~第8話~助かった彼は彼女のことには気付かない
『………………』
今、何時なんだろう。
あれからどのくらいたったか覚えていない。
覚えているのは彼を跳ねた人が車から降りてきて、携帯電話を取り出して急いで救急車を呼んでくれたこと。
そして、その到着した救急車に乗っていた救急隊員の人に〝君も怪我をしてるから〟と言われて私も一緒に救急車に乗ることになった。
でも私の傷はかすり傷程度だったので、傷口に消毒液を塗って絆創膏を貼るだけで済んだ。
『……わたしはかすりきずですんだのに……』
どうして彼は…彼はなぜ私なんかを庇ったのか、私にはわからなかった。
彼は今、病院の緊急治療室で寝ている。
救急車を呼んだのが速かったため、何とか手術は成功し、一命をとりとめた……けど……。
その時、緊急治療室のドアが開き、1人の女の子が出てきて私の方へとゆっくりと歩いてくる。
その女の子は私と彼よりも年齢は1つ2つ上に見えた。
『……貴女がれいじくんが助けた子?』
『………………』
〝れいじくん(・・・・・)〟、とはきっと私を助けてくれた彼のことだろう。
そうか…彼はれいじ(・・・)って名前なんだ。
やっとわかった彼の名前を心の中で呟くものの等の本人は緊急治療室の中。
そう言われた私はなにも言えず、言えたのは…。
『……ごめんなさい…』
この言葉しか出てこなかった。
『……さない…』
『え?』
私が謝罪をしたら、1つ2つ歳上の女の子が小さく私の目を見て口を開いた。
『私は貴女を許さない(・・・・・・・・・)』
『………ごめんなさい……』
また私は謝罪をする。
私のせい。
その言葉が胸の辺りに深く突き刺さる。
そう……全部私のせいなんだ。
すると、そんな私を見て彼女はさっきよりも鋭く私を睨んできた。
『あやまるばっかり…わたしにあやまるよりさきにいうことがあるんじゃないの?』
『……謝るより先に言うことがあるんじゃないの?……』
『そう……わたしにあやまるんじゃなくて、かんしゃしなくちゃいけないひとにいわなきゃいけないこと』
『そ、それは!!…いいたい……けど……でも……』
そこまで言った私だったが、あの時のことを思い出して段々顔を俯かせてしまう。
そんな私を彼女は続けてさっきよりも声音を大きくして言う。
『でもじゃないでしょ!!そんな弱々しい顔をしてたらせっかく体をはって助けてくれたれいじくんが浮かばれないわ』
だから、と続けながら近づいてくる。
『貴女にはしなくちゃいけないことがあるんだから』
私は呆然としていた。
さっきは〝許さない(・・・・)〟と目を鋭くしながら言っていたのに、どうしてそんなことをいってくれるんだろう。
私がその事をおずおずと聞いてみたら〝当たり前じゃない〟と言った。
『私は貴女のことは一生許さない(・・・・・・・・・・・・・・)。けどね、緊急治療室に運ばれたとき…れいじくん、少しだけ目をさましたらしくてね。その時にね…れいじくんが言ってたらしいの』
そういって彼女は、彼の話を続ける。
『〝あの子は大丈夫だった?〟って』
『!?』
彼がそんなことを?、自分の方が重傷なのに?。
その話を聞いた私は驚きが隠せず、言葉がでなかった。
『おかしいよね、れいじくんの方が生きるか死ぬかの瀬戸際だっていうのに1人の女の子を助けるために自分の身を犠牲にして…ほんとれいじくんには困ったものね』
ため息混じりに苦笑する。
そして彼女はでも、っと話を続ける。
『そういうところがれいじくんのいいところなんだけどね』
『…………』
彼女の話しているにもかかわらず私はうつむいてしまった。
だってしょうがないよ、目から溢れでてくる涙が止まらないんだもん。
嬉しかった。自分の身より私の身のことを心配してくれるなんて私には真似ができないし、それに私のせいなのにその事も気にしていないなんて…。
私の泣きじゃくる姿を見た彼女は慌て始め、ポケットからハンカチを取り出して、私の目の辺りを拭ってくれた。
『ほらほら、せっかくのカワイイ顔が台無しじゃない』
『……うぇっ…グスンッ…で、でもうれしくてなみだがとまらないんだもん…グスンッ…』
そんな顔を見た彼女は困った顔をする。
『もう、そんなに泣くんなら今回のこと許してあげないよ』
『……グスンッ…わ、わかりまじだ…グスンッ…』
私はお父様とお母様には見せられないほどの顔を彼女から貸してもらったハンカチで拭う。
『こ、これ!あ、あらってかえします!!』
『良いわよ、私の家で洗うから』
言うと、私が泣き止むとハンカチを自分のポケットにしまった。
『さて、十分に泣いたかな』
『……は、はい!!も、もう大丈夫です』
目を腕で少しだけ擦り、彼女の目を見る。
そして、彼女は軽くウィンクしながら言った。
『それじゃ、早くれいじくんの所に行って元気な姿を見せてあげてね』
そう言われた私は礼儀正しく深く頭を下げ、この人生の中で出したこともないだろう声音で大きく返事をした。
『はい!』
そして、私は緊急治療室に向けて駆け出そうとした時。
『あ、ちょ、ちょっと1ついい?』
不意に彼女が私を止めた。
『なんですか?』
『今気づいたんだけど、〝名前〟を聞いてなかったわ』
『あ、そういえばそうですね』
お互いクスッ、と少しだけ笑いあった。
『じゃあ、私からします』
スーハー、と深く深呼吸をして口を開く。
『わたしのなまえは〝ふじくらかれん〟といいます』
『かれんちゃん、か。カワイイ名前ね』
彼女は私の名前を呟く。
『あ、ありがとうございます』
私は少し恥ずかしがりながらも、次に彼女の名前を聞くことにした。
『それじゃ、私の番ね』
スーハー、と深く深呼吸をして勢いよく口を開いた。
『私の名前は〝椎名雅〟よ』
・・・・・・
『……失礼します』
ガララッ、と緊急治療室の扉を開く。
そこには彼の母親だろう女の人がベッドの隣に椅子をおいて林檎の皮を剥いていた。
その様子を見ていた私に不意に声がかけられた。
『こんにちは』
『!?』
『あ、いまよなかだっけ。あはは、まちがえちゃった、こんばんわ』
ビックリしてしまった。
あんな事故があったのにもかかわらず、彼はけろんとしていてすこぶる元気だった。
その様子を林檎の皮を剥きながら聞いていた彼のお母さんは私を見るなり、林檎を差し出してくれた。
『はい林檎』
『い、いえ、わたしは』
『林檎嫌い?』
『きらいじゃないです』
『じゃあほら、林檎食べなさい』
『ありがとうございます』
私はひとまず林檎を口に運んだ。
うん、やっぱり林檎を美味しいな。
そう思ったもつかの間。
『それで、貴方はれいじが助けた子、よね?』
『は、はい…彼に…』
と、目をチラッ、と彼の方へと向ける。
そんな私を見た女の人はばつが悪そうに口を開く。
『それがれいじのことなんだけど───』
と、そこまで彼が女の人の話を遮り話を始めた。
『ああ!ごめんごめん、はじめてのひとだから〝はじめまして(・・・・・・)〟か』
『………………………………え…』
〝はじめまして(・・・・・・)〟?。
そんなことを言われた私は、今言われたことが理解できなかったのだった。
to.be.continued……
お久しぶりです、またははじめまして勇者王です。
この度は投稿が遅れて誠にすみませんでした。
色々この時期は忙しくてかけないんですよ(焦)。
そんな謝罪はおいといて…彼鈍(前回略)どうでしたか?。
自分の予定ではそろそろです、そろそろ。
そろそろが何かって?。それはそろそろってことです!!(理由になってない(笑))
そんなこんなで今回の後書きはこのぐらいにしましょう、時間もないで。
まずは、謝辞を。
これを読んでくれている皆様本当にありがとうございます。これからもこの作品を読んでくれることを切に願います。
それでは早いですが、この辺で終わりましょう。
ではまた、次の投稿で。
平成24年6月14日掲載