表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/71

第21話 戦乱の序章──鍵を巡る会議

場所は、暗い大陸の地図が広げられた巨大な円卓の間。


そこには各勢力の幹部が揃っていた。


◆魔王軍

◆教会上層部

◆人間の貴族派閥

◆冒険者ギルド上層

◆闇社会の情報組織


本来、互いを憎み敵対しているはずの勢力が、

ひとつの目的のために座っている。


その目的は――ミナ・シュメール。


円卓の中央には、ミナの肖像画と、祠にあった魔符の断片が置かれている。


魔王軍の幹部・“影将”マルグスが低く語る。


「鍵の少女が覚醒すれば、“封印”は解かれる。

 我らが求める力が解放される。必ず回収する」


対して、教会枢機卿イオリエは険しい表情で反論する。


「鍵は魔王軍に渡せぬ。

 封印の対象は天罰級だ。解かれれば大陸が壊れる。

 ゆえに“少女ごと”封じ直さねばならない」


魔王軍「殺すつもりか?」

教会「世界のためだ」


議論は噛み合わない。


すると別の勢力――人間の大貴族・グラフト公爵が口を開く。


「どちらにせよ、あれは“力”だ。

 世界を動かす力。王国が保有すべきだ」


魔王軍「力として利用する気か」

教会「傲慢だ」

ギルド幹部「争いが大陸に飛び火する」


会議は瞬く間に火花を散らした。


しかし――

全勢力が一致している点が一つだけあった。


ミナ・シュメールを放置する選択肢はない。


だが、“敵の認識”には致命的な誤解があった。


教会枢機卿が言う。


「幸い、実力は“鍵”一人のみ。

 外にいる仲間は保護者程度で、脅威ではない」


魔王軍が同意する。


「暗殺部隊が全滅したのは想定外だったが……

 標的はまだ子供。奪取は容易だろう」


そこに闇社会の情報屋が資料を広げた。


紙には3人のシルエットと名前、わずかな情報。


・ミナ・シュメール 鍵

・リア・ローゼン 騎士

・カイル 魔術師


ギルド幹部が鼻で笑う。


「元勇者パーティ所属? 追放された無能らしい」


枢機卿「では障害は実質“騎士1人分”のみか」


魔王軍「奪取は容易だな」


そう口々に結論づけたとき――

闇社会の情報屋だけが、言葉を失っていた。


資料の端に残された1枚の紙。


“暗殺者全滅”

“戦闘痕跡なし”

“魂のみ消滅”


震える声で呟く。


「……この戦い方……知っている……

 もし、この推測が当たっているなら――」


だが誰も聞いていない。


会議は次の段階へ進んでしまう。


「作戦を発動する。

 ミナ・シュメールの奪取を大陸規模で開始する」


「勇者パーティの動員も承認した。

 王都から“勇者”が出動する」


紙束が各勢力に配られる。


《鍵の少女ミナ確保計画》

作戦名:エンジェル・ハント


大陸中の“戦力”がミナへ集中する戦争の始まりだった。


会議の締めくくりの言葉が告げられる。


「相手は少女一人と、追放された無能魔術師、

 そして若い騎士が一人――」


「数と戦力で押しつぶせ。

 逃げられるわけがない」


全員が席を立ち、作戦が始動。


だが何も知らない3人は、

今日も小さな宿で肩を並べて夕食の鍋をつついていた。


「野菜いっぱいで美味しいです~!」

「焦がさずに作れましたね」

「焦げではなく“香ばしさ”だ」


笑い声が夜に響く。


こんなささやかな幸せすら、

敵はすべて奪おうとしている。


しかし敵は知らない。


追放された“無能”と呼ばれた魔術師こそが、

 全勢力にとって最大の誤算であることを。


大陸規模の争奪戦の火蓋は切られた。


だが――

最後に笑うのは、たった三人の旅人だ。


——第22話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ