表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/254

第218話 沈静――連戦の余波

包囲が解けた翌朝、村は静かだった。

静かすぎる、という種類の静けさだ。


見張りの交代は滞りなく、境界の外に目立った動きはない。だが、誰も油断していない。連戦の後に来るのは、反撃ではなく空白だ。空白は判断を鈍らせる。だから、動かない。


ミナは帳簿を閉じ、集会を短く切り上げる。共有するのは三点だけ。外の動き、物資、休息の割り振り。反省会はしない。反省は個別にやる。全体でやると、疲労が広がる。


負傷者はいない。だが、疲労はある。護衛役の肩、見聞役の足、連絡役の喉。致命ではない。続けられる範囲だ。リアが見回りの間隔を伸ばし、セリアが短時間の仮眠を組み込む。回復は計画的に入れる。


昼、外組が動かない代わりに、点検が入る。柵、杭、足跡。変化は少ない。だが、森の縁に残る踏み跡が示す。様子見に切り替わった。戦いは、形を変えた。


午後、単独の使いが来る。武器はない。境界の外で止まり、紙を掲げる。「通行の再開」。条件は曖昧だ。ミナは紙を受け取らない。返事は一言。「状況次第」。理由は言わない。状況は、こちらが作る。


夕刻、カイルは境界杭に手を置く。今日は拳を使っていない。だが、最も重要な仕事をしている。立っているだけだ。立つ位置、視線、距離。動作が、判断になる。


ミナが隣に来る。「静かな方が、怖いですね」。カイルは頷く。「だから、回す」。疲労を回し、判断を回し、役割を回す。止まらないために。


夜、焚き火の前。短い会話が交わされる。誰も戦いの話をしない。明日の作業、食事、交代。日常を戻す。それが、勝ち負けより重い。


遠くで、鳥が鳴く。

近くで、風が動く。

今日は、来ない。


だが、線は引かれたままだ。

越えなければ止めない。

越えたら止める。


戦いは減った。

消えたわけじゃない。

次に来る形を、待つだけだ。


ーー第219話に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ