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第5話

あれから母さんとの微妙な雰囲気や負い目がなくなり今では仲のいい親子だ。魔法のことは非常に残念だが医者に診てもらうまで使わないと母さんと約束した。もっともいつ気絶してしまうか分からないのだそう簡単に魔法に手を出す気持ちにはなれなかった。それとこのタイミングで母さんと仲良くなれたのは幸運だったと思う。なぜかというと風来坊の三男を除いた他の家族はみんな王都に出払ってしまっているので必然的に母さんとの時間が増えた。なので日中は本を読むか母さんと話すことくらいしかやることがなかったのだ。ここで俺はこのソロモン家、領地、国といった様々な詳しい情報を手に入れることができた。なんと母さんは行商の娘で若いころは各地を旅していたという、これを聞いて俺の中での母さんの尊敬度がぐんぐん上昇する。母さんにこの大陸の簡単な地図を手にどこそこの町の話を聞くのがここ最近の一番の楽しみになっている。おかげさまでこの辺の地理に関して大分知ることができた。


(いいなぁ、いつかは俺もこの異世界を旅してみたい。)


実は領内にも行ってみたいとこがある。新兵や駆け出し冒険者のための人工ダンジョンだ。敵はスライムしか出ないので装備を整えればどんなにどんくさいやつでもまず死ぬことはないだろうと言われるくらいぬるいダンジョンだ。だが10歳からという年齢制限がかかっているので俺がいけるとしたらまだまだ先の話だ。そんなこんなで一カ月が経ち父たちが王都から帰ってきた。帰ってきた翌日の夕方、早速父の執務室に呼ばれてしまった。呼ばれたというか抱っこされて連行された。やはり魔法を使って気絶したことを怒られるのだろうか。自分の中でもあの事件は記憶から消し去りたいくらいなのであまりいじって欲しくないものである。


(いや、まぁ俺が悪いんだけど気が重い。)


父の執務室には接客用のソファーがテーブルを挟んで対に置かれておりそこに二人で腰を掛けて話すことになった。殺風景できちんと整理された資料とそれでもまだ山のようにある資料、仕事以外のものを何も置いてないところを見ると努力家で質実剛健といった父の性格がよく表れているようだった。


「シロー、シエルから聞いたお前はもう魔法が使えるのか?」


「・・・・・・うん。」


ちなみにシエルとは母さんの名前である。ついでに父の名前を言っておくとアルギスというアルと呼ぶかギースと呼ぶか迷う名前だ。


「そうか、・・・それで上級魔法を使って気絶したというのは本当か?」


「・・・・・・はい、ごめんなさい。」


「・・・シローは、魔導書の内容を理解することができたのかい?」


その質問にどう答えようか迷ったがここで上手く嘘を吐ける自信はないのでこくりと頷いておいた。


「・・・・・・・そうか、実はシローと同じようなことが起きた人を知っているんだ。」


・・・なん・・・だと。父は驚くことに俺と同じような症状の人を知っているらしい。父が俺の話を聞いてあまり驚いてないことにビックリしたがそれ以上にビックリした。もしかしたらその人も転生者だったりするのだろうか。ごくりと息をのんで父の言葉を待つ。


「その人は初代ソロモン家当主、シローのひいお爺ちゃんだよ。ひいお爺ちゃんは僕が五歳の頃に遠いところに行ってしまったんだけどね、あまり記憶にないけど自分の自伝を読み聞かせるような面白いお爺ちゃんだったよ。本と魔法を愛し、何より知識の探求を尊ぶ人だった。そのお爺ちゃんの子供の頃に確かシローと同じ経験をしていたという記録があったはずなんだけど・・・」


父は席を立ち執務室の本棚にある装丁が豪華な一冊を手に取りパラパラとページを捲るととあるページで止めて指でなぞりながらその内容を確かめていた。


「やっぱり、シエルから聞いたときどこかで聞いたと思ったんだ。お爺ちゃんは歩くよりも早く言葉が話せるようになったらすぐに魔法が使えたという伝説があるんだけどね、お爺ちゃんは子供時代に何度も気絶して大変だったと僕によく言ってたんだ。それで今調べてみたらやっぱりその通りに書いていたよ。ちょっと読んでみるね。『これはおかしな病気ではなく魔力と魔術の理論に基づくれっきとした現象であった。今だ同じような事が起きた者を見たことがないので独自の理論になってしまうが恐らくこの現象が起きるものは幼少の時代から膨大な魔力を内包する者に限る。魔法を行使するにあたり魔力は足りていたが肉体がついてこれてないというのが私の見解だ。肉体や精神の器の成長により今はもう検証することが叶わないが、魔法というのは魔力とイメージだけではなくそれを行使する器も発動の要素に必要なのではないか。だがこれらはかなりイレギュラーな現象だ。普通魔力は肉体と共に成長するはずなのだ、だから上級や中級、初級の魔法を使う頃には肉体もそれなりに成長しているはずである。まずこのことを検証しなければならないのだが実験として・・・』シローに関係してるのは大体この辺までだね。でもよかったひいお爺ちゃんの研究の通りなら成長すれば気を失うことも無くなって行くそうだ。」


「ぼく、またまほーつかえるようになるの?」


「うん、まぁそーだね。今だって魔法は使えるんだけど・・・シローは魔法が好きなのかい?」


「まほーたのしい!まほーすき!」




「そうか!魔法は好きか!んー・・・じゃあシロー父さんと魔法の訓練をしてみないか?」



この日を境に父と地下の工房で秘密の特訓が始まることになる。父は魔法学院で教鞭をとった経験もあり、非常に教えるのがうまかった。それとこの工房にあったひいお爺ちゃんの本は魔法のかなり専門的な研究を幅広くしており普通ならかなり難しい内容で分からないはずなのだが『言語』持ちの俺に死角はなかった。


かくしてまさかの父の存在と地下の工房により俺の隠された第三のチート『魔法』が解き放たれることになった。



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