第216話 突破口――一点の強行
包囲は薄くなったが、消えてはいない。だから、一度だけ動く。点で、短く、戻る。外組は三。時間は刻限、道は二つ、戻りは一つ。カイルは同行しない。重心は内に残す。合図は短い。「行け」。
夜明け前、外組は森道を切る。足音は抑え、距離は一定。橋の手前で気配。二。見張りだ。越えない位置で止まる。連絡役が合図、護衛役が半歩前へ。越えさせない。見張りは理解し、引く。追わない。時間を買う。
橋を渡る瞬間、後方で音。来た。三。軽装、速い。狙いは足。護衛役が出る。体を当て、重心を外す。倒さない。立たせない。二人目が刃を振る前に、見聞役が距離を切る。ミナの合図が遠くで低く響く。半拍。十分だ。三人目は止まる。止まった瞬間、戻す。追わない。
街道に出る。ここで強行。外組は走る。荷は小口、軽い。角で待ち伏せ。四。数で来た。護衛役は中央へ。逃げ道を一つだけ残す。最短で二人を止め、体を回して三人目の足を払う。四人目は距離を取る。戻す。短時間。終わり。
目的地。取引は即時。量は少ない。条件は揃う。紙は交わさない。動作だけ。成立。戻る。
帰路、包囲が動く。橋の向こうに影。だが、詰めない。遅い。外組は安全点へ。合図が返る。「了解」。それで終わりだ。
村へ戻る頃、包囲の一角が外れる。道が一本、空いた。強行は一度でいい。見せたのは量じゃない。可能性だ。包囲は面を維持できない。
夜、報告は短い。「強行一、成立、停止三」。ミナは帳簿を閉じる。手は震えていない。カイルは頷く。「次は動かない」。動いた分だけ、相手は費用を払った。割に合わない。
境界杭は立っている。今日も越えられた。だが、止まった。
次は、相手が引く番だ。
ーー第217話に続く




