第199話 取引の席――条件の置き方
外組の二件目は、小さな市だった。常設ではない。人が集まり、すぐに散る。情報が濃く、責任が薄い場所。見聞役は全体を回り、連絡役は端で立ち、護衛役は背後を取る。目的は取引の可否と、条件の空気を読むことだ。
最初の交渉は順調だった。穀物の余り、塩の小袋、布切れ。量は少ないが、相場は安定している。見聞役は価格を合わせ、理由を聞く。答えは一様だ。「慎重」。理由は深掘りしない。距離が保たれている証拠だからだ。
問題は二つ目の席で起きた。仲介を名乗る男が割り込む。言葉は丁寧、提案は魅力的。「まとめて融通できる。だが、条件がある」。条件は三つ。取引量の固定、連絡先の一本化、緊急時の優先供給。見聞役は一つずつ確認する。固定は無理、一本化は不要、優先は約束できない。男は笑う。「それでは守れない」。見聞役は返す。「守る話はしていない」。目的のすり替えを拒む。
男の空気が変わる。周囲に視線が集まる。護衛役が半歩前に出る。越えない。だが、越えさせない位置だ。男は声を落とす。「ここでは、皆そうしている」。連絡役が短く言う。「私たちは違う」。それで終わりにする。席を立つ。追わない。追わせない。
数歩離れたところで、別の商人が声をかける。「少量なら」。条件は単純、支払いは即時。見聞役は頷く。成立。量は少ない。だが、条件は軽い。これが持ち帰るべき情報だ。
市の外れで小さな揺さぶりが来る。さきほどの仲介の手下が近づき、道を塞ぐ。言葉はない。越えた。護衛役が出る。体を当て、重心を外し、道を空ける。倒さない。追わない。周囲が見ている。実例は一度で足りる。手下は下がる。仲介は遠くで視線を逸らす。
夕刻、外組は安全点で報告する。「市で条件提示。固定・一本化・優先を拒否。小口成立。越境一件、停止」。内側から返る。「了解。条件集計」。判断が繋がる。
帰路、連絡役が言う。「まとめ話は楽だ」。見聞役は答える。「楽は、重い条件を運ぶ」。護衛役は短く言う。「止める回数が増えたら、場所を変える」。それが運用だ。
夜、村。ミナは帳簿に追記する。条件の種類、成立率、拒否理由。カイルは一行だけ読む。「固定を嫌う」。頷く。「次は、こちらから条件を置く」。外は、まだ測ってくる。だが、条件は選べる。
ーー第200話へ続く




