表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

220/265

第220話 突入――一点集中

合図は来なかった。

代わりに、距離が一気に詰まった。


霧の切れ目、正面。再編された隊が動く。数は九。多くない。だが、歩幅が揃い、間合いが一定。無駄がない。中央に一人、左右に三、後衛に二。突入点は一つ。時間を切って来た。


カイルは前へ。背中を見せない。

ミナの合図は低く、短い。配置が閉じる。


中央が来る。二歩。三歩。刃が上がる前に、カイルが入る。肩で当て、重心を外す。倒さない。立たせない。左右が同時に踏み込む。狙いは脚。カイルは体を沈め、間合いを消す。肘。腹。呼吸が止まる。半拍で体を回し、もう一人の足を払う。地面。


後衛が投擲。角度が鋭い。カイルは止まらない。前進で距離を潰し、腕を叩き落とす。武器が散る。残る一人が合図を切る。退く合図だ。


だが、まだ終わらない。左右の三が入れ替わり、第二動作。連携は切れていない。ミナの揺らぎが走る。踏み込みが揃わない。半拍。十分だ。カイルは一点へ。合図役の前。拳。腹。息が止まる。合図が消える。


一気に崩れる。

撤退。

追わない。


時間は短い。

数十秒。


倒れた者は起き上がり、歩いて戻る。誰も追わない。実例が残る。それで足りる。


静寂。

境界の外で、誰かが深く息を吐く音。評価は終わった。


ミナが言う。「これで?」。

カイルは首を振る。「切り替えた」。攻めは終わり、防ぎは続く。相手は学んだ。無駄は省かれ、勝てない形は捨てられた。だから、次は来ない。


村へ戻る。報告は一行。「一点集中、停止」。帳簿が閉じられる。肩の力が抜ける。だが、線は引いたままだ。


夜、境界杭の前。

今日は拳を使った。

明日は使わないかもしれない。


それでも同じだ。

越えなければ止めない。

越えたら止める。


戦いは終わった。

この形では。


ーー第221話に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ