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第35話 未来を掴む刃 ――守るための戦い

第四層へ踏み入れた瞬間、空気が一変した。


先ほどまでの静謐さとは違う。

鋭く、冷たく、戦場の空気だ。


床は黒い金属、壁は紋様の刻まれた鋼鉄。

天井から吊り下がる無数の光柱が、戦場を照らすように赤く脈打っている。


ミナが息を呑む。


「……ここだけ、別の場所みたい……」


ラウルが周囲を警戒しながら答える。


「この気配……“武器を持つ者を拒まない”空気だ。

 つまり――戦う前提で設計されてる」


リアが剣を抜いた。


「来ます。何かが……こちらに近づいて――」


その瞬間、床が震えた。


重い金属音。歩くというより――踏み砕く音。


闇の奥から姿を現したのは、


人型の戦闘機兵――

“古代文明の戦装兵ガーディアン”。


高さ三メートル。

甲冑のような装甲、魔術式の核が胸に埋め込まれている。


ミナが震える声を漏らす。


「……あれ、生きてるんじゃなくて……動いてる……?」


カイルが即座に判断する。


「魔力駆動式、想定戦力ランクA。

 単体でも町一つ壊せる。油断するな」


リアが深呼吸し、構え直す。


ラウルも短剣を抜いた。


戦装兵が赤い光を発し、地面を砕きながら突進する。


リア「来ます!!!」


◆◆◆


戦闘開始。


リアが先頭で受け止める。


甲高い衝撃音。剣が火花を散らし、リアの体が押し返される。


リア「っ……重い! でも……止めます!!」


戦装兵の腕が振りかぶられる――


だが次の瞬間、カイルが無詠唱で魔法を撃つ。


「《重力崩落グラビティ・スナップ》」


空間が歪み、戦装兵の動きが鈍る。


リア「助かります!!」


ラウルがその隙を逃さず背後へ回り、

接合部に短剣を突き立てた。


「ここが弱点だろ……!」


金属が裂け、戦装兵がわずかにひざを折る。


だが――


胸部の核が赤く燃え上がり、反撃が来る。


戦装兵「――排除」


巨大な衝撃波が発生し、ラウルが吹き飛ぶ。


ラウル「っぐ……!!」


ミナが叫ぶ。


「ラウルさん!! 回復魔法ヒール・サークル!!」


淡い光がラウルを包み、傷と呼吸が安定する。


ラウル「助かった……!ミナさん、いいタイミング!」


ミナは震えながら、しかし目は強い光を宿していた。


「守られてばかりじゃない……わたしも“戦う”って決めたんです……!!」


リアは剣を構え直し、叫ぶ。


「カイルさん!!核を壊せば止まりますか!?」


「ああ。ただし――通常魔法じゃ通らない。

 ミナの魔法と俺の術式を“重ねる必要がある”」


ミナが息を呑み、俺を見る。


「……合わせられますか?」


「できる。

 ミナなら――合わせられる」


その瞬間、ミナの表情が変わった。


不安ではなく――信頼。


「じゃあ……いきます。

 カイルさん――わたしの魔法、受け取ってください」


ミナの杖に光が集まり、魔力が花のように開く。


「《未来紡ぎの結界フォーチュナ・リンク》!」


光の糸のような魔力がカイルへ向かう。


それをカイルが魔術式に組み込み――宣言する。


「――融合術式展開。

破滅同調式アポカリプス・ハーモニー》」


空間が震え、

ミナの優しい魔力とカイルの禁忌の魔力が共鳴する。


戦装兵の胸部核が反応し、叫び声のような金属音を上げた。


リアが最後の道を切り開くように叫ぶ。


「今です!!」


カイルとミナが声を揃えて放つ。


《――砕けろ!!》


黒と白の光線が融合し、戦装兵へ叩き込まれる。


轟音。

閃光。

核が砕け、機体が崩れ落ち――沈黙した。


◆◆◆


静寂。


ミナは膝に手をつき、息を整える。


「はぁ……っ……すごい……最後……少し怖かったけど……」


リアが笑顔で肩に手を置く。


「怖くても進んだんです。

 それが強さですよ、ミナさん」


ラウルも笑う。


「もう完全に戦力だな。心配いらねぇ。頼もしいよ」


ミナは照れながら、俺を見る。


カイル「よくやった。完璧だった」


ミナ「……わたし、ちゃんと役に立てましたか?」


「――ああ。

 お前がいなきゃ勝てなかった」


ミナの顔が一気に赤くなり、視線をそらした。


「っ……そんな言い方……反則です……」


リアがくすっと笑う。


ラウル「おいおい甘すぎてむず痒いんだが?」


ミナ「あっ、違っ……! そういう意味じゃ――」


カイル「そういう意味で合ってる。」


ミナ「~~~~っ!!!」


そのやり取りに、遺跡の光が優しく揺れる。


まるで――

“その未来を選んだことを祝福する”かのように。


そして、奥の扉が静かに開いた。


第四層は突破された。


ここから先は――

選んだ未来へ進む戦い。


運命に従う道ではなく。

運命を創りに行く道。


──第36話へ続く。

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