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第25話 地下水路の追撃戦──震える手で掴んだ光

夜の冷気が流れ込む石造りの階段を駆け降り、

4人は薄暗い地下水路へと身を潜らせた。


水路は湿気と冷気に満ちているが、

上の包囲網よりは遥かにマシだった。


ミナが息を切らしながら囁く。


「はぁ……はぁ……

 こんなに走ったの初めてです……」


リアはミナの肩を支えながら進む。


「大丈夫です。あと少しで森へ出られます」


しかし――その矢先。


背後から響く金属の擦過音。


「来てる……!」


ラウルが絶望した顔で振り返った。


「地下水路にまで追手を投入しているなんて……

 本気で“逃がす気がない”……!」


暗闇の奥から灯火が揺れ、

武装した兵と暗殺者たちの影が見える。


だけではない。


魔術師、弓兵、そして――教会の魔導騎士。


ミナの顔が真っ青になる。


「……どうやってこんなに早く……」


カイルは視界と気配から読み解いた。


「嗅覚追跡魔法だ。“匂い”でたどってきている」


リアが舌打ちした。


「なんて厄介な……!」


ミナは必死に頭を巡らせる。


「な、なら……わたしの匂いを消せれば……!」


カイルは一瞬だけミナを見て、そして頷いた。


「できる。戦いながらでも可能だ。

 だが――時間が必要だ。」


リアは迷わず叫んだ。


「時間は私が稼ぎます!!」


ミナは目を見開く。


「だ、だめ! リアさんひとりじゃ――!」


リアはミナを強く抱きしめるように肩を掴み、優しく言った。


「ミナさんは生きたいって言ったでしょう?

 だったら、その未来を掴むために戦って」


ミナの瞳に涙があふれながら、燃えるような光が宿る。


「……っ……はい!!」


カイルは指を鳴らす。


「リア、前線。ラウル、後衛から弓。

 ミナは俺の背に立て」


「はい!!」


陣形が一瞬で整う。


水路の曲がり角を回った瞬間――

追手がなだれ込んできた。


叫び声も、威圧も、容赦もない。


「鍵を確保しろ!!」

「抵抗すれば殺せ!!」


リアは飛び込んできた重装兵の盾を下から弾き、逆手の一閃で切り裂く。


「通さない!!!」


刃が光の軌跡を描き、敵の前列が崩れる。


ラウルの矢が後列の魔術師だけを正確に射抜き、詠唱を止める。


「魔法を撃たせるなぁっ!!」


ミナは震える手で杖を構え、声を張り上げる。


「リアさんに加速! ラウルさんに命中強化!!

 ――《支援連鎖ソーサー・コンボ》!!」


魔法陣が二人の足元に広がり、相乗的に効果が連鎖する。


リアの剣が速く、重くなり、

ラウルの矢は空気を裂くほど一直線に飛ぶ。


追手の波が押し寄せる――


だがミナは逃げない。


「みんなを守る……!!」


震えた声が叫びに変わり、叫びが力に変わる。


同時に、ミナの魔法陣の輝きが強まり――


ふっと色が変わった。


リアもラウルも息を呑む。


「ミナさんの魔法……今の……!」


ミナ自身も驚いている。


「わ、分からない……でも……

 もっと強く届けたいって思ったら……勝手に……光って……!」


カイルが振り返り、確信する。


「潜在能力が動き出しただけだ。

 ――嬉しがるのは戦いのあとにしろ」


背後から向けられる敵の魔術。


カイルが無詠唱で対処する。


指先で、軽く弾くような動作。


「《魔力分散ディスパージョン》」


魔術弾が霧散し、敵の詠唱が強制的に中断される。


水路の戦場は完全に3人の領域になっていた。


リアは剣を突きつけるように叫ぶ。


「ミナさんの未来は、ミナさんが掴む!!」


ミナは涙を拭いながら叫び返す。


「リアさんとカイルさんと一緒なら、絶対掴めます!!」


その言葉が引き金になったかのように――

魔導騎士が突撃してきた。


鎧を魔力で覆った、強敵。


リアとラウルの攻撃すら通らない。


水路全体が圧迫されるほどの威圧。


だがミナは震えながらも、もう逃げなかった。


「カイルさん……お願いします……!

 わたし……みんなを守れる魔法を……撃ちたい……!!」


カイルは短く、力強く答える。


「なら、届け。俺が護る」


ミナは決意の息を吸い――


杖を突き出す。


「――みんなを守る力!!

 《護界結界プロテクト・フィールド》!!」


まばゆい光が爆ぜ、

巨大な半球状の防御結界が展開。


魔導騎士の突撃を真正面から受け止め、

水路の床に衝撃が響く。


リアとラウルがその隙に全力で攻撃を叩き込み、

カイルが魔導騎士の魔力を断ち切る。


敵はついに、音を立てて倒れた。


水路が静寂を取り戻す。


ミナは崩れ落ちそうになりながらも笑った。


「わたし……守れました……!!

 みんなを守る魔法……ちゃんと撃てました……!」


リアとラウルが抱きしめるようにミナを支える。


「すごいですミナさん!!」

「おまえは誇っていい!!」


カイルも歩み寄って言う。


「よくやった。

 これで“守られるだけ”じゃない。

 ――立派な仲間だ」


ミナは泣き笑いしながら、胸の奥から声を絞った。


「大好きです……!

 この旅も、みんなも、自分の未来も!!!」


水路に響く涙と笑い声。


傷だらけで、ボロボロで、必死で。


でも、この戦いは3人の絆を確かに強くした。


そしてその光は、

世界を変えるほどの力へ育っていく。


——第26話へ続く。

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