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第54話 雨音の中の再会――“忘れられた名前”

夜。

レミアの空から雨が落ち、石畳を濡らしていた。


宿の部屋。

ミナは机に向かい、薄い紙に震える文字で練習していた。


“選ぶ。”

“怖くても進む。”


自分に言い聞かせるための言葉。


そのとき。


――トン、トン。


扉が静かに叩かれた。


カイルが剣に触れながら問う。


「誰だ。」


沈黙。

そのあと、聞き覚えのある柔らかい声。


「……ミナ?

わたしだよ。覚えてる?」


ミナの手が止まった。


リアが息を呑む。


ラウルが眉をしかめる。


ミナは立ち上がり――扉に手を添えた。


震えた声で尋ねる。


「……まさか……

アリア……?

ほんとうに……?」


扉の向こうで、少女は柔らかく笑う声をした。


「うん。

ミナ、会いに来たの。」


その声は懐かしくて優しい。

けれど――その優しさの奥に、違う響きがある。


雨が、音を強める。


カイルが低く言う。


「ミナ。

扉を開けるかどうかは――お前が決めろ。」


ミナは息を吸い、目を閉じた。


そして――


扉の鍵が、静かに外された。


物語が、動き始める。


──第55話へ続く

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