第99話 第二試練――幻影砂嵐の迷宮
砂の大地が揺れる。
空が濁り、風がざわめき、砂が渦を巻く。
数秒後には――
世界そのものが“砂嵐の壁”に変わった。
視界は完全に奪われ、音すら歪む。
リアが叫ぶが、声が届かない。
ラウルの姿も見えない。
ミナはひとり――砂の中にいた。
胸が締め付けられる。
(……これ、ただの嵐じゃない。)
足元の砂が波紋のように揺れ――
影が形を取り始める。
冷たい風が囁く。
「――試練開始。」
◆▶ 幻影① ――過去
ミナの前に現れたのは――
かつての街、研究所、実験室。
檻。
拘束具。
監視者の目。
怯えた幼い自分。
「……やめて。」
小さなミナ(幻影)が泣きながら言う。
「逃げても捕まる。
誰も守れない。
誰も信じられない。
どうせ……奪われる。」
ミナは胸を押さえる。
心拍が痛むほど速い。
でも――下がらない。
「違う。」
幻影の少女が震える。
「違わない……
だって――私はずっと……!」
ミナは静かに言葉を重ねる。
「確かに苦しかった。
孤独だった。
怖かった。」
一歩、前へ。
「でも――私は今、ひとりじゃない。」
幻影が崩れ、砂へ溶けた。
◆▶ 幻影② ――罪悪
次に現れたのは――
敵兵。
拘束された研究者。
倒れた人々。
声が響く。
「お前の力が原因だ。」
「存在そのものが争いを呼ぶ。」
「いなければ誰も死ななかった。」
胸に突き刺さる言葉。
沈むような重さ。
だが――ミナは言い返した。
「もし私が誰かを傷つけたなら、
その責任から逃げたりしない。」
涙が落ちる。
「でも……だから“奪われてもいい”なんて思わない。」
砂の幻影が崩れる。
◆▶ 幻影③ ――未来
最後に現れたのは――
黒い影の自分。
強い。
冷たい。
何も感じていない。
幻影ミナが言う。
「優しさは弱さ。
情は鎖。
ためらいは死。」
ミナは言った。
「その気持ち、わかる。」
影が動きを止める。
ミナは続ける。
「強くなりたい。
守りたい。
失いたくない。」
影が震え――怒涛の魔力を解き放つ。
「なら証明しろ!!!」
◆▶ 幻影 vs 本体 ——戦闘
砂嵐が戦場へ変わる。
ミナは魔力を展開する。
共鳴ではなく――
意図を持った力。
幻影ミナが突撃。
速い。
冷酷。
躊躇がない。
ミナは回避し、手を伸ばす。
「力は奪うためじゃない!!
――繋ぐため!」
魔力が激突し、光が弾ける。
幻影が叫ぶ。
「弱さが足を引く!!!」
ミナ叫ぶ。
「弱さがあるから――立ち上がれる!!!」
最後の瞬間。
ミナは幻影を抱き締めた。
幻影は抵抗し、震え――
やがて崩れ、光となる。
その光がミナに吸い込まれる。
◆▶ ミナの進化
風が止まる。
そして――世界が静かに戻った。
ミナの目が開く。
瞳の奥に、
新しい魔力の紋様――“識別紋”が浮かんでいた。
リアの声が聞こえる。
「ミナ!?
……成功したんですか?」
ミナは静かに頷く。
「うん。
迷わなかった。」
砂が動き、地面から第二の鍵――
**“心紋石”**が姿を現した。
ラウルが叫ぶ。
「よっしゃあ!二つ目!!」
カイルは静かに言った。
「次が最後だ。」
リアは息を呑む。
「三つ目は――
“魂の扉”。
最も危険で……戻れなくなる可能性がある。」
ミナは一歩、砂海の奥へ向く。
「それでも、行く。」
風が彼女の髪を揺らす。
“選ばれるんじゃない。
――選ぶんだ、未来を。”
四人はさらに深く、砂の迷宮へと進む。
──第100話へ続く




