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第217話 崩れ――内側から裂ける

包囲は、静かに軋んだ。

原因は外じゃない。内側だ。


夜半、境界の外で言い争いが起きる。声は抑えているが、間が合っていない。補給が足りない、待ちが長い、成果がない。刃は抜かれないが、不満が抜け始めた。カイルは動かない。動けば、結束を作ってしまう。


やがて一人が踏み出す。偵察ではない。苛立ちだ。越えた。

カイルが出る。

一歩。

体当たり。

重心崩し。

立たせない。

短時間。終わり。


引き金になった。周囲がざわつき、隊形が乱れる。そこへ別方向から四。連携がない。カイルは前へ。最短で二人を止め、残りは距離を取る。追わない。戻す。見物が増える。評価は一気に傾く。


包囲の端で、別の小競り合い。指示が食い違い、待ち伏せが失敗。刃が交差する前に、撤退が始まる。命令が届いていない。内側の線が切れた合図だ。


夜明け前、決定的な動き。三人が離脱を始め、別の三人が止めに入る。揉める。越えない。越えなければ止められない。だが、揉めている時間は費用だ。包囲は割に合わなくなった。


最後の一波が来る。名残だ。五。動きは粗い。カイルは前へ。二人を一息で止め、三人目の足を払う。残りは引く。短時間。終わり。これで、刃を抜く意味が消えた。


朝、道が二本戻る。橋の修繕が止まり、狩りが引く。包囲は解けた。完全ではないが、続かない。それで十分だ。


村で報告。短い。「内部不一致、停止数回、包囲後退」。ミナは帳簿を閉じる。静かに息を吐く。「終わり?」。カイルは首を振る。「区切り」。


境界杭に手を置く。今日は何度も越えられた。だが、すべて止まった。刃を抜かない時間の方が長かった。それでも、戦いはあった。線が、相手の中を裂いた。


次は、静かな後始末だ。

戦いは減る。

だが、消えない。


ーー第218話に続く

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