第213話 再燃――夜襲の最後
静けさは、長くは続かなかった。
夜半、境界の向こうで灯りが一つ、二つ、消える。合図だ。最後に、もう一度だけ来る。形を変え、質を落とし、数も抑えた。勝てないと知った者の動きだった。
最初は攪乱。遠距離からの投石と、散発的な矢。狙いは人ではない。柵、杭、視線。カイルは動かない。守りは前に出ない。誘われない。数分で弾は尽き、音が止む。次が来る。
近接は四。軽装、速い。走る。越える。
カイルが出る。
一人目、体当たり。重心を外す。
二人目、肘。呼吸が止まる。
三人目、足払い。地面。
四人目は止まる。止まった瞬間、戻す。追わない。
間を置かず、左右から各三。時間差。疲労を狙う。カイルは中央に戻らない。右を止め、左を見ない。ラウルが左を押さえ、リアが距離を切る。セリアの眠りが一瞬、落ちる。完全ではない。だが十分。短時間で終わる。
最後は単独。若い。動きが荒い。勢いだけで越える。
カイルは一歩で止める。
倒さない。立たせない。
「戻れ」。
若者は歯を食いしばり、引く。
夜が明ける前、すべて終わった。
死者は出ない。追撃もしない。来た分だけ、止めた。
報告は一行。「夜襲再燃、少数、停止」。ミナは帳簿を閉じる。肩の力が抜ける。「これで?」。カイルは頷く。「今日は」。
境界杭は無事だ。削られてもいない。倒されてもいない。
だが、外の動きが変わる。
攻める手が、尽きた。
夜明け。鳥が鳴く。
今日は、来ない。
ーー第214話に続く




