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第89話 独立者に向けられる視線――支持、警戒、そして…影

返答の儀から半日。

蒼紋都市の空気は明確に変わっていた。


街を歩けば、視線が向く。


ただの興味ではない。

ただの噂でもない。


**“これは歴史になる”**と気づいた者の目だ。


ミナは歩きながら、静かに胸に手を当てる。


(あの日まで、わたしは“守られる側”だった。

今は……違う。)


隣でラウルが笑う。


「おーいミナ。顔、怖くなってきたぞ?

眉間にしわ寄せると“高貴な戦乙女”って扱いになる。」


リアが即座に訂正する。


「実際そう見られています。

特に“独立者”は世界で数名しかいませんから。」


ラウル「え、そういう確認いらなかったんだけど!?」


カイルはいつも通り無言。

だが歩幅が半歩前――“護衛の意図”から“並び立つ意思”へ変わっている。


◆街中の反応


市場に差し掛かった瞬間、声がかかった。


「ミナさん!」


振り向くと――昨日声をかけた学院生が立っていた。

今日は怖くなさそうな笑顔だ。


「独立宣言……かっこよかったです!

あなたみたいになりたいって人、きっと増えます……!」


ミナは照れながら微笑む。


「ありがとう。

……でも、真似はしなくていいよ。

自分で選べるなら、それが一番。」


学生はその言葉に息を呑み、深く頭を下げて走り去る。


リアが柔らかく言う。


「影響力の初期症状ですね。

“言葉が届く相手”が生まれました。」


◆噂の壁


次に耳に入る声は――支持ではない。


「勝手に宣言して自由とか……責任とれんのか?」

「帝国にも王国にも従わないなんて危険だ。」

「世界の均衡を乱す存在……?」


ミナは足を止める。


胸に刺さる。でも、逃げない。


カイルが静かに言う。


「恐れるな。

評価は責任の証明だ。」


ミナは息を吸い、前を向いた。


(そう。

嫌われても、疑われても――“選んだ”以上歩く。)


◆そして――新たな影


広場に出た瞬間、空気が変わった。


ざわめき。

何かを待つ気配。


人々の視線が一方向へ向く。


リアが低く囁く。


「……来ましたね。」


広場の中央に立つ人物――

黒衣でも鎧でもない。


白い法衣。


美しい銀髪。

整った顔立ち。

冷たくも優雅な存在感。


教会でも王国でもない。


ラウルが息を飲む。


「……あいつ……

まさか――」


リアが頷く。


「“調停者”――第三勢力。」


その人物はミナへまっすぐ歩み寄り、

礼儀正しく頭を下げた。


「はじめまして。

独立者――ミナ・シュメール。」


ミナは疑問を込めた声で返す。


「……あなたは?」


人物は微笑む。


その笑みは温かく見えるのに、

底は深すぎて読めない。


「我々は“選ぶ者”ではない。

はかりに乗せる者”だ。」


ミナの心臓が跳ねる。


人物は宣言した。


◆調停者の宣言


「あなたの独立は受理された。

ゆえに、今後あなたの行動・意思・決断――

すべて、世界の均衡に影響する。」


静まり返る広場で、その言葉は鐘のように響く。


「よって、我々はあなたを監視し、

必要なら助け、

必要なら止める。」


ミナは揺るがず問う。


「……それは、脅し?」


人物は笑う。


「いいえ。

――“期待”です。」


そして、ひとこと。


「世界はもう、お前を放っておけない。」


沈黙。


その言葉は、昨夜の暗殺者と同じ。

だが意味が違う。


片方は排除の声音。

今の声は――“認定”。


人物は最後にこう告げた。


◆新たな立場


「本日より――

ミナ・シュメール。

あなたは“世界観測対象A”として登録される。」


リアが息を呑む。


「……最高位。

国家・世界規模の存在と同等……!」


ラウルが素で叫ぶ。


「やば……ミナ、もう後戻りできねえやつじゃん……!」


カイルはただ一言。


「誇れ。」


ミナは静かに胸へ手を添える。


震えはある。

怖さもある。


でも――


「……うん。

わたしは、わたしとして歩く。」


人物は満足げに微笑み、告げる。


「では――試練の準備を。」


ミナの目が見開く。


(試練……?

また選択……?)


人物は静かに言った。


「自由には代償がある。

――それを証明せよ。」


そう言い残し、白い影は消えた。


ミナは息を吐く。


そして――笑った。


「……じゃあ。

次は証明の番だね。」


カイルが隣で歩み出す。


「戦いだ。」


──第90話へ続く

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