付き肉に齧り付き一気に咀嚼する。


「だからこそ何が起こってもお前らみたいな良い奴を護れるように俺は強くなりてぇ。その為に使えるものは何でも使ってやろうと思う」


 テーブルの下のクウが『ハイハイ』と答えるようにゲップをした。


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