第200話 条件提示――先に置く線
翌朝、外組の報告は短く共有された。固定・一本化・優先供給。三つとも相手の都合で、こちらの自由を削る条件だ。カイルは結論だけを出す。「先に条件を置く」。守るための線は、防ぐためだけじゃない。交渉の入口にもなる。
条件は四つに整理された。量は小口、支払い即時、連絡は複線、越境は停止。難しい言葉は使わない。できることしか書かない。ミナは文面を整え、余計な修飾を削る。リアが確認し、セリアが配布の手順を決め、ラウルが場の見せ方を詰める。看板ではない。手渡しだ。
外組は同じ市へ戻る。前回と同じ速度、同じ距離。最初に声をかけた商人に紙を渡す。読む時間を与える。質問が出る。「優先は?」。答えは一言。「しない」。理由は添えない。次の質問。「量は?」。答えは具体的な数字。不確実性を減らす。
反応は二分した。まとめ役は離れる。小口の商人は残る。成立は少ないが、拒否は静かだ。騒ぎにならない。それが成果だ。途中、仲介が割り込む。「条件が弱い」。見聞役は返す。「弱いから続く」。議論はしない。紙を畳み、席を移す。
小さな圧は来る。道の端で二人が立ち、進路を測る。越えない。護衛役は半歩前に出て止まる。視線だけで十分だった。周囲が見ている。誰も得をしない状況で、踏み出す理由はない。
昼過ぎ、成立が三件。量は少ないが、条件は揃った。外組は安全点で報告する。「条件提示有効。小口成立。圧は弱い」。内側から返る。「了解。条件を継続」。一貫性が、信用の代替になる。
帰路、連絡役が言う。「先に置くと楽だ」。見聞役は頷く。「選ばせるから、争いにならない」。護衛役は短く付け足す。「止める回数も減る」。運用が効き始めている。
夜、村。ミナは帳簿に新しい欄を作る。「条件別成立率」。数字は嘘をつかない。カイルは境界杭を見て言う。「線は外でも使える」。ミナは頷く。「運べる」。今日の仕事は終わりだ。
外はまだ測ってくる。だが、こちらは先に置いた。越えなければ止めない。越えたら止める。条件は軽く、線は重い。それで、十分だった。
ーー第201話へ続く




