不思議な国と無気力アリス
フォルダを漁っていたら、ネタが出てきまして、書いてみました。
ある日アリスは、変な白ウサギと出会った。
話の展開を知っている主人公程厄介なものはない
晴れた日の午後、木の木陰で本を読んでいる女の子。彼女の名はアリス。伏し目がちの青い瞳に淡い金色の髪をなびかせ、水色のドレスにレースエプロン、ヘッドドレスをつけた美少女だ。
そよそよと心地よい風が吹く中、本をめくる。
パラ、パラと一定の間隔で紙をめくる音が、静かな森に響く。
そんな時タッタッタッと小走りで駆けてくる白い影が一つ。
「大変だ大変だ!」
白ウサギが、慌てた様子で駆けてくる。
「大変だ大変だ!」
白いYシャツに黒のベストとズボン、黒いシルクハットといった格好で、身の丈に合わない大きな金色の懐中時計を手にした白ウサギがアリスの前を駆けて行った。
「・・・・・」
チラとも視線を寄こさず、本を読み続けるアリス。パラとまた本をめくる。
「大変だ大変だ‼︎」
白ウサギが戻ってきて、またアリスの前を駆けて通る。
「・・・」
しかしアリスは気にした様子もなく、本を読み続ける。さらにページをめくろうとしたその時、
「大変だ!あぁ大変だなぁ‼︎急がないと遅れてしまうなぁ‼︎」
白ウサギが今度はアリスの目の前で止まり、懐中時計を片手に大袈裟に叫ぶ。
「・・ハァ」
パタンとため息とともに本を閉じ、膝の上に置くと、やっと白ウサギに視線を向ける。
「煩い。遅れそうなんでしょ?さっさと行けば」
「追いかけてこいよ‼︎」
「…ハァァ」
怒る白ウサギに心底面倒くさいといった様子で、先程より大きなため息をつくアリス。
「ため息ついてないで、追いかけてくれないと!」
「嫌」
「即答かよ‼︎」
また本を手に取ろうとするアリスの手を叩いて落とす。
「追いかけてくれないと困るんだよ‼︎女王様に怒られるだろ!」
「私は困らない。勝手に怒られてて」
叩かれた手をさすりながら、白ウサギを睨む。
「お前アリスであってるよな?アリスだよな?」
「…さぁ」
適当に返事をし、昼寝を始めようとするアリスに、白ウサギは詰め寄る。
「”アリスを国に連れて行く”のが俺の役目なんだよ‼︎頼むから来てくれ!」
木に寄りかかり、目を閉じたアリスを揺さぶり、半泣きで叫ぶ白ウサギ。
「ハァ…仕方ないなぁ」
やっと重い腰を上げ、緩慢な動きでノソノソと立ち上がる。やっと立ったアリスに、パァァと、分かりやすく目を輝かせ喜ぶ白ウサギ。
「茶番はこの位にして、さっさと木の根にある穴に案内して」
「偉そうだなぁオイ!」
腕を組み、自分より小さい白ウサギを見下ろすアリス。
「この後、穴に落ちて、不思議の国に行って、ウサギを追いかけて、なんやかんやで最終的に女王様のとこに行くんでしょ。仕方がないから行ってあげるよ。煩いし…」
「話の展開を先に言うなよ!」
「皆んな知ってるテンプレでしょ?」
「だからそういう事を言うな‼︎これからどうすればいいのか分からなくなるだろうが!」
わたわたと短い手足を振り回し、怒鳴り散らす白ウサギ。それを気にした様子もなく
「じゃあ、始めようか。えぇっと、大変だ大変だ、からだから……」
顎に手を当て呟くと、パッと顔を上げ、
「まぁ、どうしたのかしら?追いかけてみましょう」
完全なる棒読み&無表情で、胸の前で手を組み、白ウサギに顔を向ける。急なアリスの態度に白ウサギはポカンと口を開け停止する。
暫くその場に沈黙が落ちる。
アリスは動かない白ウサギを半目で見下ろす。
「…早く行ってよ。大変だ大変だ、でしょ」
「お前のせいだろ!僕が悪いみたいに言うなよ!」
「いいから、さっさと動けっ!」
涙目でギャンギャン抗議を始めた白ウサギに、アリスは痺れを切らし、白ウサギの背に回ると蹴りを入れた。
「ウニャッ!」
奇声と共に顔面から地面に突っ込んだ白ウサギ。手をつき顔だけあげると、目の前にアリスがいた。
「…もう一発、いっとく?」
片足を上げ、コテンと首を傾げるアリス。それに顔を青くし、慌てて立ち上がると、お決まりのセリフと共に、逃げるように駆け出した。
「たっ、大変だ大変だ!」
アリスはゆったりとした動きで、白ウサギを追いかけた。
思い浮かんだら、続編書きます。