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愛像偏愛―bloody lovers―  作者: 赤井家鴨
第一幕 一週間
2/11

2nd day TUESDAY

挿絵(By みてみん)

イラスト元:オブリ―・ビアズリー「詩人の残骸」

 1947年。

世界規模でおこなわれた戦争が終結して早二年の月日が流れていた。

人々の生活はまだまだ苦しい事ばかり続いており、特にこの年の冬は寒波が酷く食料も資源も十分にない時代だった。当然と言うように辛い生活を強いられていた人々は常に娯楽を求めていた。

強盗、恐喝、窃盗、誘拐、人身売買に殺人事件。

貧しい時代だ。そんな話はいくらでも転がっていた。

明日は我が身だというのに、彼らはこうした世間話を好んで集め、大いに喜び(たしな)んだ。

 その日も私の住んでいる町で殺人事件が起きた。忘れもしないあの事件。

きっと愛おしい人を亡くした悲しみに囚われ、子供のように素直に純粋に、理不尽な(しがらみ)に抵抗したのだろう。

一方的な愛憎劇。しかしそれでも罪は罪。誰も、かの人を許してはいけない。

しかし人々はそんな事件の事などもう忘れてしまったのだろう。悲しいことに。

何せ彼らを楽しませる世間話など、いつでもどこでもそこら中に転がっているのだから。

毎日どこかしらで。それこそ明日は我が身に降りかかるものなのかもしれない。悲しいことに。




◇ ◇ ◇




 イギリスのとある田舎町。

古い家々が立ち並ぶこの町に、朝から(あわ)ただしく走り回る一人の男がいた。

丸く太ったずんぐり姿の五十代後半の男は、行きつけの店に着くと亭主に一枚の写真を見せる。

「おはよう。突然だけど私の娘を見なかったかね?それといつものフライを三つ頼むよ。テイクアウェイで」

「フィッシュフライだね、まいど。ベイリー旦那の娘さん? うーん、見てないねえ。花屋の婆さんなら知ってるかもよ」

「そうか、ありがとよ」

ベイリーというこの男は代金を支払うと、フィッシュフライの入った紙袋を荒々しく掴んだ。そして急いで花屋へと駆けていく。


 無事に花屋のある通りにたどり着いたベイリーは、店先を掃除するご婦人の姿を確認した。

ポケットからハンケチを取り出し、額に流れる汗を拭いながら爽やかに彼女に挨拶をする。

「おはようございます。今日はいい天気ですね」

「あらお巡りさん。おはようございます。昨夜の土砂降りが嘘のようね」

「あぁ、青空がとても気持ちいい。おっと、警察ならもう退職したよ。今日は娘を探す探偵さ。見ていないかね?」

そう言って先ほどの亭主に見せた写真をポケットから取り出し彼女に手渡す。

「見てないわねぇ……それにしても素晴らしい写真だわ」

写真には純白のウェディングドレスを身にまとうベイリーの娘と緊張で体を強張(こわば)らせる彼の姿が写っていた。

「十七年ぐらい前の写真だ。恥ずかしながら、この写真が一番新しい物なんだ」

ベイリーの瞳は寂しげな色に染まり、写真に写る娘を優しく見つめている。

「子供はいないが、夫婦仲良くやっているもんだと思っていた。しかし喧嘩をしたらしくてね、こうして家出娘を捜索中なのだ」

「あらまあご苦労様。でも、ずっと仲良しな夫婦なんてそうそういないわよ。貴方だってそうでしょ? 娘さんは今、一人の時間が欲しいだけなんじゃないかしら。そのうち帰ってくるわよ。子供じゃあるまいし」

「いや、でも。しかし……なぁ」

折角のアドバイスにベイリーは納得のいっていない様子。

花屋の奥さんは呆れたように笑うと、白い花が咲いた小さな植木鉢を両手で抱え、押し付けるように彼に渡した。

「困ったお父さんね。ほらこれ、サービス。娘さんにプレゼントしておやりよ」

それは立派な胡蝶蘭だった。頂けないと返そうとするも、その花を注文した金持ちが返品すると言ったので、このまま枯らせるのはもったいない。娘さんの笑顔のために使ってくれと勧められてしまった。

「そうこうしているうちに帰って来てるかもしれないわよ」

彼女が言うならそうかもしれない。妙な安心感と説得力のある奥さんの言葉を信じ、ベイリーは結局彼女の心遣いに甘えることにした。

またもう一度、花屋の奥さんに感謝すると胡蝶蘭の鉢を大きく揺らしながら街の中央部にある我が家へと急いで帰って行った。



= = =



 時同じくして、ベイリーが走る方角とは正反対の路地裏でも慌ただしい人々がいた。

しかしこちらはどんよりと暗く、湿った空気が流れている。

「オエーッ」と三十代の小洒落た男が吐き気をもよおしていた。

背の低いボーラーハットに本革の手袋、高級そうなコートを着ておりとても様になっている。しかし顔はその場にこもる悪い空気のせいでゲッソリとしていて青白い。なにせ彼の後ろには哀れ無残に殺された若い女性の死骸が横たわっているからだ。体中に無数の切り傷が刻まれており見るにいたたまれない。彼は小さく後ろを振り向き再度その死骸を確認する。だがまた「うっぷ!」と頼りない声を出してしまった。

「警部殿……いい加減、現場馴れをしなくては今後も辛いですよ?」

「こんな湿った汚らしい事件は下っ端の奴らにやらせとけばいいんだよ」

胸元のポケットからシルクのハンケチを取り出すと口元に当てて路地を出た。そして路地の出入り口を見張る警官に声をかける。彼がその下っ端なのだろう。

「おい、お前。聞き込みは済んでいるのか?報告しろ」

「はっ!被害者はこのあたりで営業している飲み屋の娘。事件が起きたのは深夜、月曜から火曜日の間であります。

仕事が長引き帰りが遅くなった彼女はついでにと、この通りの突き当たりにあるおもちゃ屋兼、工房の亭主にツケの催促(さいそく)をしようと家から遠回りの道を使ったと思われます。催促された家の亭主が一時頃に彼女が訪ねに来たと確認済みです」

「それだけか。事件当時の状況は聞いてないのか? 犯人は誰も見ていないのか?」

「犯人らしき人物を見たのは、彼女の死体を見つけた第一発見者と同じです」と言って通りの向こう側、路地の入口がよく見える位置にある家を指さした。

 「午前二時頃、第一発見者の男が就寝するので窓のカーテンを閉めようとしたところ、外でもめている二つの人影を確認したとのこと。

初めは喧嘩か何かだと思っていたそうですが片方が一方的に押さえつけられており、微かに女性らしき声も聞こえたと言います」

「夜は随分と土砂降りの雨だったじゃないか。街灯も点いてなかっただろうに、よく分かったな」

昨年から続く大寒波によりガスも電気も節約され、街灯は街灯の意味を成すこともせず道にたたずむ無意味なオブジェと化していた。

「それがたまたま近くに雷が落ちたらしく、この路地に逃げ込む二人の姿を確認したと言います。その一瞬、二人の着ていた服が確認できるくらいに辺りは明るく、まるで昼間のようだったと」

警部は目を丸くし、ほう。っと感心する。犯人の特徴を掴めているのであれば事件が解決するのは時間の問題だろう。腕を組み、部下の話を聞き続ける。

 「そして今朝、朝食を買いに出かけた亭主がこの路地を使い、近道しようとしたところ先に逃げ込んだ女性の死骸を発見した。という事です」

「なるほど、よく聞いてるじゃないか。素晴らしい。それで、犯人の特徴は」

「黒く長い服を着ていたと言います。背は被害者よりは少し大きいぐらいで……それと、黒の長髪。顔は後姿だったので見ていないとのこと」

「完璧じゃないか。それじゃあ、この事件は君に任せることにしよう」

先ほどからやけに褒めると思えばこの警部、事件にはからっきし興味が無いらしい。全てこの部下に丸投げにしようという魂胆だった。

もちろん部下の方は驚きのあまり目をギョッと見開いて私には到底無理です! と恐縮する。

「なに、お前ひとりにやらせるってわけじゃない。少し待っていてくれ。君に新しい上司を付けてやろう」

と言うと警部は軽やかにコートの(すそ)をひるがえして、町の中央部に続く通りを歩いて行った。



= = =



 町の中央にある小さな芝生の公園。

その公園に面した通りに建つ家々。その一番端っこ、角に建つ一軒の家にあの警部が足を運んで向かっていた。

普通の民家に見えるが家の前には


――<アトリエ・太陽(サン)>

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と可愛らしい看板がかかっている。トレードマークだろうか、一緒に描かれた太陽の絵が彼に向かって挑発的に笑っている。

しかし警部殿はそんな看板なんぞに目も向けず玄関扉を素早く三度ノックした。

すると一人の丸く太ったずんぐり姿の男が勢いよく飛び出してきた。先ほど町を走り回っていたベイリーだ。家に戻り娘の帰りを待っていたのだろう。

「失礼、ベイリーさん。お急ぎでしたか?」

「いいや。君は……?」

「ロビンです。ロビン・クレメント。只今ベイリーさんの後を継いでこの町の平和を守る警部になりました」

軽く会釈(えしゃく)するロビンの顔を見たベイリーは、どこかで見た顔だと疑問に思う。いつ、何処で会ったか。記憶のかなたに眠る思い出を一生懸命に呼び起こそうとした。

目の前の公園でよく本を読んでいたクレメントさん家のロビン坊や。子供のロビンと目の前にいるロビンの顔をダブらせる。

そうだ、あの子だ。ついに思い出したのか成長した彼を見てベイリーは急にはしゃぎだした。

「おぉ! あの綺麗好きなロビン坊やか!そうか警察に、警部になったのかぁ……さあ入ってくれ! こんな家でも警部殿をもてなす紅茶ぐらいはそろえてある」

ロビンは(うなが)されるままに彼の家の中に入った。

 「おいソル、客人だ! ロビン君だよ、お前の同級生の! お茶を淹れてくれ!」

廊下一杯に響く声を張り上げると、一番奥の部屋からヤカンか何か金属的なものが落ちる音が連続的に聞こえた。キッチンがあるのだろう。次に食器が擦れる音がカチャカチャと聞こえた。

 「さあこっちだ」とベイリーは気にすることなくロビンをリビングに通した。が、その部屋を見たロビンは目の下の筋肉を引きつらせてその場に踏みとどまってしまった。

なんと、その部屋はもう散らかりに散らかりきっていた。無造作に置かれた大量の古新聞。着さしのヨレタ服が何層も積み上がった座れぬソファー。

コート掛けにもうっすらと埃がかぶっていて、何度もハンケチでよく磨いてからコートと帽子を恐る恐る預けた。

それだけでも汚いのに座るよう言われた椅子の上には無数のパンくずが敷かれている。先にあるダイニングテーブルにもフライの(ころも)やらよく分からない食べ物の食べカスと食べかけの朝食とが一緒になって散らかっていた。嘘をついても綺麗だとは到底言えない。綺麗好きなロビン坊やの顔は明らかに不機嫌な顔になっていた。

 そんな彼をよそにベイリーは自分の席に座って、またしみじみとロビンの成長を嬉しそうに見つめている。

「いやぁはや、本当に久しぶりだな。まさか君がこの町に配属されて警部になるなんてねぇ。それで、どうした?」

悔しそうな顔をしながら椅子の上のパンくずをハンケチでヒラヒラ払い除ける。そして女の子のようにハンケチを敷くとその上に座った。

「実は昨夜、殺人事件が起きまして。大先輩であるベイリー前警視正のお力を借りたく思って参りました」

 ベイリーの顔が険しくなる。かつて警視正として町の平和を守っていた時の血が(たぎ)ったようだ。

「……と言っても、ただの強盗でしょう。襲われたのはツケの催促に来た居酒屋の娘。お金を得たところで腹は膨れんと言うのに、仕事ばかり増やしやがって」

そうしてしばらく二人で今回の事件についての情報を語り合い、ベイリーは現役を引退したにもかかわらず気持ちよく彼の頼みを引き受けた。


 「しっ……失礼します」

そこに三つのティーカップと熱々のお湯が入ったポットを運ぶ男、ソルがキッチンから現れた。

 暗い色した金髪に大きな鷲鼻(わしばな)。ロビンの同級生だと言うのに彼よりもいくらか若く見える。背丈は平均的なのに細くて弱々しい印象を受ける男だ。手に持ったお盆の上で空のティーカップが掠れ合い、小さくカチカチと音を立てている。きっと、紅茶を注いでから持ってきていたらお盆の上はお茶でびしょ濡れだっただろう。

「お、お待たせしました。カップが熱いので気を付けて……」「折角だが、」

ロビンがソルの言葉を(さえぎ)った。

「この後も急ぎの用がありまして、紅茶を悠長(ゆうちょう)に飲んでいる暇もないのです。すまんな、ソル」

ワザとらしく、演技臭い言い回しが妙に鼻につく。しかしソルは「いいえ……」と言って黙り込んでしまった。

「それではベイリー警部、この事件の指揮を頼みましたよ。あぁ、忙しい忙しい」

しかしその声からは焦りを感じることはできなかった。軽い口調をたたきながら急いでコートを掴む。だがその暖かそうなコートを彼は着る事もなく、いそいそと外に出て行ってしまった。


 「いやはや。子供の成長は嬉しい事だが、知らない一面を知ると悲しいもんだね」

ベイリーはソルが持ってきた紅茶を二つのカップに注ぐと朝食の続きを始めた。

「なんのお話だったんですか?」

ソルもまたロビンが座っていた席、元から彼の席ではあるがそこに座ると紅茶が入ったカップを熱そうに持ち上げて紅茶を一口飲んだ。

「いや……深夜に殺人事件が起きたので調査を手伝って欲しいと頼まれたんだ」

「深夜に……殺人事件?」

どうやらこのベイリーは口が軽いらしい。

「もう退職したと言うのにな。お前の友達の頼みだ。今でも頼られていると思うと断れなかったよ」

はははっと笑ってみせるベイリーだがこれから取り掛かる物騒な事件に対し、彼の瞳にはもうすでに正義の炎が点っていた。

今は丸々と太ってはいるが、かつては町の皆に頼られる正義のスーパーヒーローであった。その時の思い出が彼の心を躍らせ、全盛期の感覚が徐々によみがえっているのだろう。

「犯人はどんな人ですかね」

「あぁ、目撃者は居たそうだ。黒くて長い服を着ていて、黒髪を長く伸ばしているんだと。長さは聞いていなかったなぁ。後で聞いておこう。背丈は被害者の女性よりも少し高いぐらい。私もこれから現場に向かうよ」

 ぺろりと朝食を平らげたベイリーは食器をそのままに、現役時代に着ていたお気に入りの茶色いコートを着ていこうと探し始めた。

「黒い服……黒髪……」

ソルは手を口に当てて何やら呟いている。

「ベイリーさん、事件の発生時刻とか分かりますか?」

ベイリーは積まれた服の下敷きになっているコートを見つけて引っ張り出そうと苦戦している。しかしちゃんと二時頃だったとソルの質問に答えた。

無事仕度を終えたベイリーは床に散らかる新聞紙を蹴散らして「それじゃあ、行ってくるよ。留守番を頼む」と部屋の扉に手をかけた。

しかし彼の体が全て部屋の外に出る前に、ソルがもしかして……と口を開いた。

「あの……勝手な推測で、何の根拠もないのですが少しいいですか?」

「ああ。なんだね?」

「その、夜中の三時頃、肖像画を描いて欲しいと依頼が来たんです」

思いもよらぬソルの言葉にベイリーは驚いた。そしてその次の彼の言葉にまた大きく驚く。

「その人は、黒い服を着た黒髪の女性でした」


 二人は二階にあるソルの部屋に向かう。

先ほどの部屋とは違い、必要最低限の物しかない寂しい部屋。と思いきや、部屋の隅には大量のカンバスが埃をかぶって立てかけられている。

部屋の中は油絵具とシンナーの独特なにおいが立ち込めている。しかし二人は匂いに慣れてしまっているのか気にすることなくイーゼルに立てかけられた一枚の絵を見つめていた。

「これは……」

思わず声が漏れたベイリー。

そこには紛れもなく、黒い服を着た黒髪の女性が描かれていた。絵自体は胸元までしか描かれていなかったが「黒くて長いドレスを着ていました」とソルが証言する。

 黒く艶やかな髪は緩く波打っており、肌は氷のように白く透き通っている。だが頬は可愛らしく紅く染まっていた。

そんな透き通る印象の中、ただ唇だけは不釣り合いなほどに真っ赤に塗られて不気味な笑みを浮かべている。

「こんな綺麗な女性が夜中の三時に尋ねに来ていたのか。気が付かなかったよ」

「雨も雷も一番酷い時間でしたから。私も部屋の扉が開かれるまで気づきませんでした。

急に現れて驚きましたが、今日は特別な日だから今描いてほしいと言われたので筆を取ったんです。私もその夜はいつも以上に筆がのって……」

 ソルも自分が描いた彼女の自画像を見つめている。が、それは見つめているというよりも見惚(みと)れていた。

「ですが気づくと眠ってしまって、朝になっていました。彼女も居なくなってしまい、その絵もまだ描きかけです」

「そうか……」

ソルはまだ描きかけだと言うが、ベイリーには十分完成している絵だと思わせた。しかしまだなのかと彼はまた、まじまじと彼女の絵を見る。

「どうして彼女だと思った?」

「いや、ただ別に。犯人の特徴に似ているというのと、見知らぬ女性が来たという事を知らせておかなくてはと思い……」

ソルの頬がうっすらと赤く染まっている。伏し目がちだが何度か視線がベイリーの持つ肖像画に注がれる。

「ただの探偵ごっこです。呼び止めてしまいすみませんでした」

肖像画をベイリーの手から受け取り、またイーゼルに戻すと二人はゆっくりと階段を下りていく。

「……彼女は……違うかもしれないな。うん」

見知らぬ女性を招き入れたことを怒られるのかと思ったソルは、思いもよらぬベイリーの言葉に聞き間違えたのかと我が耳を疑った。しかし聞き間違いではなかったようだ。

「とても良く描けている。それなのにまだ未完成なのか。もうあれで完成してるのだと思ってしまったよ。すごいな。

しかし、今度また夜中に来客が来てもあげるなよ。強盗かもしれないからな」

優しく注意し、笑う彼の顔にソルは心の底から安堵したのか自然な微笑みを浮かべた。

「また……また、彼女が来たらベイリーさんにも知らせた方がいいでしょうか?」

「そうだな。念のために頼む」


 玄関の扉が開かれ、冷たい風が二人の立つ廊下に吹き抜ける。

積もりに積もった雪は融けて無くなり、季節はもう春を迎えるというのにまだまだ冬は続くようだ。


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