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風鈴、夏撃ち、

作者: ネッしー
掲載日:2025/12/26

 僕は、この夏、羽目を外してみようと思う。あんまりこういうことはしたくはないんだけど、夏休みの宿題の多さは異常だ。真面目にやってきたこれまでが、なんだか馬鹿らしくなってきたので、あそこに吊るされている風鈴を破壊してみようと思う。いったい誰があそこに吊るしたのかはわからないが、チリンチリンと何度も耳障りで、生活に支障が出ているのだ。かと言ってここから動くのも納得がいかない。あいつはそこから動かずにこの僕のことをここまで苛立たせているのに、僕はあいつのことを仕留めるために動かなければならないというのか。そんなもの納得できるもんじゃない。

 ということで徒歩圏内、三歩は歩くことができた僕は、壁にかけられているショットガンを持ってきた。もちろんBB弾ではあるが、確実に未成年では買えない大きさの物だった。これは父の趣味であり、決して魅力的に感じているわけではない。ただ、打ってみたいなとは思っていたから、これは絶好のチャンスだった。

 風鈴にめがけて、乾いた音で僕は打った。弾は風鈴に真っすぐと伸びていった。夏休みの過ぎ去る時間の速さほどに、真っすぐ風鈴に当たって、風鈴に小さな亀裂が入ったのち、そこから四方八方にガラスが割れ伸び始める。夏の太陽の、痛々しい光がその亀裂の中で、縦横無尽に反射し合って輝いたのもつかの間、その時点で弾に当たった衝撃で大きく向こう側に風鈴は揺れた。そしてこちらに戻ってくるそのひと振りの間、世界のどこかで人が生まれて、人が死ぬその合間を縫う、その瞬間に、風鈴は粉々に割れ始める。風鈴の丸みを帯びた胴体が、ついて破壊によって、落とした卵のようにヒビを作って、黄身の代わりにように、あのチリンチリンと鳴る元凶の金属の棒が落ち始めた。大きく揺れた風鈴の、吊るしていた紐も、壁に打ち付けられた釘から外れて、ガラスに塗られた赤い金魚の絵が、上から下に落ち始める。吊るされて悠々に泳いでいた金魚は、ついに空気中へと羽ばたいて、地面へと落ちた。パリンと、音は鳴ったものの、風鈴の姿はもうなかった。割れた風鈴は、鋭利な凶器と化しており、今度は蝉の鳴き声を好き放題反射し始めて、音という空気中の波が、その風鈴だったものに当たって、僕の耳に入ってくる。

 風鈴ほどではないが、その蝉の声ですら僕は鬱陶しく感じ始めた。ショットガンをもう一度外に向けて、今度は外の木に張り付いている蝉に向けて、僕は発砲した。


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