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価値

「無事だったから良かったものの! もっと慎重に行動せよ! 聞いておるのか!」

「まぁまぁ団長さん。その辺で許してやってください」

「お前もだヴァーノン! 馬鹿正直に食い止めようとするでない! お前なら傭兵らしく振舞えられただろう!」

「ひでぇや! 俺だってこいつに感電させられたんですよ?!」

「えぇい黙れ!」


 両手を後ろに組んで上の空のアマビスカ。

 ミーチャの怒りがアマビスカからヴァーノンに向いたことをこれ幸いと、マテオはアマビスカに近づく。


「あちらでインゴさんとユリアンさんがお待ちです。後はお任せを」


 アマビスカはマテオに会釈し、その場を後にする。

 先にはインゴがこれまた不貞腐れた様子で切りだった岩に腰掛け足を組んでいる。

 その横では困った様子でユリアンが頬をかいている。


「どうして逃げなかった? 小童」

「援護が来るまでなら持ちこたえられるかと判断しました」

「来なかったらどうしておった?」

「それは……」


 確かに援護が来ない可能性もあったが、それでもなぜこんなにも怒られるのか理解に苦しむアマビスカ。

 ユリアンは申し訳なさそうな視線でアマビスカを見つめる。


「お主は事の重大さがわかっておらぬようじゃ。今後は己の力量を過信せぬことじゃな」

「はい。気をつけます」


 インゴはすれ違いざまにアマビスカの腕をこづき立ち去っていく。


「すみませんね。あの人なりに心配してたんですよ。悪気があってイラついてるわけじゃないです」

「なんとなく伝わりました。団長と一緒でやり場がないんでしょうね。気にしすぎなような気もしますけど」

「んーどうでしょうかね」


 ユリアンはわざとらしく返答する。アマビスカがはっとした顔を見せた。


「ごめんなさい。あなたの事、団長さんから伺いました」

「なるほど。あなた方も血筋(あれ)に拘るのですか」

「おやおや」


 気分を害した様子を隠すことなくアマビスカは語る。

 対してユリアンは苦笑まじりに返答する。


「結論から申しますと我ら鉱族は拘ります。王家の血というより五属性を発現できるあなたにですが」


 アマビスカの冷たい視線がユリアンを射抜く。

 ユリアンは臆せず話を続ける。


「我ら鉱族は偉大なる闇魔法士レイオンに忠義を捧げた一族。あなたを初代レイオン王と重ねる人は少なからず存在することでしょう。まぁそれも血に連なるものと考えると何とも言えないものがありますけどね」

「――王族の俺ではなく、魔術士の俺に価値があると?」


 虚を突かれたように眼を開くアマビスカに向けて、ユリアンは微笑みを返す。


「あなたに王族という面倒なものが付いていなければ、諸手を挙げて我らが里に連れてきましたよ。あなたの意思とは関係なくね。ほんと非常に残念です」


 物騒な発言を残し、ユリアンはミーチャとヴァーノンの言い合いに巻き込まれているマテオの援護へと向かう。


「血筋以外での価値か……クセニアもこんな気持ちだったのかな」


 アマビスカは勢いよく両手で頬を叩き、インゴの後を追いかけていった。

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