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第203話 肩書きの圧――正当性の仮面

次に来たのは、数でも力でもなかった。肩書きだった。市の中央、通行証を掲げた一行が席を設ける。文言は整っている。「監督代行」「調整権限」「緊急裁量」。言葉が多い時ほど、線は見えにくくなる。


見聞役は距離を保ち、紙を差し出す。四項目。量は小口、支払い即時、連絡は複線、越境は停止。代行者は微笑み、紙を指で叩く。「裁量で例外を認める」。例外は、条件を破る正当語だ。見聞役は首を振る。「裁量は受けない」。理由は言わない。言えば権限の話になる。


代行者は声量を上げない。代わりに周囲へ向けて語る。「責任の所在」「安全の担保」。観衆が集まる。護衛役は半歩前に出る。越えない。越えさせない位置を保つ。連絡役は視線で合図を回す。場は整っている。


代行者は最後の一手を出す。「監督下での即時取引」。即時は条件に合う。だが、監督下が重い。見聞役は短く返す。「条件外」。紙を畳み、席を移す。議論しない。議論は肩書きを増幅させる。


その瞬間、代行者の随員が一歩踏み出す。通行証を振る。「通行を制限する」。越えた。護衛役が出る。体を当て、重心を外し、道を空ける。倒さない。追わない。停止。観衆の視線が集まる。代行者は動かない。動けば、肩書きが折れる。


静寂の後、別の商人が紙を取り、条件を確認する。「小口で」。成立。支払い即時。場は決まった。代行者は肩書きを保ったまま、成果を出せなかった。それが結論だ。


外組は安全点で報告する。「肩書き提示。例外要求。越境停止。小口成立」。内側から返る。「了解。肩書きは条件で処理」。肩書きは強いが、条件に弱い。


帰路、連絡役が言う。「正当性は厄介だ」。見聞役は頷く。「だから紙」。護衛役は短く言う。「止める動作は同じ」。役割は変わらない。


夜、村。ミナは帳簿に欄を足す。「肩書き」。対応は一行。「条件外」。カイルは境界杭を見て言う。「線は人じゃなく、動作で守る」。ミナは頷く。今日も、例外は作らなかった。


外では、肩書きの噂が落ちる。「通らない」。それだけで、次の試みは形を変える。次は、善意だ。


ーー第204話に続く

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