「先輩、僕たちを囮にして逃げたはずなのに、どうしてそんなにボロボロなんですか?」
学園に入学して一週間。
Sクラスという看板は、時に嫉妬と悪意の的になる。
特に、実力主義を掲げるこの学園の「合同ダンジョン実習」においては。
「おい、1年のゴミ共。遅れるなよ?」
薄暗い地下通路。湿ったカビの匂いが充満する『旧王都の地下墓地』を、俺たちは歩いていた。
先頭を行くのは、3年生の木崎という男だ。Cランクの剣士で、典型的な「新人いびり」を生き甲斐にしているタイプである。
俺とリコは、彼ら3年生パーティの「荷物持ち」として強制参加させられていた。
「……ねえケイ。私、あの人の背中、蹴っ飛ばしていい?」
リコが巨大なリュックを背負いながら、殺気立った小声で囁いてくる。
彼女の身体能力なら、荷物が何キロあろうと関係ないが、扱いの酷さに腹を立てているようだ。
「我慢しろリコ。今回の目的は『単位』と『ドロップ品の回収』だ。彼らを殴っても1イェンにもならない」
俺は眼鏡の位置を直しつつ、冷徹に告げる。
それに、俺の『解析』には既に映っているのだ。
この先に待ち受ける、悪意ある未来が。
◇
「おい、ここを調べろ」
木崎が指差したのは、あからさまに怪しい巨大な鉄扉だった。
壁には『死者の眠りを妨げるな』という警告文。
「わかりました」
俺は何食わぬ顔で扉に手をかけ――少しだけ開いて、リコの手を引いて中に滑り込んだ。
「――かかったな、バァーカ!!」
ガチャンッ!!
背後で扉が閉められ、重い施錠音が響く。
同時に、扉の向こうから木崎たちの汚い笑い声が聞こえてきた。
「ギャハハ! そこは『モンスターハウス』だ! 中のアンデッド共を引きつけておいてくれよなァ! 俺たちはその隙にレア宝箱の方へ行かせてもらうからよ!」
「せいぜい時間を稼げよ、Sクラスの落ちこぼれ共ォ!」
遠ざかる足音。
残されたのは、俺とリコ。
そして――
ゴゴゴゴゴゴ……
暗闇の奥から無数に浮かび上がる、赤く光る眼。
カチ、カチチ、と骨が鳴る音が広間に響き渡る。スケルトン・ナイト、ゾンビソルジャー、そして奥には中ボス級の『死霊魔導師』の姿。
その数、およそ100体。
「け、ケイ……これ、ちょっとマズくない!?」
リコが青ざめて俺の袖を掴む。
「私の拳じゃ、骨は砕けても霊体には効かないよ!?」
リコの『身体強化』は物理特化だ。物理耐性を持つアンデッドの群れは、相性最悪の相手。
普通なら絶体絶命。
だが、俺は懐中時計を取り出し、時間を確認した。
「……計算通りだ」
「え?」
「あの馬鹿たちがいては、お前の『真の力』を使えないからな。――好都合だ、リコ」
俺はリコに向き直り、その健康的なボディラインを舐めるように視姦する。
アンデッド特攻。神聖属性。
今のリコに最適な衣装は、一つしかない。
「リコ、脱げ」
「はい!? 今ここで!?」
「神聖魔力を全身の毛穴から放出するためだ。布面積は極限まで減らす必要がある」
「ま、また適当なこと言って! 絶対趣味でしょ!?」
文句を言いながらも、リコは俺を信じている。
迫りくるスケルトンの剣を避けながら、彼女は覚悟を決めた瞳で俺を見た。
「……信じてるからね、ケイ!」
俺は指を鳴らす。魔力が奔流となってリコを包み込む。
「――展開!」
光が弾ける。
無骨なリュックも、野暮ったい指定ジャージも消え失せた。
現れたのは――
紅白のコントラストが鮮烈な、『退魔の巫女服・改』。
だが、それは神社にいる巫女とは似て非なるものだった。
上衣は袖がなく、リコの白く滑らかな二の腕と、無防備な脇が完全に晒されている。
袴であるはずの下衣は、驚くほど丈の短いミニスカート仕様。
動くたびに、太ももに食い込む純白の紐がチラリと覗く。
「ひゃうっ!? す、涼しすぎるんだけど!? なんか脇とかスースーするし!」
顔を真っ赤にして身をよじるリコ。
その艶めかしい姿に、襲いかかろうとしたゾンビたちが一瞬止まった(ように見えた)。
「『神楽』を舞うには、腕の可動域と脚の自由度が必須だ。それに、その『脇』と『太もも』こそが、神気を大気中に散布する排熱口となる」
「絶対嘘だぁぁぁぁ!!」
叫びながらも、リコは踏み込んだ。
その瞬間、彼女の全身から眩いばかりの浄化の炎が噴き上がる。
「うりゃあぁぁぁッ!!」
リコが回転し、ミニスカートを花のように広げながら回し蹴りを放つ。
ただの蹴りではない。聖なる炎を纏った一撃は、触れただけでスケルトンを灰へと変える。
ドォォォォン!!
一撃で10体が消滅。
リコは止まらない。
舞うように、踊るように。
晒された脇や太ももが汗で光り、その美しさが聖なる力となって死霊たちを浄化していく。
「す、すごい……力が湧いてくる……!」
「そうだリコ。今の君は尊い。最高にエロ……いや、神々しいぞ!」
奥に控えていたリッチが悲鳴のような詠唱を上げるが、遅い。
リコは一足飛びで懐に入り込み、光り輝く掌底を叩き込んだ。
「悪霊退散ッ!!」
閃光。
部屋中のアンデッドが、一瞬にして光の粒子となって昇天した。
◇
数十分後。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
木崎たち3年生パーティが、命からがら扉の前に戻ってきた。
彼らは「レア宝箱」どころか、別の罠にかかって装備はボロボロ、ポーションも使い果たしていた。
「くそっ、あの1年共……どうせ中で食い殺されてるだろうが、荷物くらいは回収してやるか……」
木崎がニヤつきながら、鍵を開ける。
中には、無残な死体が転がっているはずだ。
ギギギ、と重い扉が開く。
そこにあったのは――
「あ、お疲れ様でーす。遅かったですね先輩」
山のように積まれた『高純度魔石』の上に座り、優雅にお茶を飲んでいる俺の姿だった。
そしてその横には、制服(戻した)に着替えたリコが、屈伸運動をしている。
「な……ッ!?」
木崎たちが目を見開き、顎が外れんばかりに驚愕する。
「て、テメェら生きて……!? い、いや、モンスターハウスはどうした!?」
俺は眼鏡を押し上げ、冷ややかな視線を彼らに向けた。
「ああ、魔物なら全部『掃除』しましたよ。先輩たちが逃げ回っている間にね」
「そ、そんな馬鹿な……! あそこにはリッチが……!」
「いましたねえ。まあ、うちのリコにかかれば雑魚同然でしたが」
リコがニカっと笑い、俺の肩に手を置く。
「ケイのおかげで楽勝でした! あ、この魔石、全部私たちが貰っていいですよね? 先輩たち、何もしてないし」
「ふ、ふざけるな! それは俺たちの成果だ!」
木崎が剣を抜こうとする。
だが、俺は一歩前に出て、彼のボロボロの剣先を指先で弾いた。
「おや? ギルド規定第4条。『パーティを意図的に危険に晒した際の救助費用は、加害者が全額負担する』。……今の会話、全部録音してますけど、聞きますか?」
俺が取り出したボイスレコーダーを見て、木崎の顔色が土気色に変わる。
学園側にバレれば退学処分は免れない。
「ひっ……!」
「さて。口止め料として、今回の報酬は全額頂きます。それと――」
俺は木崎の耳元で、楽しげに囁いた。
「今後、俺たちの邪魔をしたら……次は『掃除』されるのはアンタたちですよ?」
木崎たちは悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
「……あーあ。行っちゃった」
リコがつまらなそうに呟く。
俺はため息をつき、山積みの魔石(推定数百万イェン)をリュックに詰めた。
「帰るぞ、リコ。今日は焼肉だ」
「やった! ……でもさケイ」
「ん?」
「さっきの服……その、嫌いじゃなかったかも。ケイが喜んでくれるなら、また着てあげてもいいよ?」
上目遣いで頬を染めるリコ。
俺の心臓が一瞬止まりかけたのは、ここだけの秘密だ。
俺たちは、また一つ強くなり(そして懐も温まり)、地上への階段を登っていった。
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