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~第2話~叫んだ彼は○校生にも気付かない

『俺は……彼女のことが好きだーー!!』

『……!?』

肌寒い季節の中。

彼はとても重大なことを公園のはしっこにあるブランコ付きのアスレチックで叫んでいた。

・・・・・・

夜の町をはしる一台のリムジン。

そのリムジンに乗っている一人の少女。

髪は黒髪、清楚で整った顔立ち。そして、気品漂う容姿を持った少女。

それが私…藤倉花怜(ふじくらかれん)

そんな私はリムジンの中で疲れたため息を吐いていた。

『ふぅぅぅ…今日も疲れましたわ…』

『…お嬢様でも今日はお疲れになりましたか』

リムジンを運転している執事がバックミラーでこちらを見ながら微笑を浮かべる。

『…上部(うわべ)、それはどういうことかしら…』

私は疲れた顔をそのままに眉を少しつり上げた。

『…これはこれは、失礼いたしました…ですが、いつものお嬢様ならこの程度の習い事など余裕のはずでは?』

上部は、運転しながらも、バックミラー越しに軽く一礼し、聞いてくる。

『…今日は朝から大変な事が色々起き過ぎてて、疲れたのよ…』

そう…私は朝から大変な事が起きすぎた。朝だけだけど。

『…お嬢様…失礼ですが、“色々”とは、なんの事でしょうか?』

『それは…その……馬場くんが私に――――』

今日、朝にあったことを上部に相談しようと持ちかけたその時だった。

いつも遠くからしか見ていない彼の姿ともう一人の男の子―あれは三条くんかな?―を目にした。

『上部、車をとめて!!』

『はい、かしこまりましたお嬢様…』

上部は私の言う通りにリムジンを他の車の邪魔にならないようにすみに停めた。

『上部!窓も開けてくれるかしら』

かしこまりました、と上部が言うのと同時にリムジンの窓が開いた。

確かに二人の姿がそこにはあった。

『やっぱり、馬場くんと三条くんだわ……何してるのかしら?』

二人とも何故か真剣な眼差しで話し合っているようだ。

『――……バカか!!そんなことあるはずねえだろーが!!』

よくわからないけど、馬場くんがなんだか焦っているように見える。

それを見た三条くんがなんだか落ち着いた様子で馬場くんに聞いていた。

『ふん、ならいいじゃねーか…ならもう一度聞くぞ…恋士…お前はまだその子のこと…今でも好きか?』

『……!?』

私は今、聞き捨てならないことを耳にしてしまった。

『“その子のこと…今でも好きか?”……どうして三条くんが馬場くんにそんなこと聞くの?…え、え…どういう状況なのこれは!?』

私は少し戸惑った。

それもそのはず私こと藤倉花怜(ふじくらかれん)はその…言うのは恥ずかしいけれど…馬場くんの事が好き…なのだ。

その理由はもう何年も前の話。

彼はもう覚えていないだろうが、私は今でも覚えている…いや、違うかな。覚えているじゃなくて、あの日からずっと彼の事が頭の中から離れなかった(・・・・・・)、かな……。

毎日毎日、あの時の事を思い出すと涙が出そうになるくらい嬉しくて、胸がいっぱいになる。

そして、もうひとつ…毎日毎日彼との思い出のことを思い出すたびに胸の高鳴りが激しくなるのを感じた。

その時に私は理解したんだと思う。。

これが恋なんだと……。

そんなことを心の中で語っていた私にも気付かない二人は話を続ける。

『俺は……俺は……』

馬場くんは次に言う言葉に力を込めて…口を開いた。

『俺は……彼女のことが好きだーー!!』

『…………』

馬場くんは恥ずかしがらずに高々と叫んだ。

その隣で、三条くんは馬場くんの肩に手をのせ、馬場くんに向かってニッ、と笑顔で親指をたてている。

『……上部…車を出して……』

私は上部に窓を閉めさせ、車を出すように言う。

『…はい、お嬢様…でも、よろしいのですか?』

上部は、私に再度確認をとる。

『…上部…出してお願い……』

『……かしこまりました、お嬢様…』

上部が車のアクセルを踏み、車を走らせる。

『……馬場くんって好きな子いたんだ……』

さっき、馬場くんが叫んでいたことを思い出す。

馬場くんも私と同じで好きな人がいる……その事が頭から離れない。

『ねえ、上部』

『何でしょうか?お嬢様』

上部は車を運転しながら、バックミラー越しに答える。

『もし…もしもよ…その…自分の好きな人に好きな子がいたら、上部だったら、どうする?』

私はもしもを付けて上部に心配ながらも聞いてみる。

『そうですね…』

車を運転しながら、う~ん、と少し考えたあと、微笑しながら、上部は答えた。

『…多分ですが、何も考えないと思います』

え、と私は少し目を丸くしながら、上部の答えを聞く。

『ねえ、上部…それはどうしてなの…その人には好きな子がいるのよ…』

私は少し迷ったように聞く。

『…どうして、と申しましても…考えるよりまずは行動に移す…それが私の考え方ですので…』

コホンッ、と少し咳払いをして上部は続ける。

『お嬢様、私は思うのですが…今申しました通り何も考えないのです…何も考えずに、ただその人が結婚するまでその人のことを思い続ける…現に私はその考えを貫いた結果、今の女房と巡り会えたのですから…』

上部は照れながらも、語ってくれた。

『そうだったの?』

上部が結婚しているのは知っている。

上部の奥さんは(うち)の屋敷のメイドとして働いてる留吉(とめ)さんと言う人だ。

それは知っていたのだが、二人の結婚までの経緯は知らなかった。

『はい、お恥ずかしながら…』

上部は照れを隠すために口を開いた。

『ですから、お嬢様も諦めずに頑張って見ては?』

『!?……わ、私は別に…コホンッ…な、何を言っているのかわからないわね!?』

私はちょっと戸惑いながらも答える。

『ホ、ホ、ホ、…ではそういう事にしておきます』

『も、もうだから違うってば!!…もう……』

やはり上部は、私の二枚も三枚も上手だった。

そして、車は夜の道を走っていくのだった……。

・・・・・・

公園でおもいっきり叫んだ後、安彦と別れた俺は家に向かって歩いて帰っていた。

『ふぅー……ちょっとスッキリしたかな…』

俺は少しスッキリしたのを自覚した。

『スッキリしたのはいいけど、彼女と顔合わせた時、どうやって話せばいいんだろう?』

そうだ、俺は一様彼女に振られているんだよな。そしたら、彼女だって話しにくくないか?

俺は少し重要なことを思い出して、う~ん、と悩んでいた。

悩み続けること数分後、俺は家に着いた。

俺はドアノブに手をかけ、誰もいない家に向かって、少し叫ぶ。

『ただいま~……ふう…』

靴を脱ぎ、二階にある自室に向かうため、階段を上っていき部屋に着く。

俺は自室の扉を開け、上着を脱ぐと、ベッドに向かってダイブした。

『疲れた~……』

う~ん、とベッドの上で背伸びをする。

『…と、いけね!明日の準備忘れてた!!』

ベッドの上にさっき、投げ捨てていた学校鞄を手に取り、机の上に置いてある教科書を鞄にしまった。

『よし!これで明日の時間割はオッケー、と…』

鞄の中を確認する。

『うん、忘れ物はないみたいだな…と、なんだこれ…』

鞄の中にいつ入れられたのかわからない一枚の手紙が入っていた。

『手紙?誰からだろ?』

多分、商店街で人とぶつかった時かな?

俺はそう思い、恐れることなく手紙の中身を確認する。

“ずっと待ってたんだから”

手紙には、差出人の名前が無く、そんな一言だけ書いてあった。

『これ差出人の名前がないじゃん…あ、でも裏に俺の名前が書いてある…』

手紙の裏には、ちゃんとひらがなで“レイジへ”と、書いてある。

俺の名前を知っている?

ますます、わからなくなってきた。いったい差出人は誰なのか、俺には予想がつかなかった。いや、この時の俺はあの時ぶつかった人が誰だったのか…気付かなかったのだった。

・・・・・・

『おはよ~~』

『あ、馬場くんおはよう♪』

俺は教室の入口にたまたまいたクラスメイトに挨拶をかわし、自分の席に着く。

『ふぁ~~…結局手紙の差出人、わかんなかったな』

昨日は、手紙のせいであまり寝れなかったから、少し寝不足だ。

なので、今日の授業は前半寝て、後半からエンジンをかけることにしよう。うん、それがいい……。

そう決めたら、即行動に移すのが俺─告白は、さすがに無理だが─だ。

鞄を机の横にかけ、前屈みになり、腕で顔を覆いながら、机に突っ伏す。

スゥー、スゥー、と小さな声で寝息をたてて数分。教室の入口から、こっちに近づいてくる足音が聞こえた。

うん…、と少し眠りが浅かったので目が半開きのまま、顔を上げる。

『よう!恋士…て、なんだお前朝っぱらから寝てたのか?』

俺の前に現れたのは安彦だった。せっかく、睡眠をとろうとしたのに…つくづくこいつは空気が読めないやつだ全く。

『…………おやすみなさい…』

『なに、いきなり俺朝っぱらから無視!』

安彦が朝っぱらからショックを受けた。

だが、今日はホントに眠いのだ。こいつの相手をする時間を一秒でもいいから、睡眠時間のあてたい。だが、安彦の次の一言に俺の眠気が少しふっ飛んだ。

安彦が残念そうに口を開く。

『あ~あ、せっかく親友のために良いネタ仕入れて来たのにな~……』

『…良いネタ?』

『お、やっば恋士も気になるのか?気になるよな!!』

俺が聞いてきたのがそんなに嬉しいのか、安彦がもったいつける。

『う~ん、気になるんだ~どーしよっかな~…』

『…いいからさっさと勿体振らないで教えろ』

安彦の言い方はウザかったが、良いネタ(・・・・)は結構気になったので仕方なく命令口調で言った。

『…命令口調で言われてもね──……って、わかった、わかったからその握った拳を下ろして…ください』

安彦にくらわせようとした拳を下ろす。

『…ふう…死ぬかと思った』

『じゃあ、死にたくなかったら教えろよ』

わかった、といって安彦が口を開く。

『実は、このクラスに転校生(・・・)が来るんだよ』

『は?』

こんな時期に転校生?もうそろそろ秋も終わるってのに。

『まだ“転校生が来る”しか分かってないけど、俺の予想は…いや、本能は女の子だと言っている!!』

何故、言い直した、っとツッコミをいれたくなったが、こいつにツッコミを入れるといろいろ面倒なのでやめ、無視してこちらが口を開く。

『で、その転校生とやらはいつ来るんだ?』

『……あの…無視は良くないと思うんだよね?』

安彦が少し落ち込み気味で聞いてくる。

だが、安彦はその“良いネタ”の詳細を喋りたいらしく、直ぐにテンションをアップに戻し、話をもとに戻す。

『……で、話を戻すけど、転校生は、今日来るらしいぜ』

『今日?ホントに急だなそりゃ…』

『…フムフム…なるほど……恋士、今最新情報が入った。それが、本人が“黙っててほしい”って言ってたみたいだぞ』

ちょうど少し離れた席で同じ話題を喋っているクラスメイトの会話を聴いた安彦が俺に教えてくれた。

『何でそんなことを…』

『俺にはわからん、わからん♪』

安彦が調子にのって某明太子のCMのセリフをしゃべる。

なので一様、安彦の頭にチョップをくらわしたのだった。

・・・・・・

『起立!きをつけ…礼!!』

日直が朝のホームルームを始める号令をする。

『『おはようございます』』

クラスメイト全員でホームルームを始める挨拶をする。

『……着席!』

挨拶を終えた皆は、日直が言うと同時に席に着いた。

そして、俺の担任の男鹿(おが)先生が面倒くさそうに口を開く。

『えー、知ってる奴もいると思うが今から転校生を紹介する。おい、入ってきて良いぞ』

『はい』

ガララッと教室の扉が開き、金髪ロングの女の子が現れた。

その子は教卓の前まで歩くと、桃色のきれいな唇が優しく開かれた。

(さかい)アリシアって言います。母が日本人で父がフランス人のハーフです。昔日本にいたんですけど父の仕事の都合でフランスに戻ったんですけど、また、父の仕事の都合でフランスから日本に帰って来ました。なので、これからよろしくお願いします』

少しの沈黙が過ぎた後、一斉にクラスメイト達が大きな拍手をする。

おお~っと教室中のクラスメイト─主に男子─が一斉に声をあげた。

『カワイイ♪』

『女神が舞い降りた!!』

『生きててよかったー!!』

『金髪ロング…ハァハァ…』

うん、最初の女子の発言は、分かるがその後の男子の発言がおかしかった気がする。特に最後の…。

『…えー、堺が言ったので分かると思うが、今の日本のことはわからない。だから、お前ら今の日本を教えてやれよ。それと、皆仲良くするように』

ハーイ、とクラスメイト─特に男子─達が大きな声で言う。

『…それじゃ、堺の席は───』

先生がどこにしようか探している時、ふと、境さんと目が合った。

境さんは、ニコッ、とこちらに笑顔を向けてくると、先生、と言って手を挙げた。

『…なんだ境?』

『ハイ、先生。私の席は…』

ここが良いです、と言ってビシッ、と自分が座りたい席を指を指す。

『馬場の隣か…堺はそこが良いのか?』

先生が境さんに聞く。

『ハイ、私はレイジの隣が良いです♪』

『ええ!?』

俺は驚いた、ってか先生もクラスメイト─主に男子─達も皆驚いていた。

『…なんだお前達、知り合いだったのか?』

先生が俺に聞いてくる。

『いや、俺は初めて会ったと思うんですけど…』

俺は顔を掻きながら言う。

『……馬場はああ言ってるが、堺…お前は何で馬場のこと知ってんだ?』

次は境さんに話を振る。

『それは……』

境さんは、一度俺を見て先生に…いや、クラスメイト全員に胸を張って言ってのけた。

『それは……レイジと私は将来を誓い合った(・・・・・・・・)なんですもの♪』

『『……!?』』

堺さんの一言が俺、先生、クラスメイト全員の時が数分間止まったのだった。

・・・・・・

学校帰りの帰り道。

俺と安彦はなんとなく商店街を散策していた。

『なあ、親友』

『なんだ、安彦』

安彦は、俺の肩をポンッ、と叩いて真剣に聞いているのか、それとも呆れているのかわからない顔で俺に聞いてくる。

『さっきのは…どう言うことなんだ?』

『どうって言われても…俺にも何がなんだか…』

俺にも堺さんの考えがわからない。

なぜ、あんなことを言ったのか…。

『それは……レイジと私は将来を誓い合った仲なんですもの♪』

境さんは、ああ言ってたけど…俺は覚えていない。

彼女は昔、俺と会っているらしい。しかも彼女は、俺と将来を誓い合った仲でもあると、胸を張って言っていた。

でも、ホントに覚えていない。

なので、彼女に“そんな約束した覚えがないよ”っと、言ったら…。

『レイジ…あの時のこと……ホントに覚えてないの?』

『えー…と……』

うん、とぎこちなく頷く。

『……!?』

彼女は、驚きを隠せない顔をした。

『あ、あの昔俺ってキミと会っていたんだよね……ちょっと待ってね今思い出すから──』

バシンッと、俺の頬に向かってビンタを決める境さん。

俺は倒れ、教室の床に思いっきり頭をぶつける。

『イッテェー……』

彼女は頭を床にぶつけた俺にこう言った。

“サイテー…でも、こうなったらどうにかして昔のこと思い出してもらうんだから”

…あんなことを言ってたけどいったい何をするきなんだろう?

そんなことを考えていると隣で多分同じことを考えていた安彦が俺の肩をポンッ、と軽く叩く。

『…ま、あんなカワイイ子に何かされるならお前も本望だろ』

『…まあ、カワイイのは否定しないけど…でもなー……』

『なんだ、もしかして藤倉(・・)のこと気にしてるのか?』

『……ば、そ、そんなわけないだろ!?』

何でこいつは、いつもいつも俺の考えていることが分かるのだろう。

俺がいつも動揺する事を言う安彦が言葉を続ける。

『藤倉なら、大丈夫……じゃないな』

『は?』

声が小さかったため、大丈夫の後が聞こえなかった。

『いや、何でもない忘れてくれ』

それよりも……、と安彦が誤魔化すように話をそらす。

『俺は思うんだ…いっつも親友ばっかりなんでモテモテなんだってな』

安彦はいきなり真剣に聞いてくる。

『は?何処がモテモテなんだよ』

『お前の全てだよ!!』

安彦が涙ぐみながら、叫ぶ。

『安彦…言っておくが俺、全然モテてないぞ。逆にお前の方がモテるだろ普通、顔は良いんだし…』

『…う、嬉しい事言うじゃねえか親友…でもな、俺にも譲れない物ってのがあるんだなこれが…』

『譲れない物?』

『ああ、そうだ。俺にとっての花園…唯一のハーレムワールド!!』

あー…そういやそうだった。こいつには絶対死んでも譲れない物。

ハーレムワールド…もとい、簡単に言うなら、マンガやアニメといったオタク系な物が好きなのだ。

『あの子達は裏切らない、俺のために尽くしてくれる…だから俺は彼女達を裏切れない…いや、裏切るはずがない!!』

『まあ…裏切らないだろうな…』

納得したくはなかったが、こいつが言っていることは、しゃくだが筋は通っていたいたので言い返すことができなかった。

『でもな…二次元美少女にはモテる…ならなんでリアル美少女にはモテない!!』

『そんなの俺が知るかよ』

『…親友あれか、自分はリアル美少女にモテるからって、余裕かましてんな…』

『だから、さっきも言ったけど、俺は────』

モテないって、と安彦に説明しようとした時だった。

『おーい♪恋士さーん♪』

後ろの方から、俺を呼ぶ声が聞こえた。

『あ、三咲ちゃん今帰り?』

『は、はい♪その…恋士さんも今帰りですか?』

三咲ちゃんは指をおへその辺りでクルクル回しながら聞いてくる。

『うん、そうだけど』

『じゃ、じゃあ!今から家に来ませんか!!』

ガシッと、俺の手を握り締めながら聞いてくる。

『いいよ、どうせ今日の晩の買い物してないし…それはそうと…その、三咲ちゃん…』

『はい、なんでしょうか?』

三咲ちゃんは首を傾げる。

『……その…手…なんだけど……』

手?っと、三咲ちゃんは言いながら自分の手と俺の手を交互に見る。

『……!?』

カァァッと、三咲ちゃんはやっと気づいたらしく、いきなり手を話す。

『ス、スススススミマセン!!いきなり手なんか握っちゃって…』

『い、いいよ。気にしてないから…』

顔が真っ赤になっている三咲ちゃんに俺はとりあえず三咲ちゃん家の八百屋に向かおうと思った。

『……親友よー、なーにがモテないだってー……』

安彦がガシッと、俺の肩に手を乗せ…いや違うな、この力の入りようはどう考えても握りつぶしている。

『イテッ…すっかり忘れてた!悪い悪い安彦』

俺は安彦に向かって謝る。

『…たく…イチャイチャしやがってこの…と、そうだ親友この子は?』

安彦がさっきまで、俺が話してた三咲ちゃんを見る。

『ああ、お前は知らなかったな。すぐそこにある八百屋の子で三咲ちゃんって言うんだ』

『どうも、こんにちは♪織原三咲(おりはらみさき)って言います』

『よろしく。俺は三条安彦(さんじょうやすひこ)、このろくでもない鈍感男の親友だ』

『誰が鈍感だ誰が…』

俺が、安彦の自己紹介にツッコミを入れていると、三咲ちゃんが安彦を感心した様子で口を開く。

『三条先輩…その、やっぱりそう思いますよね?』

三咲ちゃんは俺を見る。

『ああ、こいつだろ?鈍感すぎて、学校でもこんなんだからさ、女の子がアピールして来ても全然気付かないんだわ』

安彦は呆れたように言う。

すると、三咲ちゃんは困ったように口を開く。

『そうなんですよねー……私も頑張ってるんですけどなかなか…』

『さっきから、二人ともなんの話をしてんだ?』

今度は、俺が仲間外れにされてたので、話に割り込んでみたが、どうやら俺についての話をしてるらしい。でもなんでおれなんだ?。

『なんだ知りたいのか親友?……これはな、世の女の子の悩ましい問題だ』

『そんなに問題なのか?』

『ああ、問題だね大問題だ!!言いか、よく聞けよここにいる三咲ちゃんも学校のクラスメイト達もほとんどがお前のこと好────』

安彦が言いかけたその時だった。

『三条先輩!!』

三咲ちゃんが安彦を睨み付ける。

『す、すき焼きって美味しいよなー……ハ、ハ、ハ、……』

安彦は三咲ちゃんに圧倒されて、苦笑いで話題を変えた。

『いきなり、すき焼きってなんだよ』

俺は変に話題が変わったので少し疑問に思った。

『れ、恋士さん!!』

三咲ちゃんが焦ったように俺を呼ぶ。

『なに、三咲ちゃん?』

『その早く晩の買い物済ませた方がいいんじゃないですか?』

『あ、そうだったそうだった。話し込みすぎて当初の目的忘れてた』

危うく晩の買い物をせずに帰る所だった。

『それじゃ、三咲ちゃん家に行こうか』

俺はそっと三咲ちゃんに手を差し伸べる。

『その…い、いいんですか?』

『なにが?』

『い、いえなんでもないです…』

そういうと三咲ちゃんはそっと俺の手を掴んだ。

うーん、今思ったけどこれってはたからみたら恋人同士に見えないか?

『…あの…恋士さん…どうしたんですか?』

『い、いやなんでもないよ』

俺は繋いでいない方の手をブンブン振っていう。

『そうですか…ふぅ…それなら、早く……いや、遅くいきましょうか♪』

『…うん、そうだね』

……なんで遅くなんだろう?。少し疑問に思ったが、あえてそこはスルーすることにして、三咲ちゃん家に向かって歩いていく。

『……おーい…俺を忘れんなよー……』

さっきから、忘れ去られていた安彦が泣きそうな顔をして走ってくるのだった。


to .be. continued ……





























































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