プロローグ
プロローグ
男は、目の前にそびえ立つ鋼鉄製の城門を見つめていた。今の時代なら、鋼鉄よりも強度が強く加工も容易な材質がいくらでもあるだろうに……と男は思った。見るものを威圧するためだけに鋼鉄で作られたその門を見て、男は、この城の主の権力への妄執を垣間見た気がした。
「貴様、何者だ!!。それに、何を笑っている。」
門衛らしき兵士が、男に槍を突きつけながら言った。男は自分でも気づかぬうちに笑っていたらしい。
「何者だとはご挨拶だな。城主から何も聞いておらんのか」
男は鼻先に突きつけられた槍の穂先を気にする風もなく言った。
「我が君からだと?……客人が来るなどとは聞いておらんぞ……そうか、貴様仕官しに来たのだな。そんな手管を使わずとも、我が君はお会い下さる。だが、それならもっとしおらしくしてな。我が君は、自信過剰な奴がお嫌いだからな。」
そういって門衛の兵士は笑い出したが、次の瞬間、その笑いは凍てついていた。男の剣が、兵士の咽喉元に突きつけられていたからだ。兵士がそれを認識するのと、弾き飛ばされた兵士の槍が城門の扉に叩きつけられて轟音を響かせるのと、ほぼ同時だった。
「国主・董昭に伝えろ。圭玄文が、約束どおりやってきたとな。」
長い髪の間からわずかにのぞく右目から鋭い眼光を飛ばしながら、男は言った。




