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第94話 英雄殺し vs 守護剣――開戦

空気が震える。

仮面の男から放たれる魔力は、まるで“殺意そのもの”。


リアが叫ぶ。


「全員――下がって!!

これはミナ単体ではなく、カイルの階層試験!!」


ラウルも前へ出たが、

カイルが片手で制した。


「俺ひとりでいい。」


ミナが震える声で言う。


「……カイル、無茶は――」


「無茶じゃない。

必要だ。」


その声は静かで、迷いがない。

まるで――戦うことが予定されていたかのように。


仮面の男が動く。


「開始。」


瞬きの速度で距離が消える。

刃が空を裂き、カイルへ吸い込まれるように走る。


キィィィィン!!!!


火花。

金属が悲鳴を上げる。


二人の動きは速すぎて、観客には残像しか見えない。


ラウルが舌打ちする。


「やべえ……あれ、“見えるやつしか見えねぇ”速度だ。」


リアは計測魔法を展開しながら震える。


「反応速度差……0.04秒以内。

互角――いえ……違う。」


ミナ「違う……?」


リア「互角じゃない。

“合わせている”。」


ミナの瞳が揺れる。


(カイル……本気じゃないの?

それとも……敵が本気じゃない?)


その答えは次の瞬間に出た。


◆第二段階――仮面の男、本気


仮面の男の魔力密度が跳ね上がる。

靴底が大地を砕き、空間が波打つ。


「適合。

では――第三速度帯へ移行。」


ドンッ!!!!


大気が爆ぜ、カイルが吹き飛ばされた。


ミナ「――カイル!!!」


カイルは地面を滑りながら剣を突き立て体勢を止める。


背中に走る激痛。

喉が焼ける。


だが――顔には笑みが浮かんでいた。


「ようやく……“戦い”になった。」


仮面の男が問う。


「何を笑う?」


カイルはふっと息を吐き、


「楽しいとは違う。

――ただ、“俺が必要だ”と言われた気がした。」


ミナの胸が熱くなる。


(カイル……

あなたはずっと……

誰かのために戦う理由を探してたんだ……)


◆第三段階――剣技解放


仮面の男が技名を告げる。


「断界術式――《零消ゼロシェイド》」


影がカイルの身体を切り裂く軌道で迫る。


避けられない。

防げない。

普通なら。


だが――


カイルは剣を横に滑らせ、

軽く叩くように受け流す。


――ッ!?


リアが叫ぶ。


「流し受け……!?

重量攻撃を受け止めるんじゃなく、

攻撃そのものの“意思”ごと逸らした……!」


仮面の男の声が低くなる。


「読み切ったのか。」


カイルは剣を構え直し、劇的に気配が変わる。


空気が一点にまとまる。


風が止み――

音が消え――

世界が沈黙する。


ミナが息を飲む。


(これ……前にも見た。

でも……今は違う。)


カイルは呟く。


「――守るためじゃない。

今は、“勝つための剣”。」


そして叫ぶ。


◆カイル奥義


「《滅閃一刀――虚断こだち》!!」


一閃。


その瞬間――


仮面の男の動きが止まった。


刃が触れたわけではない。

血が流れたわけでもない。


ただ――


男の魔力核だけが、断ち切られていた。


仮面の男は膝をつく。


剣は折れていない。

鎧も傷ついていない。


しかし――戦闘能力だけが消えている。


静寂。


そして、仮面の男が呟く。


「……見事。」


もう戦う意思はない。


彼は立ち上がり、宣告する。


◆判定


「――守護者認定。

カイル・アルヴァート。

“独立者専属剣士”として世界に登録。」


リアが息を震わせる。


ラウルが叫ぶ。


「……っしゃああああぁぁ!!」


ミナは涙をこぼしながら笑った。


「……カイル、おめでとう。」


カイルは剣を収め、振り返り――


ほんの少しだけ照れくさそうに微笑んだ。


「ありがとう。

……ミナ。」


その瞬間、空に紋章が刻まれる。


世界は――二人を正式に認めた。


──第95話へ続く

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