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第193話 集束――見せるための戦い

その夜、圧は一点に集まった。散発的だった試しが止み、代わりに“静かすぎる”時間が流れる。カイルは理解していた。これは撤退ではない。一度で判断するための集束だ。


相手は五人。数は多くないが、動きが揃っている。刺客というより、評価班。越境は一斉、狙いは防衛線の反応速度と判断の一貫性。ミナは合図を出す。「越えたら止める。追わない」。全員が頷く。言葉はいらない。


越境。瞬間、カイルが出る。最短で一人を止め、次の一人に体を預けるように踏み替える。拳は最小、関節と重心だけを使う。二人目が崩れ、三人目は自ら距離を取る。逃げ道を残す。それが線の証明だ。リアの指示で死角が消え、セリアの眠りが一瞬だけ落ちる。ラウルが背後を切る。五人は三息で無力化された。


殺さない。追わない。境界線の外へ戻す。言葉も脅しもない。実例だけが残る。見ていた者は理解する。ここでは、力は使われるが、奪われない。罰はあるが、報復はない。だから――踏み越える意味がない。


撤収。評価班は何も持ち帰れない。だが、それが最大の持ち帰りだ。攻略不能という結論。


夜明け、噂が一斉に変わる。「あそこは戦場じゃない」「踏み込むと止まる」「勝っても得がない」。攻め手にとって、最悪の評価。ミナは深く息を吐く。「終わった?」。カイルは首を振る。「見せ終わった」。それで十分だった。


ーー第194話へ続く

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