第91話 決戦――ミナ vs アリア
リングに立つ二人の少女。
空気は張りつめ、
誰も声を出さない。
ただ風だけが、
二人の間を静かに通り抜けた。
アリアが口を開く。
「ミナ。
あなたの望みは尊い。
でも――世界は理想だけで救えない。」
ミナは拳を握り、答える。
「それでも……誰かの“従属”や“所有”じゃなく、
“選ぶ自由”があっていい。」
アリアの表情が痛む。
「自由は、時に人を壊す。」
ミナの声は震えず、ただ真っ直ぐ。
「なら――檻に閉じ込めてもいいの?」
アリアは目を伏せ、
そしてゆっくり顔を上げた。
その瞳には涙ではなく――
信念。
◆戦闘開始
アリアが手を掲げる。
光が形を取り、魔法陣が展開する。
「聖式魔術――第七旋律《天鐘》」
――カアンッ!!!!
空間ごと震える衝撃音。
衝撃波がミナに迫る。
カイルが動こうとする――が。
ラウル「ちょっと待てカイル!これは……!」
リア「第三試練……**“ミナ単独戦”**です。
介入すれば失格。」
カイルは拳を握りしめ、止まった。
◆ミナ、防御
ミナは息を吸い、
胸へ手を当てる。
「聞こえる……
この魔術の奥にある感情。」
共鳴発動。
――ッ!
衝撃波が来る。
だがミナは後退せず、一歩踏み込む。
風が巻き、魔力が揺らぎ、
攻撃が意図からズレる。
アリアが目を見開く。
「……干渉した……?」
ミナは言う。
「攻撃じゃない。
“止めたい”って気持ち。」
アリアの拳が震える。
◆第二撃――拒絶の剣
アリアは祈りを捧げるように呟く。
「……ごめんね。」
光が剣の形をとり、
アリアの手に収束する。
「聖式刃術――《断罪のレクイエム》」
斬撃が空を裂き、
雷のような閃光が走る。
ミナは回避しながら言葉を重ねる。
「どうしてそこまで……!」
アリアは叫ぶ。
「ミナ、あなたは優しすぎる!!
世界は優しさを踏みにじる!!
あなたはいつか壊される!!」
斬撃が降り注ぐ。
火花のような光がリングを焼く。
ミナはひとつひとつ避け、
しかし逃げず、前へ進む。
◆言葉の衝突
アリア「間違った自由は罪!
傷つける自由なら存在しない方がいい!」
ミナ「自由は間違えることも含めて自由だよ!」
アリア「なら――傷つく人はどうするの!?」
ミナ「傷ついた人が立ち上がれる世界を作る!!」
アリアの動きが止まる。
その瞬間、ミナが距離を詰める。
アリアは反射的に剣を振る――
しかし。
ミナはその手を、そっと掴んだ。
◆沈黙
リングは静まり返る。
ミナの声は震えていた。
「アリア……
わたしは、あなたを敵だと思ってない。」
アリアの瞳が揺れる。
ミナは続ける。
「あなたはわたしを守りたかったんでしょ。
間違っても、傷ついても、立ち止まってもいいように。」
アリアの表情が崩れる。
ミナは微笑んだ。
「――ありがとう。」
その言葉は剣より鋭く、
祈りより強く届いた。
アリアの膝が崩れる。
剣は光に還り、消える。
◆結果
観客席。
静寂。
そして――
ひとりの研究者が呟く。
「……勝ったんじゃない。
“折らなかった”んだ……」
別の者が続ける。
「暴力でも服従でもなく……
互いの意思を残したまま決着がついた……?」
フェリクス(帝国)は満足げに頷く。
クロード(王国)は複雑な表情で腕を組む。
聖職者たちは震える声で祈る。
◆アリアの言葉
ミナに顔を上げたアリアは、
涙を浮かべながら微笑んだ。
「……負けた。
でも悔しくない。
だって――」
震える声で続ける。
「あなたはちゃんと、自分で立ってた。」
ミナも笑った。
――その瞬間。
白い旗が掲げられる。
審判の声が響く。
「第三試練――完了。
ミナ・シュメール、承認。」
リングの中央で立つミナは――
もう、
誰にも所有されず。
誰にも決められず。
自分の足で、世界に立っていた。
──第92話へ続く




