表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/230

第87話 動き始める牙――狙われた瞬間

返答の前夜。

蒼紋都市の空は不気味なほど静かだった。


カイル・リア・ラウル・ミナは宿を出て、

いつものように夜風に触れながら歩いていた。


リアが確認する。


「帝国・王国・教会――すべて返答期限は明日。

明日、世界が正式に“あなたの立場”を記録します。」


ミナは小さく息を吐いた。


「……うん。決めなきゃ。」


ラウルが空気を軽くしようとする。


「肩に力入れんなよ。明日死ぬわけじゃ――」


その瞬間。


空気が切れた。


夜風ではない。

意識ごと断ち切るような――殺気。


カイルが即座に前へ出る。


「伏せろ。」


ミナたちが身を低くした刹那――

闇から影が降りてきた。


着地音ひとつなく現れたその存在。

黒い布。無音の呼吸。魔力の流れなし。


リアが低く呟く。


「……“抹消部隊サイレンサー”。

世界の裏側……教会の処理部門……」


影の人物は一言だけ告げた。


「対象:ミナ・シュメール。

存在価値、観測により上昇。

――排除対象へ変更。」


ミナの背筋が凍る。


(排除……?

理由は……評価が上がったから……?)


サイレンサーの声音は冷たく正確。


「選ばれる前に消す。

それが――均衡。」


その瞬間、戦いが始まった。


◆カイル vs サイレンサー


黒影が瞬きの速度で迫る。


ミナの前に出るより早く、

カイルの剣が火花を散らす。


キィィィン!


鋼と鋼ではない。

殺意と“守るという意思”の衝突音。


サイレンサーは跳躍、回転、滑走――

重力を拒む動きで背後へ回り込む。


しかしカイルはすでに読んでいた。


「遅い。」


斬撃。

空気が裂ける。


だが――サイレンサーはその一撃すら“予定のように”避けた。


「守りの剣。

読みやすい。」


カイルの眉がわずかに動く。


ラウルが叫ぶ。


「相手、完全にお前の型読んでやがるぞ!!」


◆リアの分析・ラウルの乱撃


リアが高速で魔法陣を展開。


「拘束術式・六式――固定!」


光の鎖が地面から伸び、サイレンサーを捕らえようとする。


だが――


ふっ。


呼吸ひとつで鎖が消える。


リアの声に焦りが混じる。


「……精神領域拒絶……!?

術式を”存在ごと拒否”してる……!」


ラウルが飛び込む。


「なら殴る!!」


拳が轟きを生むほどの速度で突き出される。


ズドォッ!


だがサイレンサーは腕に触れず、

ラウルの力を利用して軌道を崩す。


「物理も、単調。」


ラウルが舌打ちしながら笑う。


「おい待て、褒めてんのか馬鹿にしてんのかどっちだ!!」


◆標的――ミナ


サイレンサーの視線がミナへ戻る。


「本命はお前。」


足音も風もなく動き、

ミナの喉へ短剣が一直線に伸びる。


ミナの体が反射的に固まる。


(怖い――!)


その瞬間。


――目の前に腕が伸びた。


カイルだ。


ミナと刃の間に立ち、受け止める。


血が一筋落ちる。


ミナの目が強く震える。


「やめて……やめて!!

誰も傷つけたくない!!!」


叫びが夜に響く。


サイレンサーの動きが止まる。


ミナの声が震えながら続く。


「わたしは……消えるために生きてるんじゃない!

誰かの都合で価値を決められるためでもない!!」


サイレンサーの瞳に――小さな、しかし確かな揺らぎ。


ミナの力が発動する。


感情共鳴シンパシー


世界がわずかに静かになる。


サイレンサーの足が止まった。


短剣が下がる。


口からかすれた言葉が零れる。


「……なぜ……声が聞こえる……

拒絶したはず……なのに……」


ミナは一歩踏み出す。


怖い。

足が震える。

でも止まらない。


「あなたも……選ばされてきたんだね。」


サイレンサーの喉が震え――

初めて、人間の声になる。


「……救われたくなんか……なかった……」


ミナの瞳は優しく、しかし強かった。


「うん。

でも――救われていい。」


その瞬間。

サイレンサーの手から短剣が落ちた。


カラン…


夜風だけが音を運ぶ。


カイルの肩に手を置いたミナは、

静かに息を吸い、告げた。


「わたしは逃げない。

選ぶよ――わたしの意思で。」


そしてサイレンサーは、掠れた声で呟いた。


「……なら……世界は……お前を放置しない……」


その言葉を残し――闇へ消えた。


ミナは震える手を握りしめながら言った。


「……次は、交渉じゃなくて答え。

わたし――決める。」


夜が深まる。


嵐の前の静けさ。


──第88話へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ