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第204話 善意の圧――助ける顔

善意は、最も断りにくい形で来た。市の外れ、子どもを連れた一団。衣は質素、言葉は丁寧。「困っている人に小口を回してほしい」「後で必ず返す」。条件の外れ方は静かで、責める余地が少ない。見聞役は紙を出す。四項目。量は小口、支払い即時、連絡は複線、越境は停止。母親役の女は頷き、しかし最後に一言添える。「今だけ」。


今だけは、例外の別名だ。見聞役は息を整え、短く答える。「今でも同じ」。理由は言わない。言えば感情の議論になる。感情は線を溶かす。


一団の後方で、別の大人が一歩前に出る。声は柔らかい。「融通が利かないのは、冷たい」。周囲が見る。護衛役は半歩前へ。越えない。越えさせない位置を保つ。連絡役は視線で合図を回し、場の距離を保つ。


女は次の手を切る。小さな袋を差し出す。「前金」。即時支払いに見える。だが、袋は軽い。量が合わない。見聞役は受け取らない。「条件外」。紙を畳む。席を移す。追わない。


その瞬間、後方の大人が荷に触れた。越えた。護衛役が出る。体を当て、重心を外し、地面に伏せさせる。倒さない。追わない。停止。女が声を上げる。「助けないのか」。見聞役は答えない。答えは動作で十分だ。


静寂の後、第三者が介入する。近くの商人が言う。「小口なら、私が」。条件を確認し、成立。支払い即時。量は少ない。助けは、条件の中でも起きる。善意の顔で破る必要はない。


外組は安全点で報告する。「善意装い。例外要求。越境停止。第三者小口成立」。内側から返る。「了解。善意も条件で処理」。線は揺れない。


帰路、連絡役が言う。「断るのはきつい」。見聞役は頷く。「だから短く」。護衛役は付け足す。「止める動作は同じ」。善意も圧も、越えた瞬間に同じだ。


夜、村。ミナは帳簿に一行足す。「善意」。対応は同じ。「条件外」。カイルは境界杭を見て言う。「線は、顔色で変えない」。ミナは頷く。「助けは、条件の中で」。それが続け方だ。


外では噂が変わる。「情に訴えても通らない」。冷たいと言われる。だが、続く。続くことが、助けになる。


ーー第205話に続く

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