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◆第207話 連戦――試される間合い

最初の合図は、矢だった。

夜明け前、外組の帰還路。風に紛れた一射が、護衛役の肩口を掠める。致命ではない。だが狙いは正確だ。カイルは即座に前へ出る。指示は一言。「散る」。


左右から影が出る。数は六。距離を保ち、同時に詰める構え。前回より整っている。質が上がった。カイルは一歩で間合いを消し、最初の一人を地に伏せさせる。投げない。立たせない。次の瞬間、背後。肘で止め、体を入れ替える。刃が空を切る。


ミナが低く息を吸い、足元に揺らぎを走らせる。踏み込みが鈍る。半拍。カイルはその半拍で二人を崩す。残る三人が距離を取るが、逃げ道は一つだけ残してある。追わない。戻すための道だ。


だが、引かない者が一人いる。合図を切る。森が動く。さらに四。挟撃。数で来た。カイルは前へ。後ろを見ない。前列を最短で止め、体を回して背後の一人の足を払う。地面。呼吸を奪う位置。立てない。


ラウルが側面を押さえ、リアが距離を切る。セリアの眠りが一瞬だけ落ちる。完全ではない。だが、十分だ。混乱が走る。カイルは混乱を終わらせる。中心を潰す。合図役を止める。声が消え、連携が切れる。


撤退。

追わない。

短時間。

死者なし。


呼吸が戻る前に、次が来る。今度は街道側。小隊三。装備は揃い、動きは慎重。試験だ。先頭が距離を越えた瞬間、カイルが出る。正面衝突。拳が腹に入る。息が止まる。崩れる。二人目は刃を振る前に手首を叩き落とされ、三人目は体当たりで地面。終わり。


合流地点に戻ると、すでに次の気配。今日は多い。まとめて測りに来ている。カイルは短く言う。「続ける」。疲労は見せない。動作は同じ。線は同じ。


夕刻までに、三度。

夜に二度。

すべて短時間で終わる。

共通点は一つ。越えた瞬間に止まっている。


最後の一戦、相手は動かなかった。距離の外で立ち、こちらを見るだけ。カイルも動かない。しばらくして、相手は引いた。戦わずに終わる戦闘だ。


夜、村。報告は数字だけ。回数、人数、停止。ミナは帳簿を閉じる。「続きますね」。カイルは頷く。「来るなら、来い」。


外は静かだ。

だが、静かな理由が違う。

今日は、負けた者が多すぎる。


ーー第208話に続く

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