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第6話

あれから父の仕事の合間に地下の工房で秘密の魔法訓練をするようになった。3歳になった俺は上級はもちろん中級も禁止されているけど初級魔法はマスターしたと言っても過言ではない。最近では初級魔法にアレンジを加えて変則的な扱いや魔法の組み合わせ二重詠唱『ダブルキャスト』など技術的な面を磨くようになった。魔法以外では魔法具『マジックアイテム』の種類や有効的な扱い方を学ぶようにもなった。そう、ひいお爺ちゃんは稀代の魔法具士でもあったようでたくさんの魔法具がこの工房にある。途方もない価値のあるものだったり試験的な失敗作みたいなものまでごっちゃごちゃに置いてあるのだが、父が言う失敗作達の中に俺は気になるモノがあった。


『真実を照らすカンテラ』こいつは外見は煤けたアンティーク調で中には蝋燭もなくまた開くことができないカンテラと呼んでいいのか分からないような代物で、父が言うには魔力を注いでも小さな灯がカンテラの中にちょこんと灯るだけで照明器具としては欠陥品だという。まぁ、確かに欠陥品ではあるのだろうこのカンテラの使い方はすごく特殊なのだから。このカンテラは使用者の魔力を長期的に蓄積できる素材で出来てるはずなのだがなぜかこのカンテラは中途半端に魔力を注いでもすぐに魔力が霧散してしまう。だが、『鑑定』でこれの使用方法を見る限り魔力を注げば使えるはずなのだ。そこで俺は訓練の始まる前や終わった後など空いた時間に根気よくこのカンテラに多量の魔力をじんわりと流し込んでいた。するとこのカンテラは時間を巻き戻すかのように段々と希少金属『オリハルコン』の黄金の輝きを取り戻していく。そうしてピカピカになったカンテラは俺が持つと自然に紫のキラキラとした灯が灯るようになり、手を放すとまたすぐにその輝きを失いまた煤けたカンテラに戻っていく。このカンテラはかなりの魔力を根気よく注ぎ続けて使用者の魔力に染め上げて自分のモノにしなければならない。また他の人が使おうとしたらそれなりの時間を掛けて魔力を注がなければならないだろう。なぜそんなめんどくさいカンテラになってしまったのかというと、これはカンテラでもあるがこの工房にある隠し部屋に至るための鍵でもある。このカンテラに照らされたらどんな偽装や隠蔽、結界の魔法はたちまち無効化されてしまう。つまり、この工房にある幾重にもかけられた偽装、隠蔽、結界の魔法を突破するのに必要なマジックアイテムなのだ。


(さーて、いよいよ探してみますかね)


最近は父が仕事で居ない日は工房の合鍵を貸してもらい危ないことをしない約束で自主訓練をしてもいい許可をもらっている。ということで早速カンテラを持って工房の中をうろうろしてみるとぶわっと靄のようなものが光に押されて消えていくどうやら工房の一番奥の作業台の下に隠し階段があったようだ、一応他にも隠し通路的なものがないか探してみるがどうやらそれ一つらしい。覚悟を決めて隠し階段を降りてみる。


(しっかし狭いなぁ・・・これ大人が通るにはギリギリだな)


階段を降りるとじめっとした石造りの通路に出た。息が詰まるような閉鎖的空間だ、恐らくカンテラなしでは何も見えまい。そんな道をしばらく歩くと上の工房より広めの小奇麗な空間に出た。


(おおっ、これは何というか凄いな!)


まず部屋の真ん中に祭壇のようなものがあり大きなくすんだ赤い色の水晶みたいなものが祭られている。そして、それを囲むように魔法陣が大きく展開していてそれ以外のスペースに本棚や机、作業台などおいてある。それとどうやらもう一部屋あるようで両開きの大き目な扉が目についた。この部屋は祭壇と魔法陣のためだけに作られているかのような印象を受ける。何らかの魔法を研究するための部屋なのだろうか、とりあえず魔法陣を避けてもう一つの部屋を開けてみる。


(こっちは倉庫か、上にあるモノより凄そうなもんばっかだな)


大本命ひい爺ちゃんの隠し財産だろうと思えるモノ達が置かれている。正直上の工房にあるマジックアイテムはお爺ちゃんが高く売れそうなものはうっぱらってしまているし、相当な価値があるものは気づかれていないものと父が相続したものの2パターンくらいしかないそれに工房にあるものは基本的に父のモノなので持ち出すことは禁止されている。それに比べたらどうだろうこの素晴らしい倉庫、恐らく家の誰も気づいてないのでここにあるものを俺は好きにできる。ルンルンの気分で倉庫を見ていると一番奥に場違いな宝箱が置いてある。これはどう考えても普通の宝箱だ。周りには一級品であろうモノが置いてあるのにこいつだけは普通の宝箱だ。明らかに周りから浮いている。


(実は中身が凄いとか?)


中身の予想が全くつかない普通の宝箱を開けようと手を伸ばすと俺が触れるよりも早くソイツは口を開いた。カパッと開いたそいつの中身は鋭利な歯に漆黒の闇から延びる薄紅色の舌だった。


「やばっ・・・」


コイツは、ミミックだ。


気づいた時にはもう遅い完全に油断していた、世界がスローになり眼前にミミックの大きく開かれた口が迫ってくる。



そうして俺はこの誰の助けも来ない隠し倉庫でミミックに押し倒されてしまったのだった。



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