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~第13話~彼はまだミートボール内にも気付かない

『ほら、みてよレイジ♪ジェットコースターがあんなに高いとこまで上ってるわよ♪』

『わ、分かったからそんなに急がなくてもいいんじゃない…』

彼女を追いかけるように恋士は走る。

入場するついさっきまでは、不機嫌だった(さかい)さんも入場するなり目の色を変えてミートランドを眺め見ていた。

『うわ~なにあの速度…あれはさすがに私でもきついかも』

『ちょ、ちょっと堺さん…はぁ…はぁ…も、もう少しゆっくり歩かない…』

追いかけるのに疲れた恋士(れいじ)は、手を膝につき顔を下に向けて呼吸を整える。

『もう~…レイジったら体力無さすぎ。今からそんなんじゃミートランドのアトラクション全制覇なんて到底無理じゃない』

『ぜ、全制覇!?』

恋士は下を向いていた顔を彼女の方に向けた。

『なに言ってるのよ。今日はその為にレイジとの思い出の場所であるミートランドに──っ!?』

と、そこまで喋ったところでアリシアはハッとしたように自分の口を手で押さえた。

『え?今日は聖夜祭の為の打ち合わせをここでするんじゃないの?……それに…俺と堺さんとの思い出の場所って……』

恋士は今の彼女が言った言葉にコクリと首をかしげる。

『──というのは冗談で。お昼ご飯の時に聖夜祭の打ち合わせをしましょ。それでいいわよね、レイジ』

『……ま、まぁそれでもいいけど…それよりもさっきの話は…』

恋士はさっき彼女が言っていた話が気になっていた。

俺と堺さんの思い出の場所?………なんか頭の中で何かが引っ掛かる。

もし、ミートランドが堺さんとの思い出の場所であったとしても、俺はその時のことを今は思い出せていない。

でも、今一つだけ言えることがある。

それは、そのときの彼女との思い出はとても大切なものであった、ということだけは何となくだけどわかるのだ。

『なによ。なにか言いたいことでもあるのかしら』

彼女は少し睨みをきかせた目で(いま)だ完全には納得していないでいる恋士を見据える。

『はは…な、なにもないよなにも……』

両手を振り、苦笑しながら言う。

『……そう、ならいいわ』

彼女もこれ以上この話はしたくないのだろう。

なので恋士も〝自分達の過去〟の事を聞くのはやめた。

『じゃあ、そろそろミートランドを回ろうか』

『そうね…それじゃ、いくわよレイジ』

そういうと彼女はレイジの手を掴んで走り出す。

『うわっ!?ちょ、ちょっと堺さん!?』

急にアリシアから手を握られた恋士はドキッとしながらもアリシアの走るスピードについていくように走り出す。

『さっきも言ったけどもう少しゆっくり──』

手を繋がれたまま恋士はアリシアに言った。

すると、走っていた彼女のペースが段々遅くなっていき、ピタリと足が止まった。

『もう…ちょっとくらいいじゃない…恋士のケチ』

ふてくされたアリシア。そんなアリシアに恋士は顔に手をやった。

『まったく、ケチで結構だよ。それよりほら、まだお昼までミートランドを満喫する時間はあるんだから』

恋士は何の気なしに彼女に手を差し出した。

『……っ!?』

堺さんは俺の手を見るなり、顔を赤く染めて黙りこんだ。

『……どうしたの堺さん?早く行かないとお昼になっちゃうけど?』

『……そ、そうよね。は、早く行かないとお昼になっちゃうわよね……それじゃあ──』

おずおずと恋士の手を握る。

『それじゃあ、行こっか』

『は、はひッ!?』

アリシアは思いきり咬んでしまった。

その姿を見た恋士が軽く笑うと、アリシアは恥ずかしかったのか恋士を思いきり殴り飛ばしたのだった。

・・・・・・

恋士とアリシアが手を繋ぎながらミートランドを回っている中。2人から少し離れたところにある入り口付近の草木に隠れる2つの影があった。

1人は白いラインの入った緑ジャージ姿をしているミニポニーテールの髪型の女の子で、もう1人は茶色がかったロングヘアーで、見知らぬ人がみたら何度も振り向いてしまうほどの美人な女の子。

『や、やっぱりあれって…デート、なんですかね雅さん?───て、み、雅さんっ!?』

隣にいる雅に顔を向けた三咲は少し後ずさってしまった。

『デ、デート以外に、な、何に見えるというの三咲ちゃんっ』

背中にドス黒いオーラをわなわなと漂わせている雅は恐ろしいほど怒っているようで、隠れるために身を潜めている草木の枝をバキバキと片手でへし折っている。

『み、雅さ~ん…そ、その、そんなにドス黒いオーラを放っていたら恋士さんや堺先輩に気付かれちゃいますよ~…』

ドス黒いオーラを漂わせている雅に三咲は怯えながらも指摘する。

『な、なに言ってるのかな三咲ちゃん…?わ、私がいつそんな〝ドス〟黒いオーラなんか出したのかしらっ!?』

雅さんは私の方を見ながらかも平静を装いながら聞いてくる。

『あの、どこからどうみても──あれ?』

よくみると雅さんの背中にさっきたぎっていたドス黒いオーラはあたかも最初から存在していなかったかのように綺麗になくなっていた。

『ど、どうやってあんなにドス黒いオーラを一瞬でっ!?』

『な、なにかしら三咲ちゃん?まだなにかあるのかしら』

『い、いえいえっ!?な、なんにもありませんよ…あははは…』

雅さんの目がまったく笑ってなかったので、笑って誤魔化すことにした。

『…そう、ならいいわ───ところで三咲ちゃんに聞きたいことがあるんだけど、いいかしら』

『な、なんですか雅さん?』

『その、ね…恋士君と堺さん……どこに向かったのか、わかる?』

『え?』

雅さんに聞かれた通り辺りを見渡す。

『あれ?二人ともどこにいったんでしょう?』

『───探しにいくわよ三咲ちゃん』

雅さんが草木から出ていこうとする。それを私はついていくように追いかける。

『──ちょ、ちょっと待ってくださいよ~雅さ~ん!!』

私はこの先どうなるのか不安に思いながらも雅さんについていくのだった。

・・・・・・

『こ、これがジェットコースターなのかっ!?』

俺と堺さんはミートランドマップを見て、一番人気と聞いたジェットコースターにやって来た。

『それにしても、凄い行列だな』

一番人気と言うこともあり、もうすぐお昼になるというのにも関わらず最後尾が元々仕切るために用意されているコーンをゆうに越えていて、最後尾のお客さんの隣に立っているスタッフさんが持っている待ち時間を示すパネルには〝待ち時間は1時間になります!!〟と書き記されていた。

『こんにちは。こちらはミートランド内でNo.1を誇るジェットコースター。名付けて、ミートブースターでございます♪』

ニコニコと笑顔を絶やさずに案内をしているスタッフさんを見る。

ミートランドだからなのか、スタッフさんのミニスカートにはミートボールが360°全体に飾られていて、お昼時のお腹にはとても刺激が強い。

『何ジロジロスタッフさんのスカート見てるのよっ』

『いや、見てない見てないっ!!見てたのはそのスカートに付いてるミートボールだからっ!!』

ほら、とそのスカートを指さす。

すると、堺さんはそれを見るなり表情を輝かせた。

『何あれ、すっごくかわいいじゃない!?』

アリシアは最後尾に立っているスタッフさんのところに近づきにいった。

『こんにちは。ミートランド内No.1を誇るミートブースターになります。申し訳ございませんが、今お並びになると1時間ほどお待ちにならなければなりませんが、それでもよろしいでしょうか?』

ミートブースターの列にやってきたアリシアにスタッフが丁寧に説明をしてくれた。

『あ、そうなんですかっ!?。でも、大丈夫です。何分でも待ちます。それより──』

と、スタッフさんのスカートに目を向けたアリシアは興奮ぎみに聞いた。

『あ、あのっ!!こ、これって全部ミートボールなんですかっ!!』

『はい。ここ、ミートランドにしかないスタッフ専用コスチュームです』

スタッフさんはニコニコと笑顔でアリシアに説明してくれた。

『はぁ~いいな~ちょっと着てみたいな~♪』

顔をにやけながらアリシアが言うとスタッフさんは少し困った顔でアリシアに言った。

『すみませんお客様。このコスチュームはミートランドだけの特別コスチュームになっていますので、着ていただくためにはここにアルバイトまたは就職していただかないと…』

『……あ、そうなんですかっ!?。じゃあ、いつかバイトするときは必ずここにしますね♪』

『はい。そうして貰えると助かります。もし、アルバイトなさるときはぜひうちに来てくださいね。お待ちしております』

『はいっ!!。その時は必ずここにアルバイトしに来ます!!』

アリシアは笑顔でスタッフさんにこたえたのだった。

・・・・・・

ミートブースターを乗るために待つこと早1時間。やっと俺達の番がやってきた。

『お待たせ致しました。こちらはミートブースターでございます。何名様でお乗りですか?』

順番が回ってきた俺達に笑顔で対応してくれるスタッフさんにチラッと堺さんを見てから俺が答える。

『…えと、2人です』

『はい、お二人ですね。それでは後ろのお客様もお乗りになりますので前の方にお乗りになってお待ちください。なお、お荷物はあそこに設置しておりますお荷物かごにお入れくださいますようお願いいたします』

『はい、わかりました。行こ、堺さん』

『…ええ』

優しく説明してくれたスタッフさんに軽く頭を下げて、自分達の荷物を荷物かごに入れた。

『よし。それじゃ、乗ろうか』

『そうね。とりあえず、レイジは先に乗りなさい』

恋士の背中をグイグイ押しながら先に乗せてくる堺さんに恋士は不思議に思った。

『別に押さなくても、自分から乗るよ』

『う、うるさいわねっ。あんたがビビってるみたいだから先に乗せたのよっ!?文句ある!?』

確かにこのミートブースター…並大抵のジェットコースターとは遥かに違う気がする。俺が乗ったことあるジェットコースターといえば、スマイルワールドのタイタンぐらいだし、ザ・ターンとかビーナスはさすがに人の乗り物じゃないと俺は思ってたから乗らなかった。今もだけど…。

だが、このミートブースターはそれを凌駕(りょうが)するほどの高さ&角度。さっききたばっかりの時に動いているのを見学してみたが、凄かったの一言につきた、と言っていいだろう。最初に勢いをつけるための急斜面の坂。それが終わった後に待っているのは所々急カーブがあるコースだったり、急カーブが終わったと思ったら最初よりは小さいが、十分すぎるほどの斜面が待っている。その斜面が終わったら、後はそのまま真っ直ぐ出口に直行…というシンプルでかつ怖いコースなのだ。

『それにしても、あのミートボールはなんだ?』

さっき言っていた十分すぎるほどの斜面に入る前に今だ何なのかわからないミートボールの形をしたコース上の建物。あれは何なのか、とスタッフさんに聞いてみた所〝それは入ってからのお楽しみでございます♪〟と自分の唇に人差し指を当てて答えてくれた。

気になる、があのミートボール上の建物に入ったらわかると言うことなので入ってからのお楽しみにすることにしよう。

それよりも気になったのが、今さっき言っていた堺さんの言葉だ。

俺がビビってるから?。それはそうかもしれないけどなんか引っ掛かる。

『ねえ堺さん』

『な、なによレイジ』

俺の隣にぎこちなく座る堺さん。とても緊張しているようで、さっきから足をソワソワさせている。

『……もしかしなくても、恐いの?』

『バ、バッカジャナイノッ!?コ、コノワタシガソ、ソンナコトア、アルワケナイジェナ──ッ!?』

『…………』

完全に言葉が片言になっていて最後の閉めには噛んでしまっている。よほど恐いみたいだ。乗る前まではあんなに人にたかがジェットコースターぐらいで、と凛として言っていた堺さんはどこに行ったのか。今ではもう見る影1つすらなかった。

……仕方ない。ここは一肌脱ぐか。

恋士は1つ決心してアリシアに話しかける。

『…俺さ。こんな凄いジェットコースターに乗るのは初めてなんだ。だから結構恐かったりするんだよね』

『……そ、そうなんだ』

さっきまで、あんなに片言のように喋っていたアリシアの口調はもとに戻り、恥ずかしながらおずおずと左手を差し出してきた。

『し、仕方ないから。わ、私が手、握っててあげるわよ。感謝しなさいよねっ』

『そうだね。感謝するよ堺さん。ありがとう』

おずおずと差し出された左手を恋士は微笑しながら軽く握る。

『な、何がおかしいのよ…もう』

『なんでもないよ───っと、そろそろ発進するみたいだね』

ミートブースターに全員が座り終えたのを確認し終えたスタッフさんが先頭にやって来た。

『それではお待たせいたしました♪。ミートブースターの発進準備が整いましたので、これよりミートブースター、発進でございます♪。皆様、楽しんでいってらっしゃいませ』

一言終えたスタッフさんはミートブースターの制御室に入っていき、発進レバーを押しにいったようだ。いよいよミートブースターの発進だ。

『う、動き出したわよレイジッ!?』

『……う、うん。そうだね』

まだ動き始めたばかりだと言うのにこの同様ぶり。先々不安で仕方ない。

『これ。終わった後どうなってるんだろ』

ため息をしながら終わった後のことを考える恋士なのであった。

『…………あ、ありがとう……』

恋士は気付いてなかったが、アリシアは恐怖に怯えながらも、か細い声で言ったのだった。


to.be.continued……




























お久し振りです、または初めまして勇者王です!!。

〝彼はまだ彼女の想いに気付かない〟略して〝彼鈍〟第13話を投稿させていただきました!!。それと………皆様♪誠に遅れましたが、明けましておめでとうございますm(__)m。どうか今年もよろしくお願いいたしますm(__)m。それでは後書きの内容に入らせていただきます。

皆様!!遂に…遂に、遂に、遂に!!投稿することができて嬉しい今日この頃の勇者王です!!。いや~2ヶ月ぶりですよ…ほんとに。あと1日経ったら3ヶ月投稿になるところでした(笑)。

読んでくださってくれている読者様はもしかしなくても『話詰まったの?』とか『書くのがめんどくさくなったの?』とか思っている方がほとんどだと思います(結構心にグサッときます(;つД`))。デスガ!そんなことはないのですよ!!。前回掲載させていただきました12話の後書きに書いていました通り、必ず掲載しますがいつかは書きませんね、の言葉通り、1月31日に投稿させていただきました。これで彼鈍を読んでくださっている皆様にも安心して次回を楽しみにして頂けるかと思います。

それでは早いですが謝辞を。

始めてお読みになってくれた読者の皆様、またここまでお付き合いくださってくれている読者の皆様、誠にお読みになってくれてありがとうございます。

これからもこの作品を暖かい目で見守っていてくれると私目も幸せでございます。

それではまた次の掲載で。

(感想をぜひ!!よろしくお願いしますね!!あと間違っているところがあればぜひ感想にて教えてくれたら幸いでございます♪では♪)


平成25年1月31日掲載

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