~第10話~彼はまだデートだとは気付かない
『ふふふ~~ん♪』
鏡の前で服を着替えていたアリシアは気合いを入れるために鏡の前で一回クルッと優雅に回る。
『よし!問題ないわね♪』
アリシアは鏡の前でニッコリと笑う。
『…ちょっと気合い入れすぎたかな』
そんなことを言いつつ改めて今の自分の服装に目をやる。
秋も終わり冬真っ只中に入るという11月の終わり。
そんな時期に合った青と白の長袖のワンピースとその上にコートを羽織った自分に正直照れくさく感じていた。
『…でも、これならダサいとか言われないわよね』
アイツの顔を思い浮かべる。
今日私が待ち合わせをしているのはアイツ、名前は馬場恋士と言ってバカで鈍感で女ったらしの冴えない男だ。
なんで待ち合わせをしているかって聞かれると、あと1ヶ月後に行われる聖夜祭の打ち合わせをしようってことでレイジとミートランドっていうこの町の人なら誰でも知ってる遊園地で、昔こっちにいた頃に一度だけ家族皆で遊びにいったことがある。
『そして、あれが〝私とレイジのちゃんとした出会い〟、だったわよね…』
レイジとはご近所の付き合いだったけどそれは親同士だけって感じて、子供の私たちは全然面識がなかった。
そんな私達をあのミートランドが変えてくれた。
『…ウフフ♪なんだか楽しみだわ♪』
これからのことを想像しながらアリシアは微笑を浮かべるのだった。
・・・・・・
出掛ける身支度を終えたアリシアは自分の部屋から出て、一階のリビングに向かった。
『お母さんおはよう♪朝御飯は?』
『おはよう。朝御飯なら今できたわよ』
お母さんが出来立ての朝御飯をお盆にのせてテーブルに置いてくれる。
『ありがと♪』
アリシアはお母さんにお礼を言うと手を合わせた。
『いただきます♪』
『どうぞ、召し上がれ……あら?アリシアどこかにお出掛けするの?』
『うん、ちょっとね…うんっ浅漬け美味しー♪……あむ、うむ…ごく、ん……ほ、ほら私聖夜祭実行委員に選ばれたじゃない!、だからその打ち合わせなの!!』
『ああ、そういえば昨日そんなこと言ってたわね』
『そうそう!!昨日言ってた打ち合わせ!!』
とアリシアが言いながらうんうんと頷き、朝御飯を食べ続ける。
しかし、お母さんは昨日のことを思いだしたかと思うと、急にフフッ、とした笑みをこぼし始めた。
『…あむうむ…ごく、ん……な、なんで笑うのっ!!』
『なんでって…確か実行委員ってクラスから二人だったわよね?なのに、選ばれたのってアリシアだけしか聞いてなかったと思うんだけど…もう一人を聞いていないのは私の気のせいじゃないわよね?』
『…そ、それがどうしたの!べ、別に誰だっていいじゃないっ!!』
バンッとアリシアがお箸を勢いよくテーブルに置く。
しかし、今の動作からお母さんにはそれが動揺しています、と言っているのに等しい行動だとまるわかりだった。
でも、等の本人は全くばれていないと思っているらしく、お母さんが疑っているにも関わらずそのまま朝御飯を食べ始めて、この話はもう終わりとばかりにお箸を動かす。
『……ほらほら、そんなに急いで食べたりなんかしたら太ってレイジくんに嫌われちゃうわよ?』
お母さんがクスクスと笑いながら言う。
『…ごっく、ん…だ、大丈夫よ。レイジはそんなの気にしないから──って!?な、なんでレイジがそこで出てくるの!!』
またもお箸をテーブルに置いて、怒鳴るアリシアにお母さんはわかっていました、と言わんばかりに話始める。
『あら?もう一人の実行委員はレイジくんと思ったんだけど…私の気のせいかしら?』
『う!?そ、それは……そうだけど…な、なんでわかったの!?』
『やっぱりね。そっか~…レイジくんとアリシアがデートね~…それは気合いが入るわけね、納得納得♪』
お母さんがうんうんと頷く。
すると、今のお母さんの独り言を聞いたアリシアが焦り始めた。
『ち、ちょっとお母さん!た、ただの打ち合わせなんだから…その…デ、デートじゃ、ないんだから……そ、そりゃあ私も…デ、デートかなって思ったりもしたけど、でもこれはあくまで打ち合わせであって、けして…ブツブツ…』
何故かアリシアは朝御飯を食べ始めずにブツブツと独り言を始めてしまった。
『もう、そんなことしてると打ち合わせ(・・・・・)に遅れちゃうわよ……あ♪そうだアリシアにいいこと教えてあげる♪』
『……で、でもレイジがその気なら……ブツブツ…』
『……アリシア…もう、仕方ないわね。耳かしなさい』
『…わ、私も…ってお母さんなんで耳掴むの!?』
呆れたお母さんはアリシアの耳を掴んだ。
『いいから、私の話を聞きなさい。実はミートランドにはとある噂があってね…ごにょごにょ…』
お母さんはアリシアにあることを教えたのだった。
・・・・・・
『……ふぁぁぁ~……』
眠い。
今日もとても眠いでたまらないので、二度寝がしたいくらいだけど。
『……う~…ん……フゥ、起きるか…』
俺は眠たい目を擦りながらもベッドから無理矢理体を起こす。
『今日は流石に起きないと堺さんからどやされるからな』
堺アリシア。
ついこの間転校してきた俺と昔面識をもつ金髪ロングの女の子。
なんで俺の昔のことを知ってるかって?それは俺にもわからない。
だから、転校してきた日に堺さんに昔のことを聞いたんだけど〝自分の胸に手を当てて考えなさい!!〟なんて言われて全然教えてくれなかった。
『まあ、昔会ったことあるんならいつか思い出す…かな、多分…』
自信のないことを言った自分だが、今日の待ち合わせ場所には堺さんより早く着きたいと思っている。
だってそうだろう。仮にも俺は漢だ、漢が待ち合わせ場所に先に着いていないなんて漢として情けなく思う。
だから俺は、せっかくの休日だけど二度寝をせずに聖夜祭のため、堺さんの為に顔を洗いに洗面所に行くのだった。
・・・・・・
『…フゥゥー…スッキリした~…うん?……鼻歌?』
俺は洗面所からスッキリした顔で台所に向かっていたらとても聴き心地の良い鼻歌が聞こえてきたので、その鼻歌が聞こえてくる台所に入ってみると、美人のお姉さんがエプロン姿で料理を作っていた。
『ふ~ふ~ふふふ~~ん♪ふ~ふ~ふふふ~ん♪……あ♪恋士君おはよ~♪』
この人の名前は椎名雅ことみや姉と俺は呼んでいる。
我が紅葉種付属学園の三年生で料理研究部、略して料研の部長を勤めているのだが、普通なら引退しても良い頃合いなのに、部員の皆がみや姉をまだ引退させたくないらしくいつも料理を教えて、と言ってみや姉に教えをこうているようだ。
みや姉自信嫌がってはいないらしく、自分からちょくちょく料研には顔を出しているようだ。
『ねぇ恋士君、どうしたの?私を見て考えるような顔して……あ♪まさか、私のエプロン姿見て鼻の下延びちゃったの?』
『な、なに言ってるんだよ!!俺がみや姉のエプロン姿を見て鼻の下延ばすわけ───』
チラッとみや姉のエプロン姿を改めて見回す。
……うん、今日のみや姉のエプロン姿も綺麗だなっと心の中の親指をピンと立てる…っていやいやそんなことしてる場合かよ!!。
『み、みや姉ご飯もう出来てるの?』
みや姉のエプロン姿を凝視していた目をさっきまで料理をしていたみや姉の後ろを見る。
『う~~~……話そらされたよ~……朝御飯なら今できたよ、ハイ』
みや姉は唸りながらも朝御飯をテーブルの上にのせてくれた。
『ありがとう……いただきます』
俺は手を合わせて朝御飯を食べ始める。
『どうぞ召し上がれ♪……いただきます』
さっきまでの唸った顔をしていたみや姉だったが、俺が朝御飯を食べ始めるとみや姉もまだ食べてなかったのか、俺と一緒に朝御飯を食べ始めた。
『あ、そういえば恋士君』
『うん?なにみや姉…ズズゥー…』
俺は味噌汁を啜りながらみや姉に返事をする。
『今日、さ、珍しく朝早いけど…その…どこかにいくの?』
『ズズゥー……うん?ああ、うん、聖夜祭の打ち合わせがあるんだよ…どうして?』
俺は食べ終わった味噌汁をテーブルに置き、みや姉に聞いてみる。
『い、いや別にたいしたことはないんだけど…ただちょっと気になったことがあるくらいで…』
『うん?ただちょっと気になったことって何?』
俺がまた質問するとみや姉はお箸を片手に自分の前に垂らしている髪をくるくるといじりながら口を開き始めた。
『……そ、それはその…打ち合わせってさ、実行委員の2人でするの?』
『そうだけど、それがどうかしたの?』
『……ちなみに聞くけど、恋士君ともう1人って……堺さん、だったよね?』
少し真剣になって聞いてくるみや姉。
その顔を見た俺がただ思ったことは久し振りにこんな顔のみや姉を見たな……だった。
『もう恋士君!人の話ちゃんと聞いてる?確か前にお昼食べたときに言ってたよね』
『ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事してた。で、その事だけど、そうだよ。今日は堺さんと打ち合わせがあるんだ』
と、俺が普通に教えるとみや姉が引きずった顔になった。
『……へ、へ~…堺さんと〝二人きり〟でなんだ……ふ~ん、そうなんだ~…』
『ど、どうしたのみや姉!?急に恐い顔して』
『ふ、ふ~んだ!!…女心がわからない恋士君には教えてあげないよ~だ!!』
プイッと頬を膨らませるみや姉。
こういうときのみや姉は何を言っても無駄だ。
『もう、また頬膨らませた顔して……ハァ…』
仕方ないので、俺は待ち合わせに遅れないように朝御飯を再開することにした。
『……もう、恋士君のバカ……』
朝御飯を再開した俺を見たみや姉は俺に聞こえないような声で愚痴を溢すのだった。
to.be.continued……
お久しぶりです、または初めまして勇者王です。
皆さん!!今回な、なんと投稿日が二日(多分?)ぐらい早いですよ!!(どや)
今回はですね~これを投稿した日から一週間前から執筆を始めていましてですね~、そのお陰〝?〟で二日早いんです〝多分?〟。
いつもなら一ヶ月なる直前ぐらいに執筆を始めて、その一日で執筆を終えて投稿する…と言うのがいつもの流れです(笑)。
ちなみに内容はそのときにできてたり、できてなかったりです。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、この〝彼はまだ彼女の想いに気付かない〟略して〝彼鈍〟のお気に入り登録数がな、なんと最初では考えられなかった25人もの人〝最新投稿日現在〟がお気に入り登録をしてくれているんですよ♪
いや~…まさか、ここまでの人が登録してくれるとは…まさに感謝感激感涙です♪
これからもこの〝彼はまだ彼女の想いに気付かない〟略して〝彼鈍〟をよろしくお願いしますね♪。
という嬉しい情報はこのくらいにして、〝彼はまだ彼女の想いに気付かない〟略して〝彼鈍〟はついに聖夜祭準備編に突入しました。
もう読んでくれた方々は思いましたよね。
『な、なんでこんないいところで終わるんだ!!』と。
思っていない人も思ってください。
私は思ってる方です。
実はリアルな話をしますと、このまま欲望(創造力!!)のままに書き続けると文字数多すぎて、読まれるかたも大変じゃないか、と思ったのでここまでにしました。
そういうことなんで楽しみにしてくれている読者の皆様はどうかお楽しみしていてくださいませ。
まあそんなこんなで次回予告(仮)!!
恋士はアリシアとの待ち合わせ場所であるミートランドに向かっていた。そんな恋士を影から見守る(ストーキングする?)二つの影。
それに気付かない恋士は普通に待ち合わせ場所であるミートランドに向かっていく。
場所がわかった二つの影は恋士の待ち人であるアリシアへと視線を向け、思った一言。
『……雅さん。あれは誰がどう見ても……違いますよね…』
『そうね…あれはどう見ても、〝デート〟よね…』
次回予告(仮)!!でした。
まあ、読んでる人はわかりますよね?一人は名前出してるし。
まあ、次回をお楽しみにしてください。
それではここで謝辞を。
始めてお読みになってくれた読者の皆様、またここまでお付き合いくださってくれている読者の皆様、誠に読んでくれてありがとうございます。
これからもこの作品を暖かい目で見守っていてくれると私目も幸せでございます。
それではまた次の投稿で。
…………あ、経済的な話書くの忘れてた…。
平成24年8月13日掲載