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そのいち

「あーっと……要はこのヘッドギアみたいなのをかぶって、そっから俺の脳内神経回路に電気信号による情報を伝達して……そんでその電気信号はこのヘッドギアみたいなので全プレイヤーと交信がなされてるわけなので……要約するに、俺はこれをかぶると一体どうなるんだ?」


 俺と我が妹みちるが覚悟を決めたとき。すなわち夕凪(ゆうなぎ)兄妹がいざ戦わんと覚悟を決めた後のことだ。

 みちるは電脳世界にログインするための具体的な説明をしてくれたわけなのだが、いかんせんそれが近未来というか、もはや超未来的なものだったので、俺の脳内はてんやわんやのお祭り騒ぎになってしまっていた。まったくもって現代っ子にはついていけない。置いてけぼりである。


 俺がそんな脳みそショート状態になりつつ、頭上に疑問符を浮かべていると、みちるは(あき)れたようにため息をひとつついてから、さもあっさりとこう言った。


「とりあえず……かぶってみたら?」


「お、おう」


 そう言われてしまったのなら仕方ない。無理矢理かぶってしまうほかない。

 正直こんなわけの分からない近未来ヘッドギアなんて、そのわけが分かるまではかぶりたくなかったのだが、仕方ない。俺はこれをかぶったらどうなっちゃうんだろう……?なんて不安が頭の中をグルグルと(うず)()いたりもするが、仕方ない。

よく分かんないけどかぶろう。


 俺は日本の技術力の高さと安全性を信頼して、そのヘッドギアをすっぽりとかぶる。

 かぶってみたら当然のごとく視界は暗くなるけども、きっと大丈夫。だって日本のゲーム会社が作った最新鋭のゲーム機なんだぜ?

 石橋を叩きすぎて破壊してしまうくらいに慎重な日本人のことだ。あらゆる場合に対する安全性を確保し、誰もが安心して遊べるゲームを作ってくれているはずだ。俺はそんな日本のエンジニアを信じている。

 彼らを信じて、そしてこれを一緒にやろうと勧めてきた妹信じて、俺はこのわけの分からないメタリックブラックに包まれたヘッドギアをかぶるのだ。


「後ろにスイッチがあるから、それを押してみて」


 みちるはそう言って、彼女のかぶるヘッドギアの背部に位置するスイッチらしきものを押した。かちりと音がなり、彼女の眼前のモニターに「HELLO」の青文字が浮かび上がる。

 先ほどとまるで同じ光景だ。

 俺は彼女に(なら)うようにして、ヘッドギアに包まれている後頭部へと手を伸ばす。そこには確かに若干の突起のようなものがあって、それをかちりと倒す。

 すると突如、俺の目の前が明るく照らされる。モニターが白い光りを放ち、明々と輝いた。その中心にはエルフゲームズ社の企業マークのようなものが映し出されていて、どうやらこれはゲームのオープニングのようだった。

 そして、俺は思わずそのオープニング映像に見惚(みと)れてしまうのだった。


「……すげえ」


「やばいっしょ!?」


 みちるはしししっと笑いながら、なんとも得意げな調子で言った。

 実際めちゃくちゃヤバかった。「ヤバい」という単語は、若者の間において良い意味でも悪い意味でも使われる、たいへん便利な言葉であるわけなのだが、今回の「ヤバい」はもちろん良い意味でのヤバいだった。


「なにこの3D感……。もはや立体的すぎて現実に感じてしまうレベルだ……」


 思わずそんな言葉が漏れ出てしまう。そんなほどに、今俺の目の前に映し出されている映像はとんでもないものだった。

 恐らく今流れている映像は、クレイジーキラーズデスマッチの概要をなんとなく視覚的に説明する、プロモーションビデオのようなものなのだろうが、いかんせん迫力がすごい。目の前に映像があるということももちろんなのだが、ヘッドギアと俺の神経が接続されているおかげで、映像が実際にリアルに起こっているまでに感じられてしまうのだ。俺はそんな感動に思わず嘆息(たんそく)を漏らした。


「みちる……最近のゲームってのは、みんなこんな感じなのか?」


「うーん、3Dなゲームは大分増えてきたけども、CKDは特にスゴイよ。やっぱりゲームの世界と神経を結んでるっていうのがね……まるで本当に異世界を再現しちゃったみたいなもんだからね」


「確かに……異世界だな」


 俺は未だにオープニング映像に引き込まれてしまっていて、(つむ)ぐようにしどろもどろな会話しかできなかったのだが、彼女の言った異世界という言葉は、まさに言い得て妙だと思った。本当に異世界に来てしまった気分である。

 俺の目の前には、イメージキャラクターなのかはたまたこのゲームのヒロインなのか何なのか、黒髪ツインテールをした女剣士が、まるでハイエナのように素早い足取りで荒野を駆け巡っているのだった。そうしてすれ違った敵を、身の丈に余る大太刀を軽々と振り回し、ばったばったと切り裂いていくのだ。

そんな光景は、まさに爽快というにふさわしいものであった。

 ただでさえ格好良く編集されたオープニング映像だ。それがこうもリアルに目の前に再現されていると、俺の久々のゲームに高揚(こうよう)するテンションは、まるで抑えきれなくなってしまう。なので少しだけ叫ばせて欲しい。


「CKDすげええええええええええっ!!!」




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